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02/18/2007

【演劇】劇団桟敷童子『キリンの夢』『コタツのある風景』2007.2.16

Kirin


劇団桟敷童子 番外公演Vol.4『キリンの夢』『コタツのある風景』
2007年2月16日(金) 19:30〜 西新宿成子坂劇場


桟敷童子恒例の番外公演。場所はいつもの西新宿成子坂劇場。実はここは桟敷童子の稽古場であり、同時に事務所でもあるようだ。こういう機会でもないと絶対に来ない地区だし、劇場も何気に好きな雰囲気だが、新宿駅からかなり時間がかかるのが難。会社を出るのが少し遅れて、危うく入場開始時間に遅れるところだった。予約整理番号は4番だったが、1〜3番の人が開場時にいなかったため、結局1番最初に入ることになった。小さいハコなので、何も1番に入らなくても大体見やすい席には座れるのだが。


第一部『キリンの夢』…罪と罰…

これまで、第一部は常に映画ネタの作品だったが、今回は映画は関係なし。ただし女性の二人芝居という点は変わっていない。上演時間約30分。

作品的には、これまでに見た桟敷当時の芝居で最もつまらないものだった。最大の欠点は脚本だ。二人の過去の確執を表す台詞は単なる説明にしか聞こえず、感情の流れも不自然に感じられた。物語の展開や台詞に、芝居としてのリアリティが決定的に欠けている。2003年の末に見た阿佐ヶ谷スパイダースの『ともだちが来た』を彷彿とさせるストーリーだが、あの作品には遠く及ばない。

新井結香(キリンを作る女)と中井理恵(キリンを被る女)の二人も、まだまだ力不足。頑張ってはいるのだが、泣くか怒鳴るかの両極端な感情表現ばかりで、一本調子な感じは否めない。これが『まかろに』のように板垣桃子ともりちえの実力派コンビであれば、つまらない脚本でも、役者の魅力だけで何とか見せきってしまったと思うのだが、とてもそこまでは望めない。

最後の仕掛けには、さすがにオッ!と唸らされた。何か仕掛けがあるだろうとは思ったが、ああいう動きをするとはね。ただ意地悪く言うと、あれをやりたいがためにストーリーを逆算したようなところがあり、それが展開に無理矢理な印象を与える結果になったのではないだろうか。


第二部『コタツのある風景』…変わらない日々…

これまでの芝居では目立った印象のない山本あさみを主役に、桑原勝行、川原洋子、もりちえ、松本しゃこ、鈴木めぐみと、ベテランから若手まで入り乱れたキャスティングで送る50分の作品。

第一部を見て、今回の番外はハズしたかと落胆したのだが、こちらは打って変わって非常に面白い。コタツのある葉月(山本あさみ)のアパートが舞台。そこに勝手に押し入ってきた元彼(桑原勝行)と、さらに乱入してきた会社の同僚(川原洋子、もりちえ、松本しゃこ)との間に起こるてんやわんやを描く。約50分。

これまで見た中で最もコメディ色が強い作品だ。とりわけ、ガングロヤマンバ風のメイクにパジャマ姿で登場するもりちえのキャラ立ちは凄いものがある。奇怪な風体だけなら誰でも出来るが、それに見合った怪演は誰にでも出来るものではない。この人、本公演では比較的まともな役が多いのだが、昨年の『まかろに』と言い、番外公演になると意外な側面を見せてくれるところが面白い。桑原勝行のアホっぷりも相当なもので、この人の演技の幅は思った以上に広いようだ。川原洋子、松本しゃこは、それに比べると地味だが、テンポのいい台詞回しで、笑いの流れをうまく作り出している。
主役の山本あさみも、そんなおかしな友人たちに翻弄されるナイーヴな(?)キャラクターをうまく演じている。決して美人ではないし、板垣桃子のような傑出した演技力もオーラもないが、いかにも実際にいそうな30前後の女性を演じて、非常にリアルな味わいを出している。

残念だったのは、猫オバサン(鈴木めぐみ)の挿話が全体のテンポから外れていたこと。あのオバサンが出てくる意味はわかるが、もう少し手短に描いた方が、バランス的に良かったのではなかろうか。他の部分がどこを切っても面白いだけに、彼女が出てくると急に雰囲気が弛緩してしまう。致命的な欠点ではないが、やはり惜しい。

ラストを飾るのは、これまでに見た番外公演の中で最も大がかりな仕掛けだ。幕が上がった瞬間、場内から「おおっ!」という感嘆の声が上がったが、それも当然だろう。あんな短時間に、よくもあれだけのことが出来たものだ。落ちとしても、物語のテーマを締めくくるにふさわしいものであり、決して仕掛けのための仕掛けにはなっていない。

そんなわけで、第二部は、第一部のイマイチさを補って余りある出来。大いに満足した。

なお、キャラクターもバラバラ、外見も無茶苦茶な4人の女が一緒に働いてる会社って、そりゃ一体どんな会社だよ(笑)と突っ込みを入れながら見ていたので、終演後、とりわけ外見が無茶苦茶な(笑)もりちえに尋ねてみたところ「テレアポの会社です!」と即答された。声だけの仕事で顔を出さなくてもいいから、あれだけ無茶苦茶な格好でもまかり通るというわけだ(ただし出社するときは、もっとまともな格好をしているらしい(笑)。さすが、ちゃんと考えていらっしゃる。でも電話口で、あのヤンキー言葉は使ってないだろうな(笑)。


桟敷童子は、この後5月に本公演の『軍鶏307』、秋には3本の再演が行われるが、それ以外にも役者の外部出演が目覚ましい。今年はまだ5本しか芝居を見ていないが、この作品は当然としても、innerchildの『アメノクニフルコトフミ』に板垣桃子が、『デンキ島』に小野瀬弥彦が出ているので、5本中3本で桟敷童子の役者を見ていることになる。残る2本は、三条会の『ひかりごけ』とITOプロジェクトの『平太郎化物日記』だが、後者は人形劇なのだから出ていなくて当然。普通の役者が出ている作品なら、4本中3本に出ていることになる。さらに言えば、東憲司も年末にグリングの『虹』で見ているから、この2か月間に4本の作品で桟敷童子の役者を見ているわけだ。まるでゴキブリ並みの(失礼!)繁殖力だ。
そして東憲司の外部への作/演出も活発だ。プログラムには今年だけで3本の外部作品が書かれている。桟敷童子の作品を加えたら、年に8本という驚異的ペースだ。いくら3本は再演だと言っても、一作一作が命がけの代物なので、「後はよろしく」で済ませられるものではあるまい。本当に大忙しだ。しかも来年には明治座で作/演出をすると言う。

どうやら僕が熱心に応援するまでもなく、桟敷童子は、完全に旬の劇団として認められたようだ。その作風を考えれば奇妙な感じは否めないが、良いものが広く認められたのだから、とりあえず素直に喜んでおこうか。


(2007年2月)

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