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04/05/2006

【映画】『ふたりのベロニカ』Why can't I be you?

Sub3


『ふたりのベロニカ』ニュープリント版でのリバイバル。これまでに5〜6回は見ているが、確かにこれほど綺麗なプリントは初めてだ。映像もさることながら音が凄い。こんな生々しい音をした『ふたりのベロニカ』は初めてだ。特に前半のコンサートシーン、あのテーマ曲が高らかに響き渡るところでは、全身が震え、呼吸することを忘れるほどだった。惜しむらくは、それほど見事なニュープリントを、スクリーンの鮮明さに欠けるル・シネマではなく、もっと高品質の劇場で見たかった。


3年ぶりに見直したが、本当に理解しがたいストーリーであることを再確認した。アンゲロプロスやタルコフスキーと違い、1シーンだけ見ている分には、ごく普通のストーリーテリングに見えるのだが、93分間見ていくと、なぜこのシーンとあのシーンがつながっているのか、そのつながりに一体どんな意味があるのか、論理的に説明することは不可能に近い。

それでもこの映画は、魂の奥底にある何かを激しく揺さぶる力を持っている。「ストーリーはよくわからないけれど素晴らしい映画」は必ずしも珍しくないが、自分にとっては『ふたりのベロニカ』が、その代表格だ。キェシロフスキ作品の中では、この映画と『愛に関する短いフィルム』が甲乙付けがたい最高峰だと思っているが、前者が最もわかりにくい作品、後者が最もわかりやすい作品だという点が面白い。

しかし一見まったく違うように見える『ふたりのベロニカ』と『愛に関する短いフィルム』は、実はとてもよく似た物語なのかもしれない。


ふたりのベロニカにとって、互いはどんな存在だったのだろう?

誕生日も同じ。姿も同じ。非常によく似た人生を歩みながらも、決して交わることなく、互いの存在すら知らなかったふたり…

一般的に「もう一人の自分」を描いた作品は、光と影/善と悪といった形で、両者の対立関係に進むことが多い。『世にも怪奇な物語』の第2話「影を殺した男」は、その典型だ。これが男と女であれば、運命の人とのロマンチックな恋愛ものになる。
しかしふたりのベロニカは対立しない。そもそも互いの存在すら知らないし、直接干渉もしない。フランスのベロニカを偶然見かけたポーランドのベロニカは、「ドッペルゲンガーに出会った者は命を失う」という言い伝えに従うかのように心臓麻痺で死んでいく。フランスのベロニカが、ポーランドのベロニカの存在をはっきりと認識するのは、写真を通してである。ポーランドのベロニカは、その時すでにこの世を去っており、二人の人格的な交流は最後まで存在しない。

「もう一人の自分」は幻のようなもので、手を伸ばしても届かない。
ふたりのベロニカの姿は、むしろ人間の根源的孤独を露わにする。


その光景は『愛に関する短いフィルム』のマグダとトメクの姿に重なる。
愛に傷つき心を閉ざしたマグダを愛するトメク。しかし純粋な心を酷く傷つけられた時、トメクは固く心を閉ざし、逆にマグダがトメクを愛するようになる。
孤独な二つの魂は常にすれ違う。二人が愛し合えるのは、双眼鏡を通して見た幻影の中だけだ。

どちらの映画でも「もう一人の自分」は、直接的に「私」の孤独を癒すわけでもなければ、何かを救うわけでもない。

それでも「もう一人の自分」を知ったとき、「私」の中で確実に何かが変わっていく…


この映画の至るところに「傷」と「死」、そして「再生」のイメージが散りばめられている。
それらがどんな論理的つながりを持っているのかは、未だに解明できない。
と言うより「論理的なつながり」というものは最初から無いのだろう。

しかしそこには、何か本当に大切なものが間違いなく存在している。

その大切なものを探して、僕はこれからも『ふたりのベロニカ』という映画を繰り返し見続けることになるだろう。


(2006年4月)

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Comments

TBありがとうございます。
ものすごい数の映画をご覧になっているのですのね。ときどきのぞかせていただきます。

Posted by: さくら、さくら | 04/08/2006 23:02

いえいえ、最近はそれほどでもないです。今年は100本を大幅に割り込みそうですから。でも気が向いたら、また遊びに来てくださいね。

Posted by: ぼのぼの | 04/12/2006 00:59

女性から「映画が観たい」と誘われて、他に良さそうなのが無かったという消極的な理由から、『ふたりのベロニカ』を何の前知識も無く見に行きました。僕はヨーロッパらしいとても美しい映画だと思ったのですが、あいにく女性の方は「?」だったようです。米的な対立構造みたいなものが無いので、こうした映画は慣れないとチンプンカンプンになるのかも知れません。
こちらのサイトには、自分のストーリーに対する解釈を裏付けてもらえるような意見を探しすため、「ふたりのベロニカ」「ドッペルゲンガー」のキーワードで検索して辿り着きました。一見したところ、もの凄い量と質なので、時間をかけて覗かせていただきます。

Posted by: masao | 04/12/2006 18:39

確かにこの映画をストーリーで見ると、狐につままれたような気になるでしょうね。これほど「理解する」よりも「感じる」ことが大切な映画も珍しいと思います。
『ふたりのベロニカ』のストーリーに対する解釈はあまり書いておりませんが、キェシロフスキのカテゴリーで他の作品について書いた文章が、多少の役に立つかもしれません。またお暇なときに覗きに来てください。

Posted by: ぼのぼの | 04/13/2006 22:37

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Tracked on 04/05/2006 23:01

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