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05/13/2006

【演劇】劇団桟敷童子『まかろに』『誘う魚』2006.5.12

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劇団桟敷童子 番外公演Vol.3『まかろに』『誘う魚』
2006年5月12日(金) 19:30〜 西新宿成子坂劇場


劇団桟敷童子の番外公演。新作短編2本立て。第一部『まかろに』40分、第二部『誘う魚』35分。どちらも作・サジキドウジ/演出・東憲司。場所は初めて行った西新宿成子坂劇場。「半端じゃなく狭い」と聞いていたが、特に驚くほどの狭さではない。少なくとも舞台は、シアターグリーンの小ホールよりも大きかった。観客席は同じくらいだろうか(多分100〜120人)。
しかし新宿駅からかなり歩くのにはまいった。時間的には15分かかったかどうかなのだが、真っ直ぐの大きな道(青梅街道)を行けども行けども辿り着かないのは、実際以上に遠い印象を与える。整理番号は到着順だと思っていたので急いで行ったのだが、いざ着いててみれば予約順で、しかも1番(笑)。だったらあんなに焦らなくても、ぶらぶらと散歩気分で歩きながら、開場直前に着くようにすれば良かった。よく行く劇団でいつも自由席整理番号順で入場させるのは少年王者舘と桟敷童子の2つ。ただし前者は当日の先着順で、後者は予約の先着順。そろそろこの違いを覚えよう。


第一部『まかろに』…四畳半、女二人の決闘(H・フォンダよ永遠に)

もりちえと板垣桃子の二人芝居。前作『泥花』評で「彼女(=もりちえ)は他の誰よりも板垣桃子と絡むとき、非常に良い味を出すような気がする」「この二人がもっと深く絡みあう芝居を見てみたい」と書いたのを真に受けてくれたらしい(笑)。

舞台はもりちえのアパート。そこへ乱入してきて傍若無人な態度を取る板垣桃子。この二人は一体どういう関係なのか…

お〜〜〜〜い。

「まかろに」って「マカロニウェスタン」のことだったのかよ!

それを先に一言言ってくれれば、前から見たかった『ウェスタン』(ヘンリー・フォンダ主演)を見た上で観劇に臨んだのに…意地悪!

一応不倫をモチーフにしたストーリーはあるが、さほど印象に残るものではない。見所は、東憲司個人のマニアックとしか言いようがないマカロニウェスタンへの傾倒。その徹底したオタクぶりを楽しむことにある。
何しろ西部劇自体今となってはマイナーなジャンル。その中でもマカロニウェスタンと言ったら、もはや1950年代の怪獣映画と同じくらいマニアックなもの。そんなマイナー極まりない映画群を、ここまで偏愛する人がこんなところに存在したとは… まさか桟敷童子の芝居で「セルジオ・コルブッチ」「ジャン・マリア・ボロンテ」などという名前を聞かされようとは、ましてやそんな人たちへの強い愛情を告白されることになろうとは、夢にも思わなかったよ。

ただし僕自身は「熱心な映画ファンで、知識として知っているため、話の内容は何とか理解できる」という程度。確かに子供の頃、マカロニウェスタンはしょっちゅうテレビで放送されていたし、断片的にならかなりの本数を見ている。ところが父親が正統派西部劇のファンで、マカロニを「残酷なだけで情緒のかけらもない」と嫌っていたため、途中で必ず「くだらない」と吐き捨てて、チャンネルを変えてしまうのだ(・_・、)。
そんなある意味健全な、ある意味石頭な父親のために、ちゃんと全部見たことがあるマカロニウェスタンは『荒野の用心棒』『荒野の1ドル銀貨』など数えるほど。その後イーストウッドとセルジオ・レオーネが映画史の巨人になったことで再評価を受けている『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』は、セールの時にDVDを買ったのだが、まだ見ていない。ごめんなさい、これから見ます。ちなみにこの作品では、「クリント・イーストウッド」の名はほのめかされるだけで、ついに口にされない。本作の主役はあくまでも「アメリカの良心と称えられるスーパースターでありながら、突如マカロニウェスタンなどという色物に出演して、多くの人を驚嘆させたヘンリー・フォンダ」なのである。

しかし…だ。そんな僕ですら、あの観客の中では、この話を最もよく理解できた方だと思う。20歳くらいの学生らしき連中もいっぱいいたが、よほど熱心な映画ファンでない限り、今時マカロニウェスタンを見たことはおろか、言葉すら知らない方が普通だろう。それどころか、さして映画を見ない人なら、ヘンリー・フォンダすら知らないのではないか。そんな観客は、このマニアック極まりない芝居を一体どのように見ていたのだろう?

