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01/10/2011

【映画】2010年度外国映画ベストテン

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2010年度外国映画ベストテン

1.海の沈黙
2.パリ20区、僕たちのクラス
3.ヒックとドラゴン
4.息もできない
5.トイ・ストーリー3
6.インセプション
7.マイレージ、マイライフ
8.ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
9.第9地区
10.ゾンビランド

次点
冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
白いリボン
ハート・ロッカー
ナイト&デイ

映画を熱心に見始めて30数年になるが、今年は前例のない年となった。何とベストテンの1位、2位をフランス映画が占めたのだ。フランス映画の新作をベストワンに押した記憶さえあまりないので、1位と2位が共にフランス映画と言うのは間違いなく初めての出来事だ。

と言っても1位の『海の沈黙』は、純然たる新作ではなく、1947年に製作されたジャン・ピエール・メルヴィル監督のデビュー作。しかしリバイバルではなく今回が日本初公開であり、とても63年前の映画とは思えぬ瑞々しい表現に強い感動を受けたので、ベストワンにはこれを選ばざるをえなかった。自分にとってこの作品は、『市民ケーン』や『第三の男』にも匹敵する映画の古典、『シベールの日曜日』や『冒険者たち』と並ぶ最愛のフランス映画となった。歴史的な意義や表現の力強さはもちろんだが、そこで表現されるテーマが、今の自分にとって、どんな新作よりも切実なものであったことに驚かされる。これは「出会い」としかいいようのないものだ。

もう1本のフランス映画『パリ20区、僕たちのクラス』の映画技術には、心底驚愕した。この作品を見ると、これまで「ドキュメンタリータッチ」と呼ばれていた作風は、実は「ドキュメンタリー映画タッチ」に過ぎなかったことが明らかになる。カメラの存在をほとんど感じさせず、観客が実際に教室の中にいるようにしか思えぬ、そのリアルさ。これこそが本当の「ドキュメンタリータッチ」だ。
こ作品中で描かれる深刻な教育問題には、決して正解など出ないだろう。「教育」とは、結局のところ人間関係の問題であり、個別の解答はあっても普遍的な正解など出させるものではないからだ。しかし人が社会的な存在である限り、教師も生徒も、この正解のない問題と必ず向き合わなくてはならないこと、そして少しでも正解に近づこうともがき苦しむ中で、時には意図せずして互いを傷つけてしまうことが、一辺の理屈も口にすることなく描き出されている。これこそ映画の一つの理想型だ。

『トイ・ストーリー3』の完成度は凄いものだが、あまりに磨き上げられ過ぎていて、可愛げが無いのが難。その点『ヒックとドラゴン』の方が妙な手作り感やぬくもりが感じられるし、3D表現の見事さと、ファミリーものの枠をはみ出したラストの衝撃で、一枚上を行く。ちなみに外国映画のベストテンに2本のアニメーションが入ったのも、おそらく今年が史上初。それがアメリカ映画の1位と2位になるのももちろん初めて。今年は本当に異例ずくめの年だ。

『息もできない』は、「何が何でもこの映画を撮らずにはいられない」という作者の強烈な思いが、見る者の心を揺さぶる映画。「切れば血の出るような映画」とは、まさに、こういう作品のことを言う。

『インセプション』は、見た直後は「非常に面白いけれど、『ダークナイト』に比べるとテーマ性や批評性の面でだいぶ見劣りするなあ」と、それほど評価は高くなかった。ところが数か月経った今振り返ってみると、不思議なほど強く印象に残っている。やはりクリストファー・ノーランの映像造形力は並大抵ものではない。

『マイレージ、マイライフ』は、いかにもアメリカらしい、人生考察映画。表面的な生活こそ全く似ていないものの、ジョージ・クルーニーが演じた主人公と自分の間には、本質的な部分でかなり共通するものがあるため、彼の感じる喜びや戸惑いは、とてもよく理解できた。

『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』は、ヒロインのユニークな人物造形が魅力的なミステリー。続編2本も続けて公開され、そちらも面白かったが、単品の魅力ではやはり1作目がベストだ。

『第9地区』は、いかにもSFらしい内容と現代の社会問題とがごちゃ混ぜに描き出された斬新な映画。ただし見たときはもっと評価が高かったのに、時間が経つと印象が薄くなっていくという、『インセプション』の逆パターン。その理由は、おそらく『インセプション』の裏返しで、映像的な魅力が薄かったせいだろう。

『ゾンビランド』は、『リトル・ミス・サンシャイン』meets『ゾンビ』というアイデアの勝利。ウディ・ハレルソンと、途中で出てくる某大スターが大きな魅力を振りまく、愛すべき佳作。


『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』は、途中まではベスト5入り確実の出来だったのに、終盤でモタモタしてしまったのが惜しい。とは言え、『エグザイル/絆』に続いてこの作品だから、ジョニー・トーは今乗りに乗っている。
『白いリボン』はハネケらしい傑作で、磨き抜かれた演出には背筋が寒くなるが、テーマ的にはそれほど胸に迫るものがなかった。
『ハート・ロッカー』はオスカーを獲得した力作だが、「体験型」の映画なので、時間が経つと印象が薄くなるのは否定できない。
『ナイト&デイ』は、もっと高く評価されてしかるべき高水準のハリウッド娯楽映画。


主な見逃し作品は『冬の小鳥』『シャネル&ストラヴィンスキー』『ザ・ロード』『闇の列車、光の旅』『瞳の奥の秘密』『ノーウェアボーイ』など。この内何本かは近日中に名画座で見る予定あり。
なお、年が明けてから見た『キック・アス』と『人生万歳!』も素晴らしい傑作で、特に前者は昨年中に見ていればベストテン入り確実だったが、あくまでも2011年に見た作品なので、今回は除外する。


絶対ワースト!と激しい怒りを覚えるような作品はなかったが、見たことを後悔した作品は『かいじゅうたちのいるところ』『NINE』『シャーロック・ホームズ』『エクスペンダブルズ』『トロン : レガシー』あたり。


新作も充実していたが、今年は名画座や「午前十時の映画祭」などで見た旧作が怖ろしいほど充実していた。何しろ『霧の中の風景』『七人の侍』『アラビアのロレンス』『生きるべきか死ぬべきか』という、我が生涯のベストテンに確実に入る映画を4本もスクリーンで見直すことが出来たのだ。それ以外にも『永遠と一日』『ロミオとジュリエット』『太陽がいっぱい』『パピヨン』『ライトスタッフ』『ベン・ハー』『激突!』『トイ・ストーリー(3D版)』『眠狂四郎 無頼剣』『眠狂四郎 炎情剣』『麦秋』などをスクリーンで見ることが出来たのだから、凄まじい限りだ。
また、以前から見たいと思いつつ見逃し続けていた旧作『狩人の夜』『死刑執行人もまた死す』『ある日どこかで』、そして『ハロルドとモード』といった作品が、期待に違わぬ傑作ばかり。これでは映画ファンはやめられないな。


(2011年1月)

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