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06/02/2008

【ライヴ】SAICO/三上ちさ子/扇愛奈 2008.5.31

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ch315+150=251 SAICO/三上ちさ子/扇愛奈
2008年5月31日(土) 19:00〜  下北沢 CLUB 251


昨年の8月に引き続き、SAICO(鈴木彩子)が主催するch315に三上ちさこが出演。扇愛奈という人も加えた3アーティスト出演のライヴが、下北沢のCLUB 251て開かれた。

しかしいきなり頭に来た。チケットには19時30分開演と書いてあったのに、19時10分頃に行ってみると、もう演奏が始まっているのだ。19時30分というのは間違いで、実際には19時開演だったのだ。それで受付に文句を言うと、「HPなどには書いてありましたが」ときたものだ。バカも休み休み言え。チケットを買った人間は、チケットに記載された開演時間と実際の時間が違っていないかどうかを、わざわざHPで確認するのが義務だとでも言うのか。飛行機のリコンファームじゃあるまいし、そんな馬鹿げた話、聞いたことがないぞ。それをさも当たり前のように言うとは、ふざけているにもほどがある。せめて「申し訳ございません」の一言くらい言えないのか。すでに始まっていたのが扇愛奈だったからまだ良かったが、これがちさこだったりしたら、その客を舐めた対応に確実に切れていたところだ。
ライヴハウスの対応も酷いものだが、それ以上に問題なのは、チケットを売ったチケットぴあだ。ぴあ会員の予約で取ったのだから、誰に間違いのあるチケットを売ったかは簡単にわかるし、連絡先もわかっているはずだ。それならばメールなり封書なりで、その間違いを個別連絡するのが当然の義務だろう。最近のチケットぴあは、やれシステム手数料だ発券手数料だと名目を付けて、チケットの額面以外に何百円もの金を取るが、金を取るだけ取って、そんな最低限の顧客サーヴィスも無しでは搾取以外の何ものでもない。90年代のアメリカで、バール・ジャムがチケットマスターを相手に闘ったが、最近のチケットぴあやe+を見ていると、彼らの気持ちがよくわかる。


そんなわけでいきなり気分を害してのスタート。ただ、最初から見られなかったのが、ちさこやSAICOでなかったのが、まだ救いだ。


扉を開けると、いきなりレッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」そっくりのリフが聞こえてきてビックリ。客が超満員なのに、さらにビックリ。おお、この3人が揃うと、こんなにも客が入るものなのか。
それにしてもCLUB 251はステージが低いので、よほど前に行かないとアーティストの姿が見られない。同じ下北沢でも、MOSAiCがいかに見やすい良い箱かわかるというものだ。

初めて聞く扇愛奈。一言で言えば、元気いっぱいのガレージロックンロール。たまたま最初に耳にしたのは「胸いっぱいの愛を」そっくりのリフだったが、ハードロックと言うよりは、パンク〜ニューウェーヴの流れを組むロックンロールだ。バングルスとかザ・ゴーゴーズなどと言う懐かしい名前が脳裏をよぎった。だがそれ以上に一番近い音楽を上げれば、ズバリ椎名林檎。ヴォーカルの声質はまったく違うが、頭の中で簡単に林檎のヴォーカルに置き換え可能で、それがけっこうはまっているところが怖ろしい。
ただ個人的評価としては、今の自分にとってほとんど必要のない音楽だった。決してつまらないわけでもクオリティが低いわけでもない。あくまでも「今の自分にとっては必要がない」ということ。この路線だったら、もっと有無を言わせぬほど強力なグルーヴがないと、この歳になってあえて聞こうという気にはならない。

扇愛奈の終了時刻は19時45分。全て終わってから気がついたのだが、三上ちさこの演奏時間が35分、SAICOがアンコール込みで47分程度だったから、おそらく扇愛奈は40分程度。と言うことは、入った時に演っていた曲はまだ2曲目くらいだったのだろう。

扇愛奈の時は、入ったばかりであまり移動できず後方で聞いていたが、終了後ササッと前方に移動する。結果的には中央 前から6列目くらいの、かなり見やすいポジションをキープすることが出来た。


ピッタリ15分のセットチェンジで、20時から三上ちさこが始まる。バンドメンバーは、ギターが藤井一彦、ドラムスが室田憲一、ベースは誰かわからないのだが、昨年12月の代々木に参加していたのと同じ人かな? あの小屋もステージが低くてメンバーがよく見えなかったので、はっきりしない。