とは言え、すぐ目の前で展開される白熱の二人芝居は迫力満点である。解説に「桟敷童子版・静かな演劇」などと書いてあるが、ほとんどの観客は「どこが静かな演劇じゃ!」と突っ込みを入れていたに違いない。

板垣桃子…まただ! 
彼女を舞台上で見るのは、作品としては4本目、述べの回数で言えば6回目になるというのに、彼女が登場した時またもや「あれ?…この人が板垣桃子だよね?」と思ってしまったのだ!
どうしてこの人は出てくるたびに、まったく印象が違うのだ。まるで一時のゲイリー・オールドマン状態。この人に街中で会っても、いやカフェで向かい側に座ったとしても、僕は絶対に板垣桃子だと気がつかないだろう。
しかし毎回印象も見た目も役柄も違うものの、演技の達者さだけは変わらない。今回はすぐ目の前なので、いつにもまして迫力たっぷり。彼女の強力な感情表現エネルギーがビシビシと伝わってくる。本当に凄い人だわ。

しかし板垣桃子が優れた女優であることは、もうとっくにわかっていること。この作品では、そんな彼女とがっぷり四つに組んで一歩も引けを取らぬ演技を見せた、もりちえに注目すべきだろう。やはりこの人は板垣と絡むと非常にいい味を出す。「柔と剛」「ボケとツッコミ」「丸と三角」「凸と凹」といった感じで、二人の個性がうまく噛み合うのだ。秋の本公演でも二人の絡みを期待したい。

なお影の主役であるヘンリー・フォンダも、さすがの存在感を見せる。…て言うか、あのでかいポスター、よくあれだけ目つきの悪いフォンダのポスターを見つけてきたものだ。ひょっとしてこの芝居用にオリジナルで作ったもの? 最後にはいかにも桟敷童子らしい大仕掛けならぬ小仕掛けが見られる(笑)。

それはそうと、普通なら「こんなマカロニオタクの女なんかいるわけないだろう!」と思うだろう。ところがいるのだ。僕の友人に、この作品を地でいくような人が。何しろ「セルジオ・コルブッチ」という名前など、彼女が熱く語っていたから僕も覚えていただけなのだ(笑)。日本中探しても、そんな女は彼女を含めて3人くらいしかいないだろう。
終演後即座に「これは君のためにある芝居だ。当日券狙いで見るべし」とメールを送ったことは言うまでもない。ただし結論としては「そんなもの見たら、私にも語らせろ!と舞台に上ってしまいそうだからやめとく」とのこと。はい、当然のことながら、僕も上演中その光景を思い描いて微笑んでおりました(^-^)。


5分少々の模様替えを挟んで第二部へ突入。


第二部『誘う魚』…三人オバサン

鈴木めぐみ、外山博美、川原洋子に黒一点で稲葉能敬がからむ四人芝居。ある貯水場に住むピラニアを捕まえようとする女性三人組と、貯水場の管理人である稲葉がシュールなドタバタを繰り広げる。

桟敷童子版チェーホフ劇(笑)。何しろ開巻早々、台詞が『三人姉妹』のパロディなのだ。副題の「三人オバサン」って「三人姉妹」のもじりだったのかと納得。

ただし途中の展開は安部公房風のシュールな喜劇といった感じで、チェーホフ→安部公房→チェーホフという構成。チェーホフのパロディとして見ると今ひとつ焦点が定まらないところもあるので、面白いのは安部公房風の中盤。そしていかにも桟敷童子らしい最後の大仕掛けならぬ中仕掛け(笑)。相変わらず熱量の高い演技を繰りひろげる役者たちも、最後に登場するピラニアに食われている(洒落か?)。役者と一緒になって挨拶するピラニア、可愛すぎ(笑)。

難点というか、ちょっと嫌だったのは、貯水池のセットの水からドライアイスのスモークに似た変な匂いがしたこと。水を緑色に濁らせるための絵の具(?)や古い木材が水につかって発する匂いだろうか。ネガティヴな匂いに非常に敏感な人間なので(←こんな部分で感覚が優れていても良いことは一つも無い)、時々気になった。と言っても、そんなに酷いものではないし、芝居の評価に影響するほどではない。『風来坊雷神屋敷』は水だらけだったが、あれも前の方で見たらこんな匂いがしたのだろうか。


どちらも特別感動する作品ではないし万人にお勧めとは言えないが、まあ普通に笑えるし、桟敷童子の意外な側面と相変わらずな側面の両方が見られるので、ファンにとっては楽しめる作品だった。2300円なら十分に見る価値はある。桟敷童子はいつもチケット代が安くて嬉しい。2週間後の若手公演も楽しみだ。


(2006年5月)

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