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01/08/2007

【映画】2006年度日本映画ベストテン

362


1.ストロベリーショートケイクス
2.いつか読書する日
3.時をかける少女
4.ゆれる
5.疾走
6.バッシング
7.鉄コン筋クリート
8.武士の一分
9.かもめ食堂
10.フラガール


2006年の観賞本数は洋邦合わせて述べ109本/89タイトル。その内、日本映画は述べ36本/31タイトル。リバイバル作品と、東京フィルメックスで見た『叫』『幸福』は選外扱いなので、対象作品は27タイトル。ベストテンを選ぶ本数ではない気もするが、傑作が目白押しなので、10本並べても、無理矢理選んだという感じはまったくしない。
主な見逃し作品は『紙屋悦子の青春』『長い散歩』(この2本は近日中に観賞予定)『明日の記憶』『寝ずの番』『間宮兄弟』『雪に願うこと』『紀子の食卓』『虹の女神』など。外国映画よりも、貴重な見逃し作品が目立つ。


1位から4位までは、どれも絶賛に値する傑作。順位は厳密なものではなく、この4本が同列のベストワンと考えてもらっても構わない。

『ストロベリーショートケイクス』は、魚喃キリコの大傑作漫画を巧みに脚色して、もう一つの『ストロベリーショートケイクス』ワールドを作り上げることに成功している。主人公の女性4人が全員僕の心の中に住んでいて、その悲しみも喜びも、絶望も希望も、すべて我が事のように理解できる。ヒリヒリするほど痛い映画。

『いつか読書する日』は、見たのが丸1年前になるため少し印象が薄れ、文句なしの1位にできなかったのだが、作品の出来から言えばトップに来るべきだろう。緒方明の演出も優れているし、田中裕子の名演は言わずもがなだが、「それまでの人生で思ったこと感じたことを、この一作に全て凝縮した」と言わんばかりの青木研次の脚本には、鬼気迫るものさえある。見ている間、これは誰かの優れた短編小説が原作なのだろうと思っていた。それがまったくのオリジナル脚本だと知ったときの驚きたるや…

大林宣彦の実写版には何の思い入れもないのだが、今回のアニメ版『時をかける少女』には殺られた。これほど青春の切なさに溢れたアニメは見たことがない。ユーモアと叙情性を兼ね備えた語り口も、どこか懐かしさを感じさせる作画も、全て文句なし。今後何十年間も、多くの人に愛され語り継がれる作品となることだろう。

『ゆれる』は、3回繰り返し見たら弱点も目立ってきたが、それを凌駕する魅力と野心に溢れている。巧みな脚本や演出もさることながら、全ての役者が演じることを楽しんでいるのが、地味な内容を飽きさせない最大の理由だ。

『疾走』は、ほとんど予備知識無しに見て、『青春の殺人者』と『さらば愛しき大地』を併せたかのような過酷な物語に胸をえぐられた。すぐに重松清の原作を読んだところ、映画を凌ぐ深さと重さで地獄の青春が描かれていて、さらに息を呑んだ。映画版は、その原作を巧みに脚色してエッセンスを抽出することに成功している。
残念なのは、この作品がジャニーズの手越祐也主演作品として製作・公開されたこと。手越の演技は、それほど悪くはないものの決して良くはないといったところで、作品全体のレヴェルから言えば短所になっていることは否めない。本当なら別の役者を使って、もっと残酷な青春物語として描ききって欲しかった。それでもここまでの作品に仕上げたのだから、監督と脚本を手がけたSABUの手腕は高く評価されるべきだ。

『バッシング』は、2005年の東京フィルメックスで見たきりで2006年には見ていない。そのため損をしている部分はあるが、あの寒々とした映像と、占部房子の渾身の演技は、今も強く印象に残っている。

『鉄コン筋クリート』は、ジャパニメーションの技術の粋を尽くしたような作品(監督は外国人だが)。途中までは文句なしに面白いのだが、終盤の『2001年宇宙の旅』シーンが、あまりに長いのが欠点。語られているテーマも凡庸。あくまでも感覚的な刺激を楽しむべき作品で、その観点からすれば、終盤直前までは前人未踏の域に達している。

『武士の一分』は、余計なものを全てそぎ落とした簡素極まりない作品だが、『たそがれ清兵衛』よりも好き。良い素材を、最高の手間と愛情をかけて調理した、ご飯と味噌汁だけの食事のよう。木村拓哉が意外なほど真剣な役作りをしていて見直した。

『かもめ食堂』の、ほんわかほんわりふわふわとした空気感は他では得難いもの。2006年最高の癒し系映画。そして映画史上屈指の、食欲を刺激する映画。この映画を空腹の状態で見たら、癒し系が一転地獄の責め苦となるに違いない。小林聡美がこれほど可愛らしく見えた作品はない。大の苦手である片桐はいりともたいまさこが、これほど魅力的に見えた作品は、それ以上にない。

