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06/17/2007

【映画】『キサラギ』本年度ベストワン候補の爆笑密室劇

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B級アイドル如月ミキが自殺してから1年後、ファンサイトで知り合った男たちが集まり、ミキの一周忌を営むことになった。集まったのは、家元(小栗旬)、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)、スネーク(小出恵介)、安男(塚地武雅)、イチゴ娘(香川照之)の5人。最初は穏やかに始まった一周忌のパーティーだったが、参加者の一人が「彼女は自殺したのではなく殺されたのだ」と言い始めたことから、追悼会は思いもかけぬ方向に展開していく。原作・脚本は古沢良太、監督は佐藤祐市。


自分のアンテナにまったく引っかかってこなかった作品だが、こんなオタクテイストな作品とは縁が無さそうな沢木耕太郎が「銀の森へ」で誉めていたのに興味を引かれ、見に行った。

結論から言えば、本年度の日本映画で1、2を争うことになるだろう傑作だ。

爆笑に次ぐ爆笑。ここの数年でもっとも大笑いした映画だ。しかも最後には、不思議な感動さえ残してくれる。ほぼ男5人しか出てこない密室劇で、これだけ面白い作品を作り上げた手腕には、ただただ敬服する他ない。2年前のマイベストワン『運命じゃない人』にも匹敵する上手さ。製作費は、同日に見た『ゾディアック』の100分の1程度だろうが、面白さではこちらの方が100倍勝っている。『運命じゃない人』同様、「金がなくても、頭をフルに使えば面白い映画を作ることは可能である」ということを証明した作品だ。

『パイレーツ・オブ・カリビアン』のような、次々と見せ場が連続するハリウッド製スペクタクルを「ジェットコースタームービー」と言うが、その呼称は、この作品にこそふさわしいのではなかろうか。次から次へと続くドンデン返し。呆気にとられる嘘八百の雨あられ。そのジェットコースターぶりを楽しむためにも、極力予備知識を持たずに見た方がいい。ある意味『プレステージ』なみにネタバレ厳禁の映画。したがって、この文章でも内容について詳しく書けないのが残念である。

ベースとなっているのは『十二人の怒れる男』だろう。ある一室に集まった男たちが議論を重ねていく中から、思いがけぬ真実が明らかになり、その過程で男たちの素性もわかってくるという大枠はまったく同じ。外の天気の変化も、あの映画のパロディであることを物語っている。他にも『レザボアドッグス』など、様々な映画を想起させる要素が満載で、熱心な映画ファンならニヤニヤしまくりだろう。特に目立つネタの一つは『踊る大捜査線』で、少しでも知っている人なら、あのくすぐりには抱腹絶倒間違いなしだ。
また、前半はネット文化やオタク文化にからんだ笑いも満載。特にハンドルネタは、わかっちゃいるけど爆笑もの。私も「ぼのぼの」なんぞというハンドルを使っているせいで、オフ会で初対面の人と会うたびに「お前、そのツラさげて何がぼのぼのだ! わりゃあ舐めとんのかーっ!( ゚Д゚)」と毎回どつかれてばかり。おかげで生傷が絶えません(ウソ)。

『十二人の怒れる男』たちと同様、密室劇/会話劇でありながら、これが見事に「映画」になっている。そして元々舞台劇だった『十二人の怒れる男』とは逆に、この作品は、これから舞台化されて、さらに人気を博すことになるのではないだろうか。だいたい「不在の人物をめぐる物語」というところが、いかにも現代の演劇っぽい(笑)。一室だけのワンシチュエーションコメディなので、どんな小さな劇団でも上演できる。あとは役者の魅力と演出によって、様々な『キサラギ』が誕生するはずだ。映画版と違う面白さや個性を出す余地は山ほどある。『キサラギ』が小劇場界の人気レパートリーとして、あちこちで上演される日を思わず夢見てしまう。

この作品の唯一最大の難点は、ラスト付近で突如サーヴィス精神旺盛になり「何もそこまで描かなくても」というシーンが続出すること。特に最後の特別ゲストは蛇足以外の何ものでもない。この辺りでいきなりの大減点。それこそ『十二人の怒れる男』のような、あっさりしたラストにしてくれたら良かったのに… それまでのストイックさを思うと、どういう意図であんなラストを付けようと思ったのか、理解に苦しむところだ。しかしそこまでの貯金があまりにも膨大なので、今年随一の傑作という評価を崩すまでには至っていない。

というわけで、久々に「何も言うな。騙されたと思って必見!」と声を大にして叫びたい映画の登場だ。

予備知識は極力入れず、黙って劇場に向かうべし。絶対に損はしないはずだ。


ところで如月ミキという名前の由来は、もしや如月ハニー+牧村美樹? つまり『キューティハニー』と『デビルマン』のヒロインの合体なのか?


http://www.kisaragi-movie.com/


(2007年6月)


【追記】
ネットで調べている内に、実はこの作品、元々は脚本の古沢良太がいた48BLUESという劇団用に書かれたもので、2003年12月に中野MOMOで上演されたこともあるという情報を発見した。失礼いたしました。でもその時の芝居はそんなに大評判になったわけでもなさそうなので、逆輸入のような形で、今後演劇用の人気戯曲になるのではなかろうか。


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