【映画】『プロデューサーズ』とりあえず見た方がいい
メル・ブルックス監督の1968年のコメディ映画が、2001年にブロードウェイミュージカルとなって大ヒット。それを2005年にミュージカル映画としてリメイクした作品。こういう運命をたどった作品も非常に珍しい。監督はプロードウェイで演出と振り付けを担当したスーザン・ストローマン。立役者であるメル・ブルックスは、製作・脚本、そして作詞・作曲(!)で活躍し、主役はあくまでも彼であることを印象づけている。
映画としては少々ゆるい部分も多い。2時間14分という上映時間も長すぎる。特に終盤の展開がもったりしすぎ。劇中劇『春の日のヒトラー』をクライマックスにして、もっと一気呵成でラストになだれ込んだ方が良かったのでははないか。舞台はどうか知らないが、映画としては、そちらの方が確実に盛り上がるはずだ。
またメル・ブルックス作品に付きものの、風俗ネタや英語のジョークも満載。アメリカ人、それもニューヨーカーやユダヤ人でないと笑えないネタがかなり含まれていることは間違いなさそうだ。
そのようなマイナス点はいくらでも指摘できる。映画として文句なしの傑作とはお世辞にも言い難い。
それでもこの作品は面白い!
最初の内こそベタすぎるギャグに辟易するが、ヒトラーを崇拝するドイツ人脚本家(ウィル・フェレル)の辺りから頬がゆるみ始め、ゲイの演出家(ゲイリー・ビーチ)のシーンではもはや笑いが止まらない。爆笑と言うよりも、可笑しくて楽しくて、小刻みな笑いがずっと絶えない感じ。演出家もさることながら、そのアシスタント(ロジャー・バート)が僕の目には北村一輝にしか見えず(笑)、彼がこの役を演じているかと思うと、可笑しくて可笑しくて… その後の、怪しげなスウェーデン女ユマ・サーマンの登場に至っては、もう…(笑)×(笑)×(笑) あんなに魅力的なユマ・サーマンは今までに見たことがない(笑)。その辺りから『春の日のヒトラー』までは文句なしに楽しめる。それだけに最後の30分ほどで急にテンションが下がるのが残念至極なのだが…
ストローマンの演出は、無理に映画的な脚色をせず、舞台劇をそのまま映画でやっている感じ。だがそれはある意味凄いことであり、舞台をそのまま映画に持ち込んで、これほど素直に楽しめる作品は滅多にない。すでに述べたように100%うまく言っているとは言えないが、直球勝負に見事投げ勝った力量は十分評価に値する。
それにしても恐るべきはメル・ブルックス。本当にあれらの歌を彼が自分で作曲したのか? 音楽方面でそこまでの才能を持っているとは知らなかった。彼の映画は、ベタすぎるギャグと、日本人にはわかりにくいネタが多くて、あまり好きではなかったのだが、この作品は監督を別の人物に任せたことでアクの強さが薄れ、良い部分だけが一般受けする形で抽出されている。メル・ブルックス絡みのコメディでは、間違いなく一番好きな映画だ。
この映画を見なくても、人生に大きな影響はないだろう。
しかし見れば、確実にささやかな幸福感は得られるはず。
必見ではないが、とりあえず見た方がいい。
なお、この映画はエンドクレジットが始まっても絶対に席を立たないように。最後に素敵な素敵なオマケがついています。
(2006年4月)
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Comments
こんにちは。
この作品、今度観に行くつもりでいます。エンドクレジット後のオマケ、情報頂いて良かったです(^^)ありがとうございます!
Posted by: BENELOP | 04/24/2006 12:42