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04/30/2008

【演劇】劇団東京乾電池『コーヒー入門』2008.4.28

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劇団東京乾電池『コーヒー入門』
2008年4月28日(月) 19:00〜 ザ・スズナリ


加藤一浩の戯曲を、柄本明が演出した不条理コメディ。最近、東京乾電池の新作公演は、加藤作品ばかりになりつつあるようだ。ただし本作は純然たる新作ではなく、2006年に『白鷺の舞い降りる森で』というタイトルで上演されたものを、タイトルと演出を変えて再上演したもの。初演は見ていないので比較は出来ないが、内容も演出もかなり変わった模様だ。

不動産屋の詐欺によって、別荘地にある一軒の家に同居することになった二組の夫婦。しかし個性も価値観もまったく違う二組の夫婦は、事あるごとに対立する。両者は何とか妥協点を見いだそうと努力するのだが、議論の前提からして食い違い…というような内容。
このあらすじだけ見れば、さながらハリウッド映画のようである。しかし加藤一浩作品だから、ハリウッド的なストーリーテリングにはほど遠く、とりわけ後半になるほど不条理劇の要素が強くなっていく。たとえば妻1と妻2が何故か急に仲良くなって服を交換したりする。そこに至るきっかけは一応描かれているものの、普通の作劇術からすればありえない描写と展開だ。その後も不条理度は次第に強まっていき、特にエピローグに当たる部分は ほとんど意味が分からなかった。

とは言え、個人的にはかなり面白かった。前に見た加藤作品『海辺のバカ』『恐怖 ・ハト男』に比べれば、これでもだいぶわかりやすくなっていて、普通に楽しめる部分が多かったからだ。『恐怖 ・ハト男』も面白かったが、役者の魅力は確実に今回の方が上だった。

最後に少しだけ出てくる、夫婦1の息子と思しき人物を除けば、登場人物は4人だけ。夫1と2は毎日同じだか、妻1はダブルキャスト、妻2はトリプルキャストになっている。この日のキャストは以下の通り。

夫1 谷川昭一朗
妻1 鈴木千秋
夫2 本山彦次郎
妻2 江口のりこ

この組み合わせだと、谷川昭一郎と鈴木千秋のコンビはごくノーマルな夫婦で、本山彦次郎と江口のりこのコンビが、それを引っ掻き回す奇妙な夫婦というわかりやすい構図になる。特に谷川昭一朗と鈴木千秋は、見た目と役柄の年齢が大体合っているので、無理なく感情移入が出来る。ちょっとずんぐりした主婦体型の鈴木と、ほっそりとしたモデル体型の江口は、視覚的にも面白い対比を見せていた。
4人の内、本山彦次郎だけは実年齢と大幅にかけ離れた老人役なので、どうしても「芝居をしている」という感じが先に立ってしまうのが、見ていて辛い。しかしこの役はダブルキャストなどではなく、全て本山が演じているので、そんな違和感も込みでのキャスティングだろう。その意図がうまく行っているかどうかは疑問だが。
今の東京乾電池で一番の売れっ子女優 江口のりこは、ヌボッとした存在感がとても印象的だった。特に最初の方でヨーガのような美容体操をするところなど、全身で「天然」を表現していてお見事。あの木訥とした佇まいで、夫婦1の不満や怒りをのらりくらりと交わしていくところは、大いに笑える。台詞の端々に関西訛りが出るところも可笑しかった。

後半いささか失速気味になるのが残念だし、ラストも分からないなら分からないなりに もう少し印象的なものにして欲しかったが、この4人の芝居を見ているだけで十分に楽しめる作品だった。


しかし客席は、これまでにスズナリで見た作品中 最も寂しい入りだった。ごく普通の演劇ファンには わけの分からない奇妙な話だろうし、『海辺のバカ』あたりが好きな人には中途半端に分かりやすいと軽く見られ、どっちつかずの作品と思われてしまったのだろうか。
そもそも「出演 劇団東京乾電池メンバー」というチラシの表記も感心しないものがある。劇団東京乾電池メンバーと言っても、今やベテランから新人まで全部で70人ほどいる大所帯なのだから、その内の誰が出るかもわからない作品を わざわざ見に来る演劇ファンは、決して多くはないだろう。今人気のある江口のりこの名前を前面に出すだけでも、かなり違ったはずなのに。公演が始まっても、劇団HPにさえ出演者の名前が載らないのでは、不入りも無理はあるまい。ゴールデン街劇場ならともかくスズナリで13日間24回公演なのだから、もう少し普通に客を呼ぶための宣伝をしてもバチは当たらないだろう。

演出の柄本明は後方に座っていて、途中までは例の笑いがけっこう聞こえていたが、今回は普通に可笑しいところで笑っていて、いつものような「何故こんなところで笑うんだ?」という違和感は無かった。しかしその笑いも、途中でピタリと途絶えてしまったから、後半失速気味に感じたのは、やはり僕だけではないのだろう。終演後、彼がいつにないほど険しい顔をしていたのは、芝居が気に入らなかったためだろうか、客の不入りや反応の悪さに頭を痛めていたためだろうか。

今回の組み合わせは、一番ノーマルと言うか基本形だと思うが、別キャストで妻1が松元夢子、妻2が中村真綾だったらどうなるのか、大いに気になるところだ。松元夢子は11月の月末劇場で、そのヌメッとした奇妙な存在感に触れて、大いに気になっていた女優だし、年齢が鈴木よりだいぶ若いので、そのアンバランスさが作品にどんな影響を与えるのか興味がある。中村真綾は月末劇場で3回も見ている新人で、どうせならその成長を逐一見守りたいところだ。リピーター割引で1500円か2000円で見られれば、この二人が出る回を見てみたいのだが、3500円ではさすがにちょっと… ダブルキャスト/トリプルキャストを用意した公演で、しかも客は入っていないのだから、それくらいやっても良さそうなものなのに。


(2008年4月)


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