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01/16/2006

【演劇】2005年度 演劇ベストテン

12wangan


2005年度に見た演劇/ミュージカル/ダンス/文楽などの公演はちょうど40本。複数回見たものが何本もあるので回数で言うと51回になる。ベストテンを選べる本数なのかどうか微妙なところだが、ぜひ名前を挙げたい作品は余裕で10本以上になるので、あえて選ぶことにした。

ただしミュージカル『WE WILL ROCK YOU』で味わった感動と興奮は、演劇と言う以上に「ライヴ」としてのもの。クイーンファンにとっては最高の大エンタテインメントであるこの作品を、他の小劇場系ストレートプレイと比較するのはあまりに無意味だと思い、別格扱いということで除外した。実質的にはストレートプレイだけのベストテンになっている。


1.劇団桟敷童子『博多湾岸台風小僧』(ザ・スズナリ)
2.グリング『海賊』(ザ・スズナリ)
3.MODE『城』(新国立劇場)
4.ク・ナウカ『王女メデイア』(国立博物館)
5.ク・ナウカ『オセロー』(国立博物館)
6.ク・ナウカ『巷談宵宮雨』(旧細川侯爵邸)
7.クレネリ ゼロファクトリー『乙女の国』(駅前劇場)
8.MODE『冬のエチュード/シェイクスピア2005』(シアタープラッツ)
9.KUDAN PROJECT『くだんの件』(横浜相鉄劇場 )
10.innerchild『遙〈ニライ〉』(吉祥寺シアター)


第1位の桟敷童子との出会いは、今年最大の衝撃だった。詳しいレビューはすでに書いてあるので繰り返さないが、演劇を見る喜びここに極まれりと言いたくなる見事な作品だ。

第2位の『海賊』は、「演劇のお手本」とも言うべき名作。未だにレビューを書き損ねているのだが、大きな原因は、この非凡ならざる作品の素晴らしさを言葉で伝えようとすると、非常に凡庸な表現しか出てこないためだ。人間味溢れるストーリーを、徹底的に磨き抜かれた作劇術で物語り、優秀な役者たちがのびのびと演技をする…ただそれだけのことで、ここまで感動的な作品が生まれてくる。それを言葉で説明しようとすると、単なるストーリーの解説や見所紹介にしかならないからだ。平易なるが故にレビューを書きにくい、困った作品だ。
完成度から言えば、こちらをベストワンにすべきではないかと迷った。だが文章には書いていないものの、2004年度の演劇ベストワンもグリングの『ストリップ』(再演)だった。2年連続グリングをトップに選ぶよりは、2005年の新たな出会いとして桟敷童子をトップに据えるべきだろうと思い、こちらは第2位に回ってもらった。なおグリングのもう1本の新作『カリフォルニア』は、役者の好演をはじめ見るべき所も多かったが、作品としては「意欲に満ちた失敗作」の感が強い。

第3位の『城』は3回繰り返して見た。もちろん昨年最多。大好きな女優石村実伽の、入魂の演技に惹かれたのが最大の理由だが、作品的にも非常に面白かった。確かに長すぎて後半だれる部分はあるし、公演が始まった頃は、主演の田中哲司が膨大な台詞をこなすだけで精一杯という感じだった。だが回を重ねるにつれて役者の演技にゆとりが生まれ、作品自体も大きく成長していった。その様子を3回にわたって見たことで、「ドキュメントとしての演劇」の面白さを堪能したと言っていいだろう。『AMERIKA』に比べるとまだ未完成という印象は拭えないが、印象に残ったという意味では、2005年で最も印象に残った芝居だ。

