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09/04/2006

【演劇】イキウメ『PLAYeR』2006.9.1

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イキウメ『PLAYeR』
2006年9月1日(金) 19:30〜 シアターサンモール


コアな演劇ファンの間で話題になっている劇団イキウメ初体験。と言っても6月に、イキウメの戯曲『散歩する侵略者』をG-upという別ユニッが上演したものを見ている。それが非常に面白かったので、本体も見てみようと思った次第だ。


どういう内容か説明するのは、いささか難しい。迂闊に説明すると誤解を招くこと必至なストーリーだ。『散歩する侵略者』同様、一種のSFとも言えるし、幽霊ホラーとも言える。外形だけ見れば自己啓発セミナーや新興宗教に関する話にも見える。
どれだけの人が理解できるかは疑問だが、「黒沢清の映画『CURE』『カリスマ』『回路』を混ぜ合わせて再構築したようなストーリー」というのが一番間違いのない説明だろう。それは『散歩する侵略者』にもそのまま当てはまる。
どうやら前川知大という人の書く作品には、かなり一貫した世界があるようだ。それは黒沢清の映画同様、多くの人に受け入れられるものではないにせよ、一部の人々を強く惹きつける魅力に満ちている。会場で過去作品の戯曲がずらりと売られているのを見ても、イキウメが「まず前川知大の戯曲ありき」な劇団であることがわかる。

『散歩する侵略者』も『PLAYeR』も、「君の考えている現実って何? それが本当に現実だと思っているの?」と問いかけてくる作品だ。『散歩する侵略者』は、誰もが理解しているようで、実ははっきり理解していない概念について問い正し、それを失ったとき人間はどうなるのかをテーマにした物語だ。そして『PLAYeR』は、霊界が存在し、PLAYeRを通じて現世とコミュニケーションを交わすことが可能なら、その先にどんな世界が広がっていくかを描いた物語だと言える。
しかし、そのような突飛なテーマに対して、作者は明確なヴィジョンや意見を呈示するわけではない。「そんなことが起きたら、どうなると思う? フフフ」という感じで、観客を異世界の入り口へ連れ出してておいて、そこで物語を打ち切ってしまう。こちら側の世界に戻ることなく、異世界に取り残されて途方に暮れる感覚は、快感と気持ち悪さが入り交じった、実に微妙なものだ。このような後味は、他のどんな芝居でも味わうことが出来ない。


この劇団の次の公演も確実に見ることになるだろう。何か見過ごせないものを見てしまったことは確かなのだが、その正体がわからないもどかしさを解決するため、次もずにはいられないのだ。イキウメファンの多くが、同じような気持で新作を見続けているのではないだろうか。次の作品を見ても、そのもどかしさが解消されるわけではなく、またその次も…となることはわかりきっているのだが。

次回は来年3月に吉祥寺シアターへ進出。さらにその次の告知まで書いてあって、来年の7月に青山円形劇場だ。シアターサンモール→吉祥寺シアター→青山円形劇場だから、大ブレイクと言っていいだろう。
だがすでに書いたように、黒沢清の映画同様、この物語世界が多くの人に受け入れられるとは思えない。映画で言えばあくまでも単館系であり、『回路』のようにメジャーチェーンで公開されれば大コケするタイプの作品だ。それが演劇の世界では、どの程度まで受け入れられるのかにも興味がある。

最後になったが、役者も皆好演だった。他の劇団の作品に出て、どこまで芝居が出来る人たちなのかはよくわからないが、イキウメの作品世界にはピッタリはまっている。ほとんどセットのない素舞台で終始緊張感が失われないのは、戯曲の緻密さもさることながら、それをしっかりと血肉化している役者たちのおかげだ。


やはり、売っていた戯曲を何作か買っておくべきだった。


(2006年9月)

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Tracked on 09/05/2006 13:44

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