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02/16/2009

【映画】2008年度外国映画ベスト5+15本

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もう2009年の2月。何を今さら2008年のベストという感じだが、まあ一応…


2008年度外国映画ベスト5+15本

1.ダークナイト
2.WALL・E/ウォーリー
3.エグザイル 絆
4.ジェリーフィッシュ
5.ヤング@ハート

プラス15本(観賞した順番)
  ペルセポリス
  ジェシー・ジェームズの暗殺
  28週後…
  ラスト、コーション
  ノーカントリー
  ミスト
  つぐない
  イントゥ・ザ・ワイルド
  アイアンマン
  ブーリン家の姉妹
  レッドクリフ Part I
  ブロードウェイ♪ブロードウェイ
  トロピック・サンダー/史上最低の作戦
  12人の怒れる男
  ザ・ローリング・ストーンズ/シャイン・ア・ライト


★監督賞
 クリストファー・ノーラン(『ダークナイト』)

★脚本賞
 アンドリュー・スタントン/ジム・リアドン(『WALL・E/ウォーリー』)

★撮影賞
 ロジャー・ディーキンス(『ジェシー・ジェームズの暗殺』他)

★主演男優賞
 ロバート・ダウニーJr.(『アイアンマン』『トロピック・サンダー』)

★主演女優賞
 タン・ウエイ(『ラスト、コーション』)

★助演男優賞
 ヒース・レジャー(『ダークナイト』)

★助演女優賞
 ナオミ・ワッツ(『イースタン・プロミス』)


2008年の映画鑑賞本数は延べ133本、本年度内の複数回鑑賞を除いたタイトル数は111本。そのうち外国映画は82本/67タイトル。日本映画は51本/45タイトル。洋画は小粒と言えば小粒な作品が多く、興行的にも日本映画の圧勝だった。
しかし質に関して言えば、洋画は近年希に見る充実度で、最初は普通にベストテンを選ぼうとしたものの、どうにもこうにも収まりが付かない。そこで厳選された5本だけをベスト5とし、そこに残り15本を順不同で付けるという、実質ベスト20のようなものを上げることにした。そうでもしないことには、ベストテンから落とすにしのびない作品が多すぎたのだ。ここまで選んでも、まだ『ヒトラーの偽札』『クローバーフィールド』『イースタン・プロミス』『告発のとき』『インクレディブル・ハルク』『コッポラの胡蝶の夢』『BOY A』『ファニーゲーム U.S.A.』などがボロボロ落ちていくのだからまいってしまう。いっそのことベスト5+20本にしようかと思ったが、切りが無くなるので計20本に収めた。


1位の『ダークナイト』は、多少強引な点もあるものの、現在のハリウッドの総力が詰め込まれたような作品。映画としての完成度もさることながら、そのストーリー、キャラクター、そしてこのような映画がアメリカで大ヒットし、同時に日本ではまるでヒットしなかったという現象自体が、様々な意味で2008年を象徴している。

『ダークナイト』が「2008年を象徴する映画」なら、2位の『WALL・E/ウォーリー』は「生まれながらの古典」。これまで繰り返し語られてきた愛の物語をブラッシュアップし、最高のストーリーテリングと最高の映像技術で表現した大名作。しかも『サイレント・ランニング』や『2001年宇宙の旅』など数々のSFのエッセンスを抽出。ウォーリーが宇宙船の外壁に取り付いて宇宙の旅をするシーンをはじめ幾つかの映像は、「こういう絵を見たかったんだ!」と言いたくなるセンス・オブ・ワンダーに溢れていて、SF映画としても史上屈指の作品に仕上がっている。その時代性を買って『ダークナイト』をトップにしたが、これから先の人生で繰り返し見ていく映画、100年先の人々が見ても同じように感動できる映画は、『WALL・E/ウォーリー』の方だろう。

最大の大穴が、3位に来た『エグザイル 絆』。ジョニー・トーは作品ごとの当たり外れが極端に大きく、今回もストーリーは無茶苦茶を通り越してファンタジーの域に達している。だがそこまで突き抜けてくれたからこそ、心地良いフィクションとして、この馬鹿な男たちの美学に酔いしれることが出来る。たとえばこの作品では「一般市民」が画面からほぼ完全に排除されていて(ホテルマンだけがわずかな例外)、何らかの形で犯罪と関わる人間しか登場しない。その清々しいまでの割り切りによって、凶悪な暴力を「娯楽」として、それ以上に「美」として楽しむことが出来る。自身の作品を含む数々の香港ノワールものの伝統に、サム・ペキンパーやセルジオ・レオーネの滅びの美学も取り入れた、ジョニー・トーの最高傑作。これも繰り返し何度でも見たい作品だ。

