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04/24/2007

【演劇】兵庫県立ピッコロ劇団『場所と思い出』2007.4.22

Omoide


兵庫県立ピッコロ劇団『場所と思い出』
2007年4月22日(日) 14:00〜 俳優座劇場


六本木の俳優座劇場で「別役実祭り」と銘打って3本の芝居が上演されている。第1弾の『やってきたゴドー』は見逃したが、第2弾の『壊れた風景』は見ることが出来た。そして今回は第3弾の『場所と思い出』。4年前にMODEの公演で見て、非常に面白かった作品だ。演出は、その時と同じ松本修。役者はMODEのレギュラー陣から兵庫県立ピッコロ劇団の役者に代わっているが、この劇団は、別役実が代表を務めているせいもあってか、地方の公立劇団としては異例なほど有名だ。MODEとの違いを楽しむのも一興、ということで見ることにした。

チケットは、発売後かなり経ってからチケットぴあで買ったのだが、どういうわけか2列目の真ん中がポコンと空いていて驚いた。しかしスズナリで上演されたMODE版と違い、俳優座劇場の広さに合わせた空間の使い方をしていたので、2列目だと前過ぎて少し見づらかった。いつもは「かぶりつき上等!」とばかり前で見たがる方だが、ある程度大きな劇場では、さすがに少し離れた方がいいようだ。


戯曲は同じ、演出家も同じ、美術セットもほとんど同じなので、作品全体の印象は、2003年のMODE版とあまり変わらない。強いて言えば、舞台が広くなった分、美術セットの奇妙な歪みも拡大して、ドイツ表現主義映画を想起させたのが興味深かった。

他がほとんど同じである以上、あとはピッコロ劇団の役者がどうかという話になってくるが、孫高宏/安達朋子/木全晶子/福島栄一/和田友紀皆の5人は、皆、堅実な演技力の持ち主だった。全国的に名が知られる劇団だけのことはある。しかし堅実さの裏返しと言うべきか、役者としての華に欠ける感は否めなかった。また、微妙に肩に力が入っていて、「生真面目に不条理を演じている」印象も受けた。もう少し軽やかさや自然なユーモアが欲しいところだ。
そんな風に厳しく見てしまうのは、MODE版の役者よりも、2週間前に見たばかりの『壊れた風景』に出ていた役者たちが印象深かったせいだろう。そちらは文学座/青年座/円といった老舗劇団の中堅精鋭揃いだけあって、舞台に出てきただけで目を惹きつける華がある。この点では、明らかに『壊れた風景』組の勝ちだ。ピッコロ劇団と同様「生真面目に不条理を演じている」感は無きにしもあらずだが、その計算が表面に現れることはほとんど無い。特にマラソンランナー役の佐々木睦が怪演で、テーマや雰囲気を壊すことなく、芝居にエンタテインメントとしての豊かさを与えていた。そちらを見てしまった後では、『場所と思い出』の役者たちは、どうしても地味に見えてしまう。


とは言え、2回目となる『場所と思い出』よりも、初めて見る『壊れた風景』の方が新鮮に映ったという点は考慮しなくてはなるまい。客層が違うので一概には言えないが、会場の笑いは間違いなく『場所と思い出』の方が大きかったし、終演後の反応を見ても、観客が皆芝居を楽しんだ雰囲気がうかがえた。『壊れた風景』やMODE版との比較を脇に置いて、あくまでも1本の芝居として評価すれば、十分に楽しめる作品だったことは間違いない。

なお上記5人の他に、演出の松本修も最後にチョイ役で出てくる。唯一MODE版と共通の出演者だ。この人の演技は、『唐版 俳優修業』『秘密の花園』でも見ているが、常に変わらないのは「演技のメカニズムが外から丸見え」ということ。役の解釈や演技そのものは決しておかしいわけではないのだが、その台詞回しや動作に至る思考の流れが、何故か観客にダダ漏れになっているのだ。それだけ論理的に物事を考えて演技をしているということだろうが、この人は俳優から演出家に転身して本当に正解だったな…と見るたびに思う。


調べてみると、『壊れた風景』は1976年、『場所と思い出』は1977年の作品だ。物語や設定、美術、世界観などは極めてよく似ていて、変奏曲と言っても差し支えない2作品。違いとしては、『壊れた風景』の方がいくらか現実的で、物語が一方向に流れていくのに対し、『場所と思い出』は、さらに不条理の度が増し、終盤で物語が逆行する部分がある。2回目になるとネタがわかっているため、その逆行部分で少し退屈するのだが、あれがあることで「おもろうて、やがて恐ろしき」感覚が、より強いものになっているのも確かだ。

別役実の芝居と言えば「あれ」「それ」といった指示代名詞が多用されるのも、大きな特徴だ。事実『壊れた風景』では、ワープロソフトを使って何回出てきたを調べたくなるほど、「あれ」「それ」が全編に氾濫していた。ところが『場所と思い出』では、指示代名詞がほとんど出てこない。しかしMODE版でもこうだっただろうか? 僕の記憶では、やはり指示代名詞が多用されていたように思ったのだが、何かの勘違いか? しかし間違いなく、そんな芝居を見たことがある。あれは何か別の作品だったのだろうか? 連続上演された『ゼロの神話』? いや、あちらは別役実ではなく山崎哲の作品だ。だとすれば一体…? どうも気になって仕方がない。


(2007年4月)

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