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04/23/2007

【演劇】劇団 東京乾電池『授業』Nヴァージョン 2007.4.21

Jugyou1


劇団 東京乾電池『授業』Nヴァージョン
2007年4月21日(土) 13:30〜 OFF OFFシアター


劇団 東京乾電池による「授業1980」という公演が始まった。4月20日(金)から5月6日(日)までの17日間、下北沢のOFF OFFシアターで、イヨネスコの代表作『授業』を、役者の組み合わせを替えて全16ヴーァジョン/40公演行うという、かなり無謀な試みだ。採算が取れないのは当然としても、赤字を抱え込むことにならないか他人事ながら心配だ。ちなみに「授業1980」の1980とは、チケット代の1980円から来ている。リピーターは500円割引で1480円になるそうだ。上演時間55分程度の短編なので、妥当な値段だろう。


『授業』という作品そのものは、ちょうど1年ほど前に東京乾電池祭りで見ている。
http://bonobono.cocolog-nifty.com/badlands/2006/05/_30_0d01.html

戯曲は全く同じだし、演出らしい演出もないので(チラシを見ても「演出」という肩書きは存在していない)、必然的に役者の演技が全てになってくる。

昨年見たときのキャストは以下の通り。

教授=ベンガル
生徒=高尾祥子
女中=角替和枝

そして今回見たNヴァージョンは以下の3人。

教授=西田清史
生徒=ともさと衣
女中=鈴木千秋


今回16ヴァージョンのうちNヴァージョンを選んだ理由は、女生徒役のともさと衣に興味があったからだ。とある理由で彼女のヴォイスサンプルを聞き、その声に強く心を惹かれ、実際の芝居を見てみたいと思ったのだ。調べてみると、MODEの『AMERIKA』や東京乾電池の『長屋紳士録』にも出ていたようだが、まるで記憶にない。どちらもたいへんな人数が出てくる作品なので、よほど目立つ役でない限り覚えていないのも無理はないが。

そんなわけで、一番の関心はともさと衣の演技にあったのだが、最初の内はかなり失望した。と言うのも、彼女の全身から知性やシャープさがにじみ出ているため、無邪気で頭の悪い女生徒が、次第に教授の神経を苛立たせていく感じが、まるで出ていないのだ。その上背が高いし容貌が大人びているので、女子学生の扮装がどうにも似合っていない。いかにもコスプレという雰囲気。こうしてみると、昨年の高尾祥子は本当に馬鹿で無邪気な女生徒という感じで、この役にはピッタリだった(本当に馬鹿だという意味ではありません(笑)。「馬鹿そうに見える」という意味)。
しかし女生徒が「歯が痛い」と言い出してからの後半で、ようやく高尾にはなかった、ともさとならではの個性が生きてくる。高尾は、後半も無邪気さが強調されていて、ベンガルが一人で暴走していく感じだったと記憶しているが、ともさとの芝居では、女生徒が不機嫌さを露骨に表し、教授に対して攻撃的な態度を見せていく。目鼻立ちが大きく、シャープで神経質そうな容貌なので、こういう感情表現をさせると非常に迫力がある。ベンガル×高尾が剛と柔の闘いなら、西田×ともさとは剛と剛の闘いだ。作品全体のバランスを考えると、高尾の方がこの役に合っていると思うが、ともさとの攻撃的な演技も、それとは違う方向でなかなか面白かった。やはり要注目の女優だ。ただ不思議なことに、彼女に関心を持つきっかけとなった「声」については、舞台ではあまり強い印象を覚えなかった。

教授役の西田清史は、まだ実年齢が若くて、老け作りをしても無理があるのが難。ともさとの女学生姿も似合っていないため、若作りのコスプレと老け作りのコスプレが絡んでいるように見えてしまった。芝居そのものは無難な出来だと思う。多少台詞を噛んでいたものの、目立った欠点はない。ただし比較すると、ユーモアのセンスと存在感では、昨年のベンガルに大きな分がある。
ベンガルの教授は、最初ノーマルに見えたのが、次第に狂っていく様がおかしかった。それに対し西田の教授は、登場したときから狂っているように見える。劇的な効果としてはベンガルの方が面白い。しかし物語の設定を考えると、最初からおかしい西田の方が妥当な解釈にも思える。これはどちらが上か下かではなく、解釈の違いを楽しむところなのだろう。

女中役の鈴木千秋は、さり気なく良かった。教授役の西田がまだ若いので、釣り合いも取れている。こちらもユーモアでは角替に分があるが、教授の暴走を心配している感じは、鈴木の方が良く出ていたと思う。


作品全体の感想は、昨年見たときとあまり変わらない。秀逸なブラックユーモアに溢れた物語であり、役者ならば、ぜひやってみたいと思う芝居だろう。


リピーターなら1480円だし、どうせならもう1ヴァージョンくらい見たいところだが、現時点では未定。柄本明が教授をやるヴァージョンは、残念ながらスケジュールが合わない。その次に見たい教授役者は綾田俊樹。しかし彼の出るヴァージョンでスケジュールが合うものを調べていくと、皮肉なことに「女生徒=ともさと衣/女中=鈴木千秋」のIヴァージョンになる。しかしまあ、こういう企画なので、あとの二人がまったく同じで、教授だけを替えた場合どんな化学変化が起きるのか、それを楽しむのも一興ではあるな…


(2007年4月)

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