セットリスト
1.新曲
2.新曲
3.相対形
4.ファンダメタンタル
5.粗大ゴミ
6.Crystal Life
7.月と砂漠

1曲目、2曲目は聞いたことがないので、多分新曲だろう。どちらもリズムを強調した曲で、特に2曲目はファンクと言っていい作風。ただし黒っぽさは全然無し。トーキング・ヘッズやストーン・ローゼズなどの白人バンドがやっているファンクを、さらに薄めた お醤油ファンクだ。悪くはないが、良くもない。歌詞もまるで印象に残らないし、このような音楽やリズムは、ちさこの個性にあまり合っていないのではなかろうか。バンドの演奏もそつなくまとめている感じで物足りない。

3曲目は「相対形」。これはさすがに盛り上がるのだが、予定調和的な盛り上がりを超えるものではなく、どこかこじんまりとした印象を残す。

「次のライヴのお知らせが欲しい人は、そこらのいらない紙の裏にでも連絡先を書いて、受付に渡していってください。紙がもったいないからね」というようなMCをはさみ、4曲目「ファンダメンタル」。これも上の3曲と同様、そつなくまとまっているのだが、グイッと心を鷲づかみにするようなパワーに欠ける。一体どうしてしまったのだろう? 明日などないかの如く声を振り絞り、実際声も出なくなってのたうち回っていた、あのちさこが、何故こんなこじんまりとした表現で満足できるのだろうか?

続く5曲目はシングル「相対形」の2曲目に入っていた「粗大ゴミ」。この曲ならもっとパンキッシュに暴れられるはずなのだが、相変わらず予想の範囲内にとどまったおとなしい演奏。

前回の代々木ほど露骨に酷いわけではないが、あっさり風味の歌と演奏ばかりで、かつてのちさこにあった火傷しそうな情念がすっぽりと抜け落ちている。あの炎と氷が同居しているかのような希有のアーティスト三上ちさこは、もう帰ってこないのだろうか…

…と思った矢先に始まったのが、fra-foaの「Crystal Life」。これが良かった。それまでの物足りなさを一挙に吹き飛ばすような情念の噴出。fra-foa時代とは別人のように安定していたヴォーカルが、一転して音程乱れまくりになるのだが、そんなことは気にもせず一つ一つの言葉に燃えるような思いを込めて歌い上げるちさこ。「ちさこがこれだから、俺たちも行っちゃっていいんだよね?」とばかり、演奏の熱量もグンとアップ。室田憲一がようやく本領を発揮。ベースとの連携も鉄壁で、その上で藤井のギターが暴れまくる。そう、このバンドには、この曲や「Yes」のような、ミディアムテンポでエモーショナルに盛り上がるナンバーがよく似合う。

続く7曲目は「月と砂漠」。お約束のラストナンバーなので「え? もう終わり?」と驚いたが、こちらも前の曲に引き続いて好調。ヴォーカルは前回披露した気持ち悪い歌い方の残滓があるが、あそこまで酷くはないので許容範囲。そしてバンドの演奏は、前半のくびきから解かれたかのごとく白熱したものになっている。むしろ、何故最初からこれくらい自由に暴れてくれなかったのかと不満が高まるほどだ。

演奏終了時刻は20時35分。最後の2曲でようやく盛り上がったものの、前半こじんまりまとまりすぎていたのと、演奏時間が35分と短かったため、妙にあっさりとした印象が残った。昨年12月に代々木で見た最悪のライヴよりは遙かにいいが、昨年8月のch315初登場時に比べるとだいぶ落ちるという評価だ。「解放区」や「咲かない花」のような必殺ナンバーをはずした選曲も少し物足りない。
考えてみると、2006年から2008年にかけての彼女の音楽活動と言えば、上に述べた3回のライヴのみ。特に2006年初めから2007年の夏までの間、表立った活動を一切していなかったのだから、今もリハビリ中というか、完全復活に向けての手慣らし期間と捉えるべきなのかもしれない。昨年8月の素晴らしすぎるライヴは、1年9か月ぶりのライヴで気合いが入っていたことや室田憲一との初顔合わせなど、様々な条件がうまく重なった結果のマジックだったと考えた方が良いのだろう。

