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05/28/2007

【映画】河瀬直美のカンヌ国際映画祭グランプリ受賞に思う

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河瀬直美が『殯の森』でカンヌ国際映画祭でグランプリ(パルムドールに次ぐ第2位)を受賞したそうだ。とりあえずはめでたい。

「とりあえずは」と、つい醒めた姿勢を取りたくなるのは、ここ10年間のカンヌ国際映画祭における日本映画の扱いについては、腹に据えかねることが多く、そのため今回の出品も最初から冷ややかな目で見ていたからだ。

何に腹を立てているかというと、一言で言えば「出品する(コンペ参加を許す)タイミングが違う!」ということだ。

たとえば北野武がコンペ部門に出品した作品は『菊次郎の夏』。だが、あれは明らかに賞レースに出すタイプの作品ではないだろう。出すなら、その前の『ソナチネ』か『キッズ・リターン』を出せってば。『ソナチネ』は監督週間か何かで上映されたはずだが、外国の評論家がそれを見て「なぜ、これをコンペに出さなかったんだ。これなら十分にパルムドールを狙えたのに」と言ったそうだ。当然のことだろう。
ちなみに『菊次郎の夏』がコンペ参加した1999年には、諏訪敦彦の渾身の傑作『M/OTHER』が国際批評家連盟賞を受賞している。この年出すなら、そっちを出せってば。

黒沢清もそう。なぜ『CURE』や『回路』ではなく、『アカルイミライ』なのだ。なぜいちいち、その監督の最高傑作をはずしてコンペ参加しているのだ。

2001年には今村昌平の『赤い橋の下のぬるい水』、青山真治の『月の砂漠』、是枝裕和の『DISTANCE』と、それぞれの最高傑作とは言いかねる作品が3本ずらりと並び、それらがまったく賞を獲れなかったことで、この時期過熱気味だった、国際映画祭における日本映画人気がバブルとしてはじけてしまった。
しかも皮肉なことに、この年の国際批評家連盟賞は、コンペ外で上映された黒沢清の大傑作『回路』なのだ。お前ら、本当に出品する作品を間違えてる。

そんなわけで、カンヌを制して当然のはずの日本の二大巨匠 黒沢清、北野武の両名は、カンヌで主要賞を受賞せぬまま、その創作のピークを過ぎてしまったのである。これは何か間違ってはいまいか。

これが出品する日本側の問題なのか、それともカンヌの運営委員会の問題なのか、あるいはその両方なのか、詳しいことは知らない。ただ事実として、コンペに出品されるべき作品が出品されず、明らかにその監督の最高傑作とは言いかねる作品ばかりが出品されるという、おかしな現象が存在するということだ。

もちろん是枝裕和の『誰も知らない』、青山真治の『EUREKA』のように適切な出品もあるが、不適切な出品の方が遙かに多く、最近は日本の監督がカンヌのコンペに出品と聞くと「ああ、きっと『アカルイミライ』や『DISTANCE』みたいに、どうせその監督の自己最高記録からは遠い作品だろう」と白けた思いを抱いてしまうのだ。したがって、今回の河瀬直美のコンペ参加も、最初から「ふ〜ん」という目でしか見ていなかった。

『殯の森』がどの程度の作品なのかは、見てみないとわからない。今年のカンヌ受賞作は、60回記念賞のガス・ヴァン・サント以外、見事に知らない名前ばかりが並んでいるので、ひょっとすると純粋に実力主義で素晴らしい作品が受賞しているのかもしれないし、ひょっとするとひねくれた審査員がマイナーな作品ばかりを持ち上げたのかもしれない。

そんなわけで、本当の「おめでとう」は、実際に作品を見て、それに見合う感動を受けるまで、保留しておこう。


(2007年5月)


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Tracked on 05/28/2007 at 18:44

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