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02/12/2011

【演劇】2010年度演劇ベストテン

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「何を今更」もいいところだが、途中まで書きかけていたので、やはり完成させてしまう。


2010年度演劇ベストテン

1.FUKAI PRODUCE 羽衣『愛死に』
2.劇団桟敷童子『厠の兵隊』
3.『親指こぞう ブケッティーノ』
4.少年王者舘『ガラパゴス』
5.黒田育世『あかりのともるかがみのくず』
6.文学座『麦の穂の揺れる穂先に』
7.五反田団『迷子になるわ』
8.文学座『カラムとセフィーの物語』
9.劇団桟敷童子『光と影のバラード』『珍獣ピカリノウスの法則』
10.FUKAI PODUCE 羽衣『も字たち』

次点
維新派『台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき』
イキウメ『図書館的人生vol.3 食べもの連鎖』


今年見た演劇・ダンス等の舞台は、フェスティバル/トーキョーで見た、過去の舞台のビデオ上映を含めて述べ95本。同作品を2回以上見たものを除くタイトル数は89本。これはさすがに見過ぎであり、2011年は50本代への削減を目標としている。

ベストテンの選出では、やはりストレートプレイとダンスを同列に並べるのは無理があると思い、純粋なダンス公演は外した。またフェスティバル/トーキョーで披露された飴屋法水のインスタレーション『わたしのすがた』は、今年屈指の印象深い作品で、時間が無くて途中までしか見られなかった回も含めると3回も見たのだが、これはダンス以上に、ストレートプレイと同列に並べるのは無理があるだろうと思い、外した。しかし、この素晴らしい作品(という言い方が適当なのかどうなのか)こそ、実は今年のベストだったのかもしれない。
また青年団の『革命日記』、庭劇団ペニノの『苛々する大人の絵本』、東京乾電池の『長屋紳士録』、MODEの『変身』など、再演で、以前見たときと演出や演技があまり変わっていないものも除外して考えた。


今年はFUKAI PRODUCE 羽衣の年だった。この劇団を初めて見たのは2005年の『ジェントルマミー』だが、それは「やりたいこと」と「やっていること」が見事に泣き別れした、退屈極まりない作品だった。まさかその劇団をベストに押す日が来ようとは…人生は本当に分からない。
それほどまでに『愛死に』は良かった。冗長な部分もあって、完成度は必ずしも高くないし、あまり多くの人に勧められる作品でもない。しかし、これほどまでに「愛おしい」作品は滅多にない。ラストの歌の何と切ないことよ。恋愛の馬鹿馬鹿しさと甘美さと切なさを、悪ふざけのように見せながら真摯に描いた傑作。
『愛死に』には及ばないが、秋に上演された『も字たち』2ヴァージョンも、役者陣の捨て身の演技が発する凄まじいエネルギーに圧倒される。結局、享楽ヴァージョンを2回、虚無ヴァージョンを1回と、計3回も見てしまった。もはや羽衣は何をやっても愛おしい。

最近明らかにマンネリ気味たった桟敷童子。特に2009年暮れの『海獣』は、この劇団のワースト作品だったと思う。そんな桟敷童子の起死回生の一発となったのが『厠の兵隊』。原点回帰でありつつ新生面も見せてくれる、理想的な展開。歴代の作品中『博多湾岸台風小僧』の次くらいに位置するのではないか。ぜひとも再演して欲しい名作だ。
番外公演の『光と影のバラード』『珍獣ピカリノウスの法則』も、桟敷童子の殻を打ち破る怪作にして傑作。あれほど笑える桟敷童子作品は他にない。これらを踏み台にして、2011年にどんな飛躍を見せてくれることか楽しみだ。

ソチエスタ・ラファエロ・サンツィオの作品の日本版として数年前から上演されている『親指こぞう ブケッティーノ』は、ある意味自分の演劇観を覆すほどの衝撃作だった。ただの朗読劇かと思いきや、まるでディズニーランドで見る3D映画のような「体験型朗読劇」。ああいう形で味覚を除く四感全てを刺激する作品というのは、普通の演劇でもお目にかかったことがない。一人で十数役の声を使い分けるともさと衣も凄いが、あれは裏方勢の緻密なスタッフワークがあって初めて完成する作品だ。これからも毎年上演されるはずので、未体験の方には強力にオススメする。

3年ほど前は少々マンネリ気味だった少年王者舘も、2009年の『夢+夜』で復活し、この『ガラパゴス』でも引き続き絶好調。描かれる世界観は相変わらずなのだが、その表現手法の精度が以前よりも高くなった感じで、演劇の魔法をたっぷりと味わえる。

黒田育世『あかりのともるかがみのくず』は、ダンスとストレートプレイの中間くらいなので、入れてある。若干長い感じもしたが、むき出しのエモーションを体現する役者(ダンサー)たちの熱量と、イマジネーションに溢れた数々の表現は、強く印象に残る。

老舗の文学座も、良質な作品を幾つも発表。特に良かったのは、平田オリザが数本の小津安二郎作品を再構成した『麦の穂の揺れる穂先に』と、アトリエ公演『カラムとセフィーの物語』。前者では栗田桃子、後者では渋谷はるかと、実力派若手女優の活躍が印象的だった。特に後者は、渋谷はるかの演技無くして、あそこまでの作品にはならなかっただろう。

最近ずっと御無沙汰していた五反田団だが、『迷子になるわ』でたいへんな進化を遂げているのに驚いた。だらだらとした日常をだらだらと描く手法は同じなのに、その向こうに見える風景が、かつてないほど巨大なものになっているのだ。やはり前田司郎の才能を舐めてはいけない。これからもう一度フォローしていくことにしよう。

維新派の作品は、文句なしに素晴らしいと思える部分と、あるようないようなストーリーを読解しきれなくて、もどかしさばかりが残る部分の両方をいつも感じる。今回の『台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき』も同じ。美術や音楽はケチの付けようもないのだが、ストーリーやテーマがどうしても掴みきれない。絶賛の声が多かったが、自分の中では、素直に絶賛はしきれず、かと言って無視も出来ないという、やたら微妙なポジションにいる。

イキウメは相変わらず堅調。『図書館的人生vol.3 食べもの連鎖』は、テーマ性こそ薄いが、エンタテインメントとしては文句なしの出来。


(2011年2月)

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