次のライヴは7月だが、注目すべきは、すでに発表されているバンドメンバーが今回とまったく違うこと。これが藤井や室田とのコラボレーション終了を意味するものなのか、その時だけのスペシャルパンドなのかは、わからない。ただ、上に述べたように完全復活に向けての手慣らし期間と考えるなら、様々なミュージシャンと組んでみて、その化学反応を見るのは大いに意味があることだ。箱も再びMOSAiCなので、今回よりも見る条件は確実にいいはずだ。水曜日のライヴはハウス公演はいろいろな意味できついが、とりあえず楽しみにしておこう。チケットはすでに予約済みだ。


ちさこの演奏が終わると、急に場内に余裕が出来る。ちさこ目当てで来て、SAICOは見ずに帰る客が多いのだろうか? だとすれば非常にもったいない。ともあれ空間にグッと余裕が出来て、だいぶ楽に見ることが出来た。


SAICOの登場は20時53分頃。1曲目は名曲「世界が静かで こんなに静かで」。「それでもいい〜〜〜」の絶唱に、いきなり心を鷲づかみにされる。2曲目が「二人は」と、唯一持っているアルバム『Numb』からの曲が続いたため、実にすんなりとSAICOの歌世界に入って行けた。
「鬱の時に作った歌です」という紹介で始まった3曲目は、昨年8月のライヴでも聞いた自伝的ナンバー「MOTHER」。重苦しい曲だが、言葉一つ一つが突き刺さってくるようで、耳をとらえて放さない。
4曲目、5曲目は曲紹介がなかったのでタイトルがわからず。6曲目は「CEREAL」。アンコールは「VALENTINE」。終了時刻は21時40分だったから、アンコールを含めて正味47分程度。
6曲目で引っ込んだ後、皆しばらく沈黙。10秒くらいしてから、ようやくアンコールの手拍子が起こるという、あの妙な間がおかしかった。本当にSAICOファンは、ちさこのファンと違っておとなしいというかシャイな雰囲気が漂っている。

今回最も驚いたのは、バンドサウンドの素晴らしさだ。驚くほどソリッドで、しかも楽器の一音一音がはっきりと聞こえる。前回は、バンドサウンドにそれほど強い印象は残っていないのだが、今回はこの音に身震いが抑えられなかった。特に左利きのギター(名前を忘れた)の音色が個人的にツボ。ベースとドラムスも文句なし。ほとんどの曲がミディアム〜スローテンポなのに、あんな太いグルーヴを醸し出せるのは見事の一語に尽きる。
その上に乗るSAICOのヴォーカルは、よく聞けば必ずしも上手いというわけではないのだが、自分が歌いたいことを自分自身の声と言葉で歌いきっている充足感がはっきりと伝わってくる。見ていると、歌っているときの彼女は本当に幸せそうだ。瀕死の交通事故(片肺を失っているそうだ)をはじめ、SAICOがこれまでの人生で驚くほど辛い目に遭ってきたことは知っている。しかし彼女の歌には、「歌うことでマイナス(人生の不幸)を埋められる喜び」ではなく、純粋に「今ここにあるプラス(歌えること)の喜び」だけが感じられる。そのポジティヴなヴァイブレーションが実に心地良い。

前回見たときも良いとは思ったが、今回はそれを凌ぐ実に感動的なライヴだった。このライヴに足を運んだ最大の目的は言うまでもなく三上ちさこだが、はっきり言って今回はSAICOの圧勝だった。今度はちさこが出なくても、彼女だけを目当てにライヴに足を運びたい。遅まきながら、SAICOファンの末席に名を連ねさせてもらうことにしよう。


入場時、何故かアンケートやチラシをもらえなかったので、帰るとき受付に言ったら「もう全て無くなってしまった」と言われた。何だか一から十までむかつくライヴハウスだ。極力ここには来ないようにしよう。やはり下北沢のライヴハウスはMOSAiCに限る。


(2008年6月)


【追記】2008.6.7
何を今更のように気がついた。ch315というのはch(ちさこ)+315(SAICO)という意味で、あの二人が組んだイヴェントにのみ使われる名称なのか。前回は、そのことに全く気がついていなかった。今回は身長150cmの扇愛奈が加わって、場所がCLUB 251だから、イヴェント名が「ch315+150=251」。315+150=251の意味は理解していたが、肝心のch=ちさこであることに今まで気づかなかったとは…

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