【映画】『プレステージ』一流のトンデモ エンタテインメント(ネタバレなし)
「絶対に話さないでくれ」と開巻早々口止めをされてしまうラストに限らず、意味のある文章を書こうとすると、どうしても何らかのネタに言及してしまうため、一番の要点だけを、ごく簡単に。
これは結局のところ「映画作りに関する映画」だと思う。
後半の山場となるマジックについて「奴は見せ方が下手だ。その点では俺の方が上手い」という台詞があるが、これはまさしくクリストファー・ノーラン自身の思いだろう。
何しろこの作品には「それってありか?」「客を馬鹿にするな!」といった声が出ても不思議ではない大ネタがある。普通なら、トンデモ映画として片付けられて当然の内容だ。そんな作品が批評的に高く評価され、ヒットもしている。それは「トンデモネタを題材にしながら、最高の映画話術を駆使することで、一流の映画を作ってやる」というノーラン監督の狙いが成功した証だろう。ヒッチコックという偉大なる先達が示したように、見せ方さえ上手ければ、トンデモ映画も一流の映画になるのである。
他にも「観客は肝心な部分は何も見ていない」「観客は騙されたがっている」など、そのテーマに即した台詞があるが、この辺について詳しく語ろうとすると、どうしても中身について触れることになるので、これ以上は語るまい。
京極夏彦の小説『魍魎の匣』や『姑獲鳥の夏』を楽しめる人なら、この映画もきっとOKだろう。どちらも、トンデモな内容を、最高の話術によって力業で一級のエンタテインメントに仕上げた点は、よく似ている。
P.S.
極力予備知識を入れずに見に行ったため、ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベイル、スカーレット・ヨハンソン以外に誰が出ているのか知らなかった。そのため、ある重要な登場人物を見て「この役者、妙にあの人に似てるなあ。ひょっとして本人?」と気になっていたのだが、エンドクレジットを見たら、やはり本人だった。しかもその人物の助手が、あの人であることを知って、さらに驚いた。まだ知らない方は、その点もお楽しみに。あの役にこの二人とは、遊び心に溢れ、真実と嘘を巡る映画のテーマにも沿ったナイスキャスティングだ。あのトンデモネタも、この二人なら本当にやりかねない…と思わせるところが凄い(笑)。
(2007年6月)



Comments
TBさせていただきました。
奇術師のマジックに対する執念の強さに驚かされました。
Posted by: タウム | 06/18/2007 at 00:45