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01/06/2007

【演劇】2006年度演劇ベストテン

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2006年度演劇ベストテン

1.ク・ナウカ『トリスタンとイゾルデ』
2.劇団桟敷童子『海猫街』
3.二兎社『書く女』
4.新国立劇場『やわらかい服を着て』
5.グリング『虹』
6.イキウメ『PLAYER』
7.THE SHAMPOO HAT『恋の片道切符』
8.りゅーとぴあ能楽堂『マクベス』
9.MODE『唐版 俳優修業』Aプロ
10.劇団桟敷童子『泥花』


「舞台」と言うことなら、他にピナ・バウシュの『カフェ・ミュラー』『春の祭典』、モーリス・ベジャール・バレエ団の『バレエ・フォー・ライフ』、そして『WE WILL ROCK YOU』という素晴らしい作品を見ているが、これらの作品をストレートプレイと同じ土俵で比較するのは無理があると思い、除外した(ク・ナウカはストレートプレイなのか?という疑問もあるが)。もし数に数えるとしたら、この3本は確実に10以内に入ってくる。

なお2006年度の観賞本数は、上記の3本も含めて、述べ57本/50タイトル(『カフェ・ミュラー』『春の祭典』のような二本立ては1本/1タイトルとしてカウント)。それでベストテンを選ぶのはおこがましい気もするが、あくまでも「マイベストテン」ということで…


10本のうち『恋の片道切符』以外は全て個別のレビューを書いているので、ごく簡単に。


『トリスタンとイゾルデ』のトップは文句なし。これぞク・ナウカ芸術の頂点。再演だが、初演を見ていないので個人的には関係ない。来年の活動停止がつくづく惜しまれる。

第2位の『海猫街』は、昨年のベストワン『博多湾岸台風小僧』に肉薄する出来。第10位の『泥花』や番外公演、若手公演も含めてハズレなし。どの作品からも、上り調子の劇団ならではの勢い、そして芝居に対する熱い思いが感じられる。

第3位と第4位は永井愛の作品。完成度から言えば『やわらかい服を着て』の方が上ではないかと思うが、欠点は多いものの、様々な可能性を秘めた『書く女』を上位にしておく。1回見ただけならベストテンに入るかも怪しかったが、後になるほど良くなっていった「成長する舞台」としての面白さも評価。『やわらかい服を着て』は、話術の巧みさはもちろんのこと、吉田栄作というキャラクターをあれだけ巧く使いこなしたことに感心。

『虹』は、グリングとしては最良と言えない作品だが、それでも第5位に来るのが底力。小劇場系列では、今最も安心して人に勧められる劇団だろう。

イキウメは今年の大きな発見。黒沢清の映画を彷彿とさせるストーリーが、とにかく面白い。今後コンスタントに見ていく劇団になりそうだ。

THE SHAMPOO HATは、いつもタイミングが悪くてレビューを書き損ねるのだが、『肉屋の息子』以降、全公演を見ている劇団だ。『恋の片道切符』は、これまでの作品中1,2を争う出来。10月に『津田沼』もあったが、あくまでも『恋の片道切符』を取る。あのベタベタと脂ぎった、それでいて妙に叙情的な世界は、珍味のように癖になる。

新潟のりゅーとぴあによる能楽堂シェイクスピアシリーズ。初めて見たが、非常に面白かった。これで主演が市川右近でなければ、もっと良かったのに…というのは、レビューで書いたとおり。

MODEの『唐版 俳優修業』はベテラン勢によるAプロの方を評価する。途中降板するとこになった石村実伽だが、最後の公演では異様な気迫がこもった演技を見せてくれた。その後、彼女がいないMODEで演じられた『秘密の花園』が生命力を欠いた出来だったことからも、MODEにとって石村実伽という存在が、いかに大きいものだったかがわかる。袂を分かった両者が、それぞれの道で新たな成功を掴むことを祈ろう。

最後は再び桟敷童子。彼らにしてはおとなしめの作風で、インパクトには欠けるが、これはこれで悪くない。毎回押しばかりでは飽きてしまうので、こんな引きの作品が間に入ってくるのは健全なことだと思う。


10本に入らなかった作品では、クレネリゼロファクトリーの『春と爪』を次点として上げておきたい。この少女漫画的な世界は、僕の感性にとてもフィットするようだ。主催者の事情により、しばらくは活動休止となるようだが、一息ついたら活動再開してくれることを希望する。


ついでに部門賞も。


★脚本賞
 永井愛『やわらかい服を着て』

★演出賞
 宮城聰『トリスタンとイゾルデ』

★主演男優賞
 吉田栄作『やわらかい服を着て』

★主演女優賞
 美加理『トリスタンとイゾルデ』

★助演男優賞
 東憲司『虹』

★助演女優賞
 南谷朝子『海猫街』

★舞台美術賞
 劇団桟敷童子『海猫街』


脚本は、遅れてきたファンとして永井愛に。作品的には、賑やかで楽しい『書く女』を上にしたが、脚本自体の出来は『やわらかい服を着て』の方が秀逸だと思う。

演出は、『海猫街』の東憲司も素晴らしかったが、やはりク・ナウカの頂点かつ集大成を作り上げた『トリスタンとイゾルデ』の宮城聰に。

主演男優賞は、「意外や意外な好演」という点を評価して吉田栄作に。何しろ見る前は「何故今さら吉田栄作?」ということで敬遠していたくらいなので、あのしなやかな演技を見たときの驚きはかなりのものだった。『トリスタンとイゾルデ』の大高浩一、『海猫街』の池下重大、『シラノ・ド・ベルジュラック』の江守徹も考えたが「彼らなら当然あれくらいの芝居は出来るだろう」ということで、意外性の吉田に軍配。

主演女優賞は、昨年に続いて別格としか言いようがない演技を見せてくれた美加理に。ラスト数分間の彼女の芝居は、天と地の全てを自らの肉体に集約するかのような恐ろしい力を持っていた。異界への扉があれほど大きく開かれた瞬間は、見たことがない。
美加理以外で最も目立ったのは、『海猫街』『まかろに』の板垣桃子。桟敷童子の看板女優として、今後さらに成長していくことだろう。3時間以上の長丁場をほぼ出ずっぱりで演じきった『書く女』の寺島しのぶ、『唐版 俳優修業』Aプロの石村実伽も印象に残った。

助演男優賞は、ちょっといいなと思う人はたくさんいるのだが、これこそは!という強烈な印象を残す人がいない。年末に見て、これまた意外な好演に驚かれされた東憲司に。『虹』評にも書いたが、桟敷童子では役者として大した印象がないだけに驚かされた。

助演女優賞は、『やわらかい服を着て』の小島聖も考えたが、南谷朝子の貫禄勝ち。

美術セットは、今年も桟敷童子で文句なし。あの大仕掛けも全て自分たちだけで作っていると聞いては、ただただ驚くしかない。


なお、今年は実際の芝居以外に、チェーホフとシェイクスピアの戯曲を繰り返し読んでいたため、1年間演劇にどっぷり漬かっていたような気がする。年間を通じて、小説よりも遙かに多くの戯曲を読むなど、初めての経験だ。今年は、戦後に書かれた新しめの古典(?)や、日本の戯曲をもっと読んでいくつもりだ。


2007年も、素晴らしい芝居に出会えますように。


(2007年1月)

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