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05/20/2009

【演劇】イキウメ『関数ドミノ』2009.5.15

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イキウメ『関数ドミノ』
2009年5月15日(金) 19:00~ 赤坂RED THEATER


イキウメと言うか前川知大の芝居は、当たり外れが大きい。G-upプロデュースで上演された『散歩する侵略者』、それに続いて見た『PLAYeR』は大当たり。ところが吉祥寺シアターに進出した『狂想のユニオン』が大ハズレ。あまりにつまらなくて、どんな作品だったか思い出せないほどだ。そのおかげで好評だったイキウメ版『散歩する侵略者』の再演を見逃してしまった。気を取り直して、前川が脚本を書きグリングの青木豪が演出した『ウラノス』を見たら、これがまたイマイチ。特に前川の脚本は、あちこちで指摘されたように星新一の短編「お~い、出てこい」を引き延ばしただけとしか思えぬ陳腐なものだった。同時期にイキウメが上演した『眠りのともだち』もぬるい仕上がり。もはや前川/イキウメもここまでかと思ったら、紀伊國屋ホールという大きな劇場で上演された『表と裏と、その向こう』が意外に面白くて、ようやく復調が感じられた。しかし当たり外れの確率がほぼ半々であることに変わりはない。

したがって今度の『関数ドミノ』にも大きな期待は抱いていなかったのだが、直前になって、実はこれがサンモールスタジオで上演された初期作品の再演であることを知り、俄然期待が高まった。果たせるかな、久々にイキウメらしいテイストに満ち溢れた佳作で、最近の作品の中では一番面白い。ただ、それを素直に誉めて良いかというと、色々と微妙な問題がある。

ある奇妙な交通事故に遭遇した若者たち。保険調査員によってその調査が進められる内に「ドミノ」という存在が浮かび上がってくる。ドミノとは一体何なのか? それは彼らの運命にどのような影響を及ぼしていくのか?

そんな風に発端部分を書いただけで『PLAYeR』との類似性は明らかだ。実際には『関数ドミノ』の方が1年半前に上演されているので、ある意味『PLAYeR』は『関数ドミノ』の焼き直しだったのだろう。ただ『PLAYeR』の方が様々な意味で洗練されていたし、テーマも似て非なるものなので、単なる焼き直しには終わっていない。
この2作の最大の違いは、『PLAYeR』が「もしも霊界が実在し、死者とコミュニケーションを交わすことが出来たら、我々の人生はどのように変貌するのか?」という形而上学的テーマを扱っているのに対し、『関数ドミノ』は「人間の運不運を決めるものは何なのか?」という、もう少し日常的なテーマを扱っている点だ。「恵まれた者に対する嫉妬心」がドラマを動かす大きな原動力となることで、その日常性はさらに強調される。ただしそれは両刃の剣でもある。より多くの観客の共感を呼ぶことにはなるだろうが、『PLAYeR』にあった底知れぬ深淵を覗き込んだような怖さは、この作品には存在しない。個人的好みとしては、あの暗黒の淵をさらに追究して欲しいところだが、最近の傾向を見る限り、そちら方向への進化はあまり望めないようだ。

ともあれ、この作品を見たことで、前川作品のアイディアやプロットは、サンモールスタジオでやっていた頃にほぼ出尽くしていたのだということがよくわかった。たとえば映画監督ヒッチコックのように、同じアイディアやプロットを使い回しても、その表現の純度を高め、技法を磨き抜くことで、次々と自己記録をクリアしていく天才もいる。それを見習って前川知大も『散歩する侵略者』や『PLAYeR』を超える作品を作り上げて欲しいところだが、それについては、彼のこれまでの作品の出来と同様、期待半分不安半分といったところだ。

ただ見ていて思ったのだが、この作品、再演ではあるものの、台本や演出がけっこう変わっているのではなかろうか。と言うのも、最近の作品に通じる「明るさ」が端々に感じられるのだ。特にあのラストは、仮に戯曲自体が同じでも、オリジナルの演出はもっとダークサイドの方に振れていたに違いない。正直、そちらの方が好みではある。


ともさと衣が客演しているのも興味を惹かれた理由の一つだが、この役を彼女が演じる必然性はあまり感じられなかった。演技の問題ではなく、役自体にあまり魅力も見せ場も無いからだ。つまり役不足。『表と裏と、その向こう』で内田慈が圧倒的に輝いていたことを思うと、少々残念だ。
むしろ注目すべきは、イキウメのレギュラー陣。かつては戯曲の力に役者の力がまったく追いついていない感があったが、紀伊國屋ホールなど大きな舞台にも立って鍛えられたせいだろうか、以前よりも演技力が底上げされている。今回は特に浜田信也のチャランポランさが出色の出来だった。


(2009年5月)

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