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03/19/2006

【映画】糾弾>『ブロークバック・マウンテン』は明らかな欠陥商品

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3月18日(土)拡大公開初日、TOHOシネマズ系のシネコンで『ブロークバック・マウンテン』を見たのだが、あまりの酷さに愕然とした。作品の内容にではない。その日本語字幕の酷さにだ。

…と言うと、普通は字幕翻訳の問題になるのだが、そうではない。文章の内容そのものではなく、「字幕」に問題があるのだ。具体的に何が問題だったかを以下に書いていこう。


1.
字幕の書体が明朝系。普通映画の字幕はゴシック系が主体。なぜ字幕に明朝系をあまり使わないかというと、線が細いため読みにくいから。ところが本作では全編にわたって明朝系の書体が用いられている。

2.
それだけならまだしも、恐ろしいことに文字に黒エッジがついていない。普通白文字の字幕には必ず黒エッジが付いているものである。ごく薄いものなので普段はあまり意識しないが、それがあるからこそバックが多少明るかったり白っぽかったりしても、文字が読めるのである。「そうなの?」という人は、手近にDVDなどがあれば確認して欲しい。
この作品は「明朝+黒エッジ無し」という最悪の組み合わせによって、バックの画面がちょっとでも白くなったり明るくなったりすると文字が読みにくく、非常にイライラさせられる。

3.
本文そのものが読みにくいのはもちろんだが、何回も出てくる漢字のルビは、ひどい時には完全に潰れて読めない状態になっている。

4.
数字やカッコ類がすべて全角になっているため、恐ろしく間抜けに見える。普通こんな字幕はない。数字やカッコは半角を使うか、全角を使う場合は文字間の微調整を行うものだ。ところがこの作品は何の考えもなく全角文字を使っている。実際に見ていただければわかると思うが、「11月」や「1963年」など二桁以上の文字や「””」のようなカッコを使った文字が、笑ってしまうほど間抜けなものとなっている。

5.
2行の字幕が真ん中合わせになっている。普通は左頭合わせだが、これはある程度好みの問題で、真ん中合わせでもそれほど読みにくいわけではない。しかし上に述べたような状況を鑑みるに、なぜ真ん中合わせになったかというと、特別なポリシーがあってやったわけではなく、単に「何も知らなかったから」というのが理由だろう。


早い話が、この作品の字幕は映画字幕のイロハも知らないド素人が制作したものなのである。


さらに不可解な現象が続く。


6.
字幕の位置が一定していない。特に字幕が2行になる場合、字幕が画面の下端ギリギリになったり、ずっと上の方に来たりする。一体何なんだ、あれは。例えば顔のアップにかけないために下に位置をずらすとか、そういうことではない。むしろ顔に字幕がかかる時に限って字幕が上に来たりする。

7.
おそらくフィルム撮り、そして間違いなくフィルム上映の作品なのだが、不思議なことに何か所かでデジタル特有のブロックノイズ(四角いポツポツ)が見られる。

8.
前半部分に何回も画面の縦揺れが発生する。これは劇場側でも気づいていて、配給側にちゃんとしたフィルムを取り寄せるよう依頼しているのだが、対応できていないそうだ。

9.
「やはりこれはフィルム全体がおかしい!」と確信したのは、エンドクレジットを見たときだ。黒バックに「Directed by ANG LEE」などの文字が出るのだが、それらが全て画面中央ではなく、ずっと上の方に来ている。こんなおかしなレイアウトはありえない。
さらに凄いことに、主題歌の字幕が縦で出るのだが、それが画面の遙か上に来ていて、一番上の文字が少し切れてしまっている。早い話が画面全体が上にずれているのだ。

10.
これについては確証は無いのだが、9で述べたように、画面全体が少し上にずれていて、上の部分が切れているのでは?と思える絵作りが散見された。


1から5までは単純かつ明らかな字幕制作の問題である。

しかし6から10までは一体どういうことなのだろう?

劇場マネージャーと話した限りでは、映写上の問題ではなく、フィルム自体に問題があるらしい。何しろTOHOシネマズは「ヨーロッパビスタやスタンダード用のレンズを備えていない」という理由から、ヨーロッパビスタ作品やスタンダード作品の上下を平気でカットしたまま上映するような劇場だ(六本木の話)。普通なら映写の仕方を疑うところだが、何しろ1から5まで書いたように、明らかにド素人が手がけたプリントが上映されているのだ。多少の疑念は残るが、劇場側の言うとおり、ほとんどは配給会社から回ってきたプリントそのものの問題と考えて良さそうだ。

それにしても6から10までの問題は、一体どういう技術的理由で生じた問題なのだろう? 1から5までは字幕という日本語版だけの付加価値の問題であり、英語を全てダイレクトに理解できる人には関係ないかもしれないが、6から10を総合すると、最悪の場合映画の構図そのものが狂っている可能性がある。つまり本来とは違うフレーミングで『ブロークバック・マウンテン』という映画を見せられているわけだ。

特に不可解なのは7のブロックノイズだ。フィルム撮り、フィルム上映の作品になぜブロックノイズが?? 

