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08/27/2006

【演劇】少年王者舘『I KILL〈イキル〉』2006.8.20

Ikillomote


少年王者舘『I KILL〈イキル〉』
2006年8月20日(日) 15:00〜 ザ・ズズナリ


昨年の1月にKUDAN PROJECTの『くだんの件』、今年の4月にダンス公演として『アジサイ光線』があったものの、少年王者舘の本公演は、東京では『こくう物語』以来2年ぶりとなる。ずいぶん待たせてくれたものだ。

2年ぶりの新作とは言え、少年王者舘の世界観に大きな変化があるはずもない。相変わらずの天野天街ワールド/王者舘ワールドで、良くも悪くも安心して楽しむことが出来た。

今回の舞台は、どうやら終戦時の満州。と言っても他の作品と同様、全体のコンセプトは「人が死ぬ前に見る夢」または「すでに死んでいるのに、あの世に行ききれず現世をさ迷う魂の物語」なので、取り止めのない夢のような展開で明確なストーリーはつかみにくい。無理にストーリーを追うよりも、溢れだすイマジネーションと音楽的な台詞の洪水に身を任せればそれで良し。少年王者舘以外にありえない摩訶不思議な時空間は何度体験しても心地よい。

ただし今回は作風が少々地味だったのが残念。まず美術セット。いつもなら昭和初期を思わせる日本家屋など、もっと凝ったセットが見られるのに、今回は満州の無愛想な石造りの家で色彩的にも単調だ。様々な仕掛け類もかなり控えめで、ダンス公演である『アジサイ光線』と比べても地味な印象は否めない。
さらにもう一つ何か大事なものが欠けていると思ったら、しつこい繰り返しが無かった。まったく無いわけではないのだが、妙に短くてあっさり味。『それいゆ』で初めてあれを見た時のドラッグのような快感は味わえない。あの繰り返しの手法は、あまりのしつこさに一度はうんざりし、それをさらに通り越したところで無性に大きな笑いがこみ上げてくるものだ。中途半端にやるくらいなら、一か所だけ徹底的にやった方がいい。天野さんも、そろそろあの手法には飽きてきたのだろうか?

少年王者舘の作品は基本的にどれを見ても同じとは言え、今回は特に新鮮さが欠けていたような気がする。作風が地味なだけに、いつもと同じ部分ばかりが目立ってしまったと言うことかもしれない。『それいゆ』や『真夜中の弥次さん喜多さん』といった傑作に比べると明らかにインパクトに欠ける。次の作品では、既成の戯曲や漫画を原作にしながら、少年王者舘風に改作するなど、少し目先を変える必要がありそうだ。来年の3月にはKUDAN PROJECT名義の『美藝公』があるが、これは筒井康隆が原作らしいので、その試金石になるかもしれない。KUDAN PROJECTによる二人芝居もいいが、やはり少年王者舘本体で『それいゆ』に匹敵する傑作を作り出して欲しいものだ。

とは言え、金太郎飴のような少年王者舘ワールドも、それはそれで十分に魅力的である。次回作が今回とまったく同じようなものだったら、きっと文句を言うだろうが、その次の作品もまた見に行くはずだ。ある意味、少年王者舘の芝居を見ることは、物語世界を味わうと言うよりも、心と感性のマッサージを受けに行くようなものだ。マッサージの方法が十年の一日のごとしでも、見終わって気持ちよくなれるなら問題なし。芝居のクオリティが一定のレヴェルを保つかぎり、楽しくて、懐かしくて、ちょっと悲しい王者館の芝居に、何度でも足を運ぶことだろう。

最後になったが、役者では、水谷ノブの無意味にハイテンションな演技が相変わらず印象的。物語の流れとほぼ無関係に挿入される夕沈のダンスは言わずもがな。年季の入ったファンには「何を今さら」と笑われるかもしれないが、少年王者舘ワールドでは、水谷ノブは常に「一郎」で、夕沈は常に「正太郎」なのね。小津安二郎ワールドで原節子が常に「紀子」なのと同じようなものか。


なおKUDAN PROJECT公演の前に、ITOプロジェクトによる人形劇『平太郎化物日記』もある。これは天野天街の作・演出で2004年に名古屋と大阪で上演されたもの。非常に評判の良かった作品なので、大いに期待している。来年初めのスズナリは、2月に『平太郎化物日記』、3月に『美藝公』と、天野天街ワールドに染め上げられるようだ。


(2006年8月)

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