イスラエルの愛すべき小品『ジェリーフィッシュ』は、3組の人生模様を絶妙にからませた脚本が秀逸極まりない。感動のあまり1週間に3回も見てしまった。あのラストシーンは、ここ数年間に見た中で最高の名ラストだ。ほとんど話題にならなかったが、このまま埋もれてしまうには惜しい傑作。

『ヤング@ハート』は、実は1月になってから見た映画なのだが、公開は昨年だし、どうせこのベストテン執筆も遅れているのだから…と2008年作品にカウント。これまでに見たドキュメンタリーの中でも最もヒューマンな感動に溢れる、涙無しには見られぬ1本。死や老いを粛々と受け入れながらも、生ある間はそれを精一杯楽しもうとする老人たちの姿に、ただただ感動。人間賛歌とは、この作品のためにある言葉だ。


というわけで、大豊作だった洋画の中のベスト5本。それに続く作品は、順位を付け出すと切りが無いので、順位を付けずプラス15本で選出。以下、見た順番で簡単に。

『ペルセポリス』は、イラン革命前後の時代を生きた少女の姿を描く青春アニメーション。悲惨な戦争や抑圧的な体制の下、我々と変わらない悩みや喜びを抱えて生きる主人公の姿が共感を誘う。

『ジェシー・ジェームズの暗殺』は、ストーリーテリングの面で欠点の多い作品だが、その一言だけでは済まされない美点も数多く持った作品。とりわけジェシーが殺された後、ラスト20分ほどの展開は鳥肌ものだ。ロジャー・ディーキンズの撮影は、『天国の日々』を彷彿とさせる、名画のごとき美しさ。

『28週後…』は、前作『28日後…』を凌ぐ地獄絵巻。広い意味でのゾンビものだが、怖さという点ではこれが最高傑作ではなかろうか。妻や子供に対する愛が、次々と地獄への門を開く展開は、やり過ぎではないかと思うほど残酷。

『ラスト、コーション』は、リリアーナ・カヴァーニの『愛の嵐』を彷彿とさせる恋愛もの。アン・リーの前作『ブロークバック・マウンテン』はあまりピンと来なかったが、この作品は深く心に染みた。

『ノーカントリー』はコーエン兄弟の最高傑作。映画としての完成度にはケチの付けようがない。ケチの付けようがなさ過ぎて可愛げのないところが唯一の欠点というやつか。殺し屋を演じたハビエル・バルデムは、『ダークナイト』のヒース・レジャーと並ぶ2008年の2大悪役。そんな悪役たちが、ヒーローや体制側よりも遙かに大きな魅力と存在感を持っていた点が、2008年という年を象徴している。

『ミスト』は、ラストで「やってはいけないことをやってしまった」という意味で映画史に残るSFホラー。この作品もまた、人間の理性や道徳を超えた「暗黒」「不条理」が圧倒的な存在感を放っている。

『つぐない』は、ポスターや予告編から受ける文芸恋愛ものというイメージを大きく裏切る、残酷極まりない「後悔」の物語。このイメージの落差は、邦画の『相棒』『母べえ』にも負けないほどだ。特に終盤の「上げて落とす」展開は、今思い出しても胸がかきむしられる。

『イントゥ・ザ・ワイルド』は、『インディアン・ランナー』と並ぶショーン・ペン監督の傑作。実話ベースで脚色を最小限に抑えているため、痒いところに手の届かない部分もあるのだが、過酷な環境に身を置くことで「生」を実感しようとする主人公の姿には、いろいろな意味で思うところがあった。

『アイアンマン』は『ダークナイト』の対極にある、痛快なヒーローもの。大企業の社長なのに、まるで町工場のオヤジみたいにトンテンカントン自分の手でパワードスーツを作ってしまう姿に笑える。ある意味『ダークナイト』があったからこそ、よけいその明るさが魅力的に映った部分もある。アメコミ作品では、『インクレディブル・ハルク』もなかなかの出来。

『ブーリン家の姉妹』は、これまた文芸恋愛ものだと思った見始めたら、何とヘンリー8世を巡る女たちの話だったのでビックリ。久々に本格的な歴史ドラマを見た感じで、何やら新鮮な感動を覚えた。ナタリー・ポートマンの熱演も見どころ。