ひょっとするとこの作品、オリジナルのフィルムを字幕制作の段階で一度デジタル変換して、それをまたフィルムに焼き付けるなど、何か変わったことをしたのではなかろうか? その過程でフレーミングが狂ったか、わざと変えたか、何らかの問題が生じたのではなかろうか? 
なぜそんなことをする必要があるのか理解できないが、何度も述べたように「ど素人が手がけた日本語字幕付きプリント」である。何か常識では考えつかないような作業が行われていても不思議はない。


ちなみに配給会社はワイズ・ポリシーという聞いたこともない会社。
http://www.wisepolicy.com/

上のHPを見る限り、会社そのものは1997年に出来ているようだが、9年間鳴かず飛ばずの状態。確実にオスカーを取るだろうということで、社運を賭けて『ブロークバック・マウンテン』を買ったものの、思わぬ番狂わせでガックリ。上映用プリント制作作業も手抜きになった…というようなことだろうか? まあさすがにそこまで酷い話ではないと思うが、こんなド素人丸出しの仕事では、そう勘ぐられても仕方あるまい。

ついでに言えば、これだけ酷い字幕やプリントを事前に見ながら、それをまったく問題視しなかったマスコミや評論家連中の鈍感さも相当なものだ。


はっきり言うが、日本語字幕がついて現在日本の映画館で上映されている『ブロークバック・マウンテン』は明らかな「欠陥商品」である。


あれだけ質が高く、大きな話題になり、多くの映画ファンが期待している作品を、こんな欠陥品として送り出せる神経には、ただただ呆れるばかりだ。


電話での話だったので詳細がはっきりしなかったが、劇場側でも何らかの対策を施すらしい。もう少し詳しい事情が判明したら、また追加で書いていきたい。


できればこの文章そのものをワイズ・ポリシーに送りつけたいのだが、メールアドレスなどが出ていない。「知り合いに関係者がいる」という方がいらっしゃいましたら、この文章の存在を、彼らに教えていただけると助かります。

(2006年3月)

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Comments

いつも楽しみに読ませていただいております。
私個人は「ブロークバックマウンテン」は未見なのですが、ご指摘の内容が余りにも衝撃的だったので、書かせていただきます。

ワイズ・ポリシー社のメアドが不明とのことですが、COMPANY PROFILE http://www.wisepolicy.com/company/index.html
によるとinfo@wisepolicy.comのようです。

今後DVD化などのことも考えると、配給会社には早急な対策を望みたいですね。

Posted by: 仙道勇人 | 03/19/2006 at 14:24

#仙道勇人さん

ありがとうございます。確かによく見たら、プロファイルの中に載っていましたね。後でこちらのサイトを紹介するメールを先方に送りたいと思います。

その後幾つか情報が集まってきたのですが、6〜10に関しては気がつかなかった人が多いようです。つまり僕の見た劇場だけの発生、すなわちTOHOシネマズの映写上の問題という可能性も出てきました。字幕そのものの問題があったので「映写ではなくフィルム自体の問題」という劇場側の言葉を鵜呑みにしてしまいましたが、実はフィルムそのものと映写、両方に問題があったような気がしてきました。
ただしチネチッタでもスクリーンの上が少しはみ出して上映されていたようなので、やはり元のフィルムサイズ自体に何か問題がある可能性も否定できません。例えばこの作品はアメリカンビスタのはずですが、実際にはアメリカンビスタになっていないとか…

また「画面の縦揺れ」に関しては、僕がマネージャーに言ったところ「○○分から1時間××分までのことですね。それはフィルム自体の問題で、こちらでも把握しています。配給会社にちゃんとしてフィルムとの差し替えを要求しているのですが、まだ対応してもらえません。これはうちだけではなく全国にかかっているフィルムが同じ状態です」というような返事が即座に返ってきたので、さすがに嘘ではないでしょう。逆に言えば、そのように明らかな問題を見のがしているのですから、実は「他の問題も発生しているのだが見た人が気がついていないだけ」なのかもしれません。

またブロックノイズに関しては、あれが本当にブロックノイズだとしたら、一つの劇場だけの問題ということはありえません。もし僕の見た劇場だけに現れるものなら、実はブロックノイズというのは僕の見間違いで、単なるフィルムノイズだった可能性もあります。
なおブロックノイズ自体は、ごく些細なもので、それ自体は大した問題ではありません。ただブロックノイズが出ると言うことは、どこかでフィルム情報が一度デジタル化さたれことを示しており、この不可解な現象を解く手がかりとして書いたまでです。
具体的には3か所程度発生していましたが、僕の記憶に間違いがなければ、後半主役2人が素っ裸で崖から川に飛び込むロングショットで、右上の方に現れていました。これからご覧になられる方々は、その部分をちょっと注意して見ていただけると有り難いです。

なお劇場マネージャーも僕の見た次の回を見て、9の縦ずれを含む字幕の問題を認めました。ただ友人たちと酒を飲んでいる最中に(^^;)携帯で話したような状態なので、あまり突っ込んだ話をしておりません。乗りかかった船なので、配給会社と劇場の話を聞いて、どこにどういう問題があったのかを明らかにしていきたいと思っています。


Posted by: ぼのぼの | 03/19/2006 at 20:06

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