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02/21/2009

【演劇】三条会『ロミオとジュリエット』2009.2.20

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三条会『ロミオとジュリエット』
2009年2月20日(金)19:00〜 ザ・スズナリ


最近冬の風物詩となりつつある三条会@スズナリ。千葉のアトリエ公演はしょっちゅうやっているのだが、家からかなり遠いので、いまだに見に行ったことがない。アトリエから目と鼻の先にある千葉市美術館に見たい絵があるはずなので、それと併せて行きたいとは思っているのだが。

今回の題材は『ロミオとジュリエット』。2回のアトリエ公演に続く3回目の上演で、そのたびに演出が大きく変わるそうだ。今回は100分ほどで、ジュリエットが登場する場面だけで構成されている。もちろん三条会なので、普通のコスチュームプレイではないし、8人の出演者が全員ジュリエット役を兼務する。つまり「ジュリエットとジュリエット」の寺内亜矢子(ク・ナウカ)以外は、「ロミオとジュリエット」のように、基本的には他の役をやりつつ時々ジュリエットになる。持ち役とジュリエットの会話で、ボケとツッコミを一人でやっているような場面もある。

結論から言うと、これまでに見た三条会の芝居の中で一番つまらなかった。

理由は明白で、この作品が『ロミオとジュリエット』のパロディの域を出ておらず、誰もが知る古典戯曲から新しい魅力を引き出すに至っていないからだ。個々の場面は面白い。笑えるところも多い。しかし見終わってみると「で? だから何?」という思いが残る。
この作品は『ロミオとジュリエット』という物語の馬鹿馬鹿しい側面をカリカチュアしているだけに終わっている。しかし主人公と同世代の中高生ならともかく、いい大人なら、一時の熱狂に任せて自滅へと突っ走るロミオとジュリエットの馬鹿馬鹿しさくらいよくわかっているはずだ。二人の行動の軽率さもさることながら、たとえばロミオは登場した時点でロザラインという女性(誰だそれは)に恋い焦がれているのだが、ジュリエットに会った途端、それこそ「ロザライン? 誰だそれは?」状態となって、わずか数日の内に幼い死を遂げることになる。まったくもって「おいおい」である。冷静に見れば、限りなく馬鹿馬鹿しい。まあこういう馬鹿馬鹿しさは、オセローの嫉妬をはじめシェイクスピア劇にはしばしば見られるものであり、それに対してどういうスタンスを取るかが、上演の成否を決める重要な要素となるのだが。

もしこれが中学校での上演であれば『ロミオとジュリエット』を情熱的な純愛物語(それはそれで決して間違いではないのだが)として捉えている子どもたちには、なかなか刺激的な舞台となるだろう。しかしスズナリに三条会を見に行くような観客は、ほぼ全員が『ロミオとジュリエット』の馬鹿馬鹿しさくらい百も承知しているのではなかろうか。そういう観客に向けて「馬鹿馬鹿しいですよね。笑っちゃいますよね」と言ったところで「うん、本当にそうだよね。で? だから何?」と言われるのは当然のことだ。

もちんその馬鹿馬鹿しさの見せ方は、三条会らしく工夫に富んだものだ。ただ個人的には、気の利いた演出で通を面白がらせて終わりという箱庭的な芝居はもういいよ、という気分なのだ。その演出にしても、ク・ナウカの役者が2人いるせいかどうか、いつにも増してク・ナウカっぽい部分があり、他の作品に比べると新鮮みの点で今ひとつ。先述した「全員がジュリエット役を兼ねる」というのは、どうやら「各キャラクターから見たジュリエット」「各キャラクターの内なるジュリエット」のようなものを表現しているようだが、企画倒れという感じで、何らかの感動を呼ぶには至っていない。また、ある意味僕が三条会の最大の魅力だと思っている、榊原毅の圧倒的肉体表現が見られないのも物足りない。榊原の鍛え抜かれた肉体をダラダラと流れ落ちる汗を見ないと、どうも三条会の芝居を見た気分になれない…というのは邪道ですかそうですか。

今、真に先鋭的な『ロミオとジュリエット』とは、この主人公たちの愚かさ、物語の馬鹿馬鹿しさを容赦なく描いた上で、その馬鹿馬鹿しさの中から普遍的な感動をすくい上げて観客を泣かせてしまうような作品ではないのか。はっきり言えば、今時『ロミオとジュリエット』で観客を笑わせて終わりという作品は、発想が古い。志が低い。


こんな風にシェイクスピアをいじくり回してイマイチな出来に仕上がっている芝居を見るたびに、映画『恋に落ちたシェイクスピア』がいかに偉大な作品だったかを痛感してしまう。『ロミオとジュリエット』そのものの映画化ではないが、あれこそ『ロミオとジュリエット』のエッセンスを最高にうまく調理した好例だ。
そう言えばフランコ・ゼフィレッリ監督の『ロミオとジュリエット』をいまだに見たことがないのだが、近々劇場にかかるので出来るだけ見に行きたいと思っている。ロミオとジュリエットを現代的な若者として描き、70年代には青春映画の傑作として絶大な人気を誇った作品だが、40年後の今見るとどんなものだろうか。


(2009年2月)

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