『レッドクリフ Part I』は、『フェイス/オフ』以降ずっと鳴かず飛ばずだったジョン・ウーがようやく放った渾身の作品。演出も演技も全て最高で、娯楽映画として文句なしに楽しめる。あとは、Part IIでちゃんとそれを上回る面白さを見せてくれるかどうかだ。

『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』は、舞台『コーラスライン』再演のオーディションに集まった若者たちの姿を捉えたドキュメンタリー。『コーラスライン』自体がオーディションの話なので、オーディションの舞台のオーディションという倒錯した設定がまずもって面白い。ダンサー/役者の世界の厳しさがたっぷりと描かれていて、そんな世界で生き抜いていく若者たちの悲喜こもごもが、青春ものとして強い感動を呼ぶ。

『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』は、2008年を代表するアメリカンコメディ。ベトナム戦争もののパロディが大いに笑えるし、映画界に対する辛辣な皮肉もたっぷり。ロバート・ダウニーJr.とトム・クルーズは、共にキャリア最高クラスの悪ノリ名演。撮影監督ジョン・トールの絵作りも完璧。ただのB級コメディだと思って見ると痛い目に遭う、知的で辛辣な作品。

『12人の怒れる男』は、あの『十二人の怒れる男』のロシアでの再映画化。大まかな設定は原作に沿っているものの、扱われる事件には現代ロシアの社会問題が色濃く反映され、終盤は思いも掛けぬ展開を見せる。159分もあって冗長ではあるのだが、ロシア文学を彷彿とさせる その冗長さ自体がロシアという国を表現している。やはりニキータ・ミハルコフはただ者ではなかった。この調子で、日本をはじめ各国で、現在の社会問題を反映したリメイクをやってみたらいいのではなかろうか。再映画化の鑑のような作品。

『ザ・ローリング・ストーンズ/シャイン・ア・ライト』は、マーティン・スコセッシ監督によるストーズのライヴドキュメンタリー。演奏曲目が妙に地味で、中盤少々かったるい部分もあるが、スコセッシの映像魔術は冴えに冴え、ライヴドキュメンタリーとしては異常な完成度を見せている。まあ一番異常なのは、60を過ぎてあんなパフォーマンスが出来るミック・ジャガーだが。


次に部門賞。

監督賞はクリストファー・ノーラン。コーエン兄弟でも良かったのだが、これまでのキャリアを考えると、むしろ出来過ぎの印象があるノーランに花を持たせた。

脚本賞は、これ以上ない普遍的感動を与えてくれた『WALL・E/ウォーリー』のアンドリュー・スタントンとジム・リアドンに。

撮影賞は、『ダークナイト』のウォーリー・フィスター、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』のジョン・トールも良かったが、『ジェシー・ジェームズの暗殺』を筆頭に、『ノーカントリー』『告発のとき』まであったのだから、ロジャー・ディーキンスが2008年を代表する撮影監督であることは疑いようがない。

主演男優賞は、意外にこれといった決定打がいなかった。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のダニエル・デイ・ルイスは確かに凄かったが、見た状況が悪かったせいもあり、実は作品自体があまり印象に残っていない。それなのに主演のルイスだけ連れてくるのも何なので却下。考えた末、『アイアンマン』と『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』で、嬉々とした芝居を見せてくれたロバート・ダウニーJr.を選んだ。

主演女優賞は、『ブーリン家の姉妹』のナタリー・ポートマンも良かったが、演技の域を超えて一つの「人生」を見せてくれたかのような『ラスト、コーション』のタン・ウエイに。

助演男優賞は、『ノーカントリー』のハビエル・バルデムと、『ダークナイト』のヒース・レジャーの悪役一騎打ち。バルデムはまだ次の機会があるので、生涯最後にして最高の名演を見せてくれたヒース・レジャーに。

助演女優賞は意外と決定打がなかったので、『イースタン・プロミス』でアラフォー女の魅力を存分に見せてくれたナオミ・ワッツに。ちなみに自分はナオミの大ファンなので、多少贔屓目が入っている。しかし『ファニーゲーム U.S.A.』の主演演技も加算すれば、まず問題ないだろう。


しかし去年も今年も年間ベストテンの発表が2月になるってのは問題がありすぎるな。2009年のベストは、ちゃんと1月初めに発表できるようにしよう。それと今年の末には、2009年のベストだけではなく、00年代のディケイドベストも選ばないといけないんだな。こちらも早めに用意しておかないと。


(2009年2月)

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