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02/10/2007

【演劇】熱帯倶楽部『デンキ島』2007.2.7

Denkizima1


熱帯倶楽部『デンキ島』
2007年2月7日(水) 19:00〜 シアターモリエール


つい数日前まで、会場をシアターサンモールだと思いこんでいた。と言うより、シアターモリエールという文字を見て、頭の中でシアターサンモールを思い浮かべていたのだ。モリエールとサンモール…ちょっと似てるでしょ?(^^;) 危うくそのままサンモールに行くところだった。危ない危ない。


熱帯倶楽部というユニット(劇団?)や演出の松村恵二については、ほとんど何も知らない。脚本はモダンスイマーズの蓬莱竜太で、過去にモダンスイマーズで上演された際に好評を博したことはネットで調べてわかったが、あいにくモダンスイマーズ自体、名前は知っているが見たことはない。そんな作品をわざわざ見に行った理由は、言うまでもなく出演者の石村みか(石村実伽より改名)目当てだったが、彼女を抜きにしても、十分見る価値のある作品だった。

石川県の小さな島を舞台にした青春ドラマ。才能に恵まれながらも、父親の残した借金や病気の姉(石村みか)のために、新聞配達によって生計を立てている坂本シンヤ(畑中智行)を中心に、様々な若者が、希望と挫折の中でもがきながら大人になっていく姿を描く。
タイトルやチラシなどの印象から、もっとチャラチャラした内容を予想していたのだが、意外にもシリアスなタッチで青春の痛みを描いた作品で、ベタではあるものの、それなりの感動をもたらす内容となっている。

最大の成功要因は、再演されるだけの意味がある、ウェルメイドな脚本だ。特に中盤からは文句なしに引き込まれる。シンヤの一家に降りかかった災難や、シンヤとミツロウの関係など、よくわからない設定が幾つかあり、それが前半で感情移入を妨げる原因になっていたのだが、見終わってみると、その曖昧さがドラマに微妙な陰影を与えているようだ。
また、この内容であれば登場人物のうち誰か一人くらいは死にそうなものだが、誰も死なない。「死」という最もドラマチックな出来事は訪れない代わりに、全ての人間が何かを少しずつ失っていく。そして何かを失いながらも、代わりとなるものを求めて、あがくように生きていく…そのリアルな展開こそ、この作品の身上だろう。

松村恵二の演出は、可もあり不可もあり。一番の難点は、時間が行ったり来たりする複雑な構成を、うまく整理しきれていないところだ。こういうものを見るたびに、演劇における時間表現は、映画よりも遙かに難しいものであることを痛感する。
良い点は、熱くなりすぎることも、照れることもなく、ベタな青春ドラマに真正面から挑んだ真摯さ。そして音楽だ。開演前のBGMからして、ニルヴァーナやR.E.M.、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなど、いかにもな選曲で気分を盛り上げ、要所要所で「おっ」と思う音楽を挿入する。白眉は、ラストに流れたブルース・スプリングスティーンの「ザ・リバー」だ。普通そこでこの曲を流すか?と言いたくなるベタの極みな演出だが、これが妙にはまるのだ。スプリングスティーンの曲を聞いて、こんなに胸が震えたのは何年ぶりだろうか。

若い役者たちは、全体に荒削りな部分が目立ったが、内容が内容なので十分に許せる範囲。まだ初日でもあり、もう何ステージかこなしていけば、肩の力が抜けて、もっと良くなることだろう。
シンヤ役の畑中智行はキャラメルボックスの人気者らしく、彼目当てらしい客も目立った。凄く良いというわけでもないが、さわやかな個性で、主役として過不足のない芝居をしていたと思う。
脇で目立ったのは、売れない駆け出し役者役の笠原秀幸、そしてヤクザ役の小野瀬弥彦。桟敷童子の芝居では、正直あまり印象がない小野瀬も、この作品では強いインパクトを残す。その彼が埋もれるほど、桟敷童子には濃い役者が揃っているということか。

そしてお目当ての石村みか。彼女としては特に最高の演技というわけではないが、その感情表現の細やかさは際だっていた。他の役者たちが、特定の感情を赤なら赤、青なら青という風に表現するのに対し、石村はそれをもっと微妙なグラデーションで表現できるのだ。赤を表現するときにも常に青が微妙に混じり、それが青に転じても、赤がゆらめくように混じってくる…いつもより肩の力を抜いた芝居だからこそ、そのグラデーションの微妙さがよくわかる。
弟とミュージカルを見に行って大はしゃぎした後、一転して涙ながらに自分の真情を訴えるシーンは、この作品の最大のクライマックスと言っていいだろう。あそこを見れば、何故この役に石村がキャスティングされたのか一目瞭然だ。
「石村実伽」から「石村みか」に改名しての第一作。まずは順調な滑り出しだ。


見ないと一生の損というほど傑出した作品ではない。演劇の概念を覆すようなとんがった作品でもない。しかし、こういう当たり前のドラマを真摯に描いた、それなりに出来の良い作品は、たまに見ると非常に新鮮に映る。石村みかが出ていなかったら確実に素通りした作品だが、見ることが出来てラッキーだった。


(2007年2月)

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