『フラガール』は、誰もが楽しめる良質な娯楽作品。脚本は完璧に近い。しかし演出にあざとさや不器用さが感じられる部分が多いのが欠点。『シコふんじゃった。』や『ウォーターボーイズ』といった同系列の作品と比較すると、ずば抜けた傑作とは言い難い。松雪泰子は非常に魅力的。


次点でタイトルを上げておきたいのは『ヨコハマメリー』『パプリカ』『ハチミツとクローバー』『やわらかい生活』など。


傑作も多かったが、信じがたいほどの駄作が何本もあったのも大きな特徴。『ゲド戦記』『日本沈没』『THE 有頂天ホテル』『男たちの大和』は、どれも激しい怒りを覚えるほどの愚作で、こんな酷い作品が年に4本も出たことは特筆に値する。しかもその4本が全て大ヒットしているのだから、日本映画の活況も素直に喜んでいいのかどうか… それ以外の大ヒット作『デスノート』は、内容のわりにテーマ性は薄いが、娯楽映画として割り切れば十分に面白い。『LIMIT OF LOVE 海猿』は未見。
黒沢清の『LOFT』は純粋につまらない作品で、前述の4本に次ぐ駄作だが、それに続く『叫』は別人が作ったかのような傑作で、2007年のトップクラス入りは確実。『下妻物語』に続く中島哲也の新作『嫌われ松子の一生』は、映像技術は凄まじいものの、物語が最初からボタンを掛け違えているとしか思えず、はっきり言ってどうでもいい映画。


次いで部門賞。


★監督賞
緒方明『いつか読書する日』

★脚本賞
青木研次『いつか読書する日』

★主演男優賞
オダギリジョー『ゆれる』

★主演女優賞
田中裕子『いつか読書する日』

★助演男優賞
香川照之『ゆれる』

★助演女優賞
韓英恵『疾走』

★演技アンサンブル賞
『ストロベリーショートケイクス』

★音楽賞
吉田潔『時をかける少女』


監督賞は、よほど『時をかける少女』の細田守にしようかと思ったが、甘さと厳しさの絶妙なヴァランスで中年女のラヴストーリーを描ききった緒方明に。『ストロベリーショートケイクス』の矢崎仁司、『ゆれる』の西川美和、『バッシング』の小林政弘も極めて優秀。

脚本賞は、最初『時をかける少女』の奥寺佐渡子と書いたのだが、あれだけの物語をオリジナルで書き上げた点を評価して青木研次に。完成され尽くした漫画を巧みに脚色した『ストロベリーショートケイクス』の狗飼恭子、オリジナルで優れた物語を紡ぎ上げた西川美和も、もちろん素晴らしい。

主演男優賞はすんなりと決まった。

主演女優賞は、誰が主演で誰が助演かわからない『ストロベリーショートケイクス』をアンサンブル賞にすることで、田中裕子に。日本映画において、50歳の女優が、あんなやり甲斐のある役を演じられることなど滅多にあるまい。田中裕子は本当に女優冥利に尽きる。他に名前を上げておきたいのは『バッシング』の占部房子と『フラガール』の松雪泰子。

助演男優賞は当然この人で決まり。他に特に印象に残ったのは『いつか読書する日』の岸辺一徳。

助演女優賞は『フラガール』『犬神家の一族』の富司純子にしようかと思ったが、彼女なら当然の名演ということもあるので、『誰も知らない』から順調な成長を遂げている薄幸の権化のような韓英恵に。

外国映画の『クラッシュ』同様、誰が主演で誰が助演かわからない群像ドラマゆえ、『ストロベリーショートケイクス』にはアンサンブル賞を。特に岩瀬塔子こと、原作者の魚喃キリコは、演技力を超えた存在感で強烈な印象を残す。

外国映画では『ニュー・ワールド』『ココシリ』の驚嘆すべき映像に、思わず撮影賞を設けたが、日本映画であの2本に比すべき作品などあるはずもないので、この部門はなし。

音楽もこれぞという作品はなかったのだが、バッハのゴルトベルク変奏曲の面白い使い方と、幾つかのオリジナルスコアが印象的だったので『時をかける少女』の吉田潔に。


興行的には驚くほどの活況を呈している日本映画だが、大ヒットした4本の愚作に象徴されるように、内実は危ういものを含んでいる。この日本映画復活が一時的なブームに終わらないよう、今年も良質な映画がコンスタントに作られることを望む。


(2007年1月)

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Comments

こんにちは。
私は、「ストロベリーショートケイクス」を見逃して悔やんでいます。
「いつか読書する日」はDVD鑑賞をしましたが、素晴らしかったです。

Posted by: かえる | 01/11/2007 at 13:16

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