以上の3本が2005年を代表する3本であることは間違いない。4位以下は順位もかなりアバウトにつけてあるので、あくまでも目安程度に考えて欲しい。

ク・ナウカの3作品はどれも素晴らしい出来で、2004年の不調がまるで嘘のようだ。作品ごとに当たり外れの大きい劇団だが、2005年はク・ナウカにとって大豊作の年だったと言っていいだろう。
にも関わらずベスト3に入り損ねたのは、ク・ナウカの人間浄瑠璃スタイルにすっかり慣れてしまい、以前ほどの新鮮さを感じなくなった点が大きい。また不世出の天才女優 美加理が力業で全てをねじ伏せてしまう展開が、逆に劇団の限界を形作っているようにも思える。だからこそ若手だけで作り上げた『巷談宵宮雨』が、あれだけ面白い作品になったことを高く評価したい。ク・ナウカ最大の宝である美加理という素材は生かしつつ、美加理抜きでも成立する、劇団の新たな魅力を開発していく…言うのは容易いが実行は恐ろしく難しい課題に、今後彼らがどのように取り組んでいくか注目したい。

クレネリ ゼロファクトリーの『乙女の国』は、予想外のスマッシュヒット。もう一本の『なみだくじ』は今ひとつだったが、まだまだ成長する可能性を秘めたユニットだと思う。4月の新作に期待。

MODEの『冬のエチュード/シェイクスピア2005』は、エピソードによって出来にばらつきはあるものの、知的インスピレーションを強く刺激してくれる作品で、非常に気に入っている。

KUDAN PROJECTの『くだんの件』は紛れもない天野天街ワールドだが、『真夜中の弥次さん喜多さん』に比べると、インパクトに欠けるのは否めない。

最後は五反団の『キャベツの類』を蹴落としてinnerchildが入選。一言で言えば「詰め込みすぎ」の不出来な作品だが、描かれるテーマに共感する部分が多すぎて、捨てるに捨てきれなかった。「語り方」は最悪だが「語っている内容」は最高に好き、といったところか。MODE出演時とは一味違う石村実伽の強い魅力が、ジャンヌ・ダルクのごとくこの作品を救っている。本人はこの演技に納得していないそうだが、絶対にそんなことはない。あのラストシーンは、2005年の最も感動的シーンの一つに数えられるものだった。


以下、部門賞。映画と違って、舞台の演出に関しては、まだよくわからない部分が多く、脚本家=演出家のケースも非常に多いので、演出部門は割愛し脚本賞だけにした。


★脚本賞
 青木豪『海賊』

★主演男優賞
 中野英樹『海賊』

★主演女優賞
 美加理『王女メデイア』

★助演男優賞
 藤本康宏『巷談宵宮雨』

★助演女優賞
 石村実伽『城』
 笹野鈴々音『海賊』

★舞台美術賞
 劇団桟敷童子『博多湾岸台風小僧』


脚本賞は、青木豪と桟敷童子の東憲司の一騎打ち。東憲司の骨太さも素晴らしいが、今回は磨き抜かれたような鋭利さを誇る青木豪に軍配を上げた。

主演男優賞は、『城』の田中哲司が対抗馬。しかし田中の場合「努力賞」というニュアンスが強い。純粋な演技力で言えば「名演」と言うにふさわしい中野英樹だろう。

主演女優賞は最大の激戦区。まったく独自のスタイルである美加理のムーバー演技を、他の女優の通常演技と比較できるのかというのが最大の問題。美加理は別格扱いということで選外にしようかとも思った。だが2004年であれば『アンティゴネ』の彼女に賞を与えることはなかっただろう。『王女メデイア』における美加理の演技は、あの天才女優にとってもとりわけ傑出したものであり、それは正当に評価しなくてはならないと言うことで受賞決定。もちろん『オセロー』におけるデスデモーナの演技も加味されている。
対抗馬は『博多湾岸台風小僧』の板垣桃子と、『遙〈ニライ〉』の石村実伽。二人とも素晴らしい演技だったが、何かこの世のものとは思えぬオーラを身にまとった、美加理の常識外れのパワーには敵わなかった。だが通常演技の女優(?)として、この二人が今最も注目に値する存在であることは間違いない。他にグリング『カリフォルニア』の藤本喜久子と、『乙女の国』の高橋理恵子も印象に残った。

助演男優賞は、他の部門に比べると傑出した人がいないため、該当無しにしようかと思ったが、生臭坊主を不気味に演じきった藤本康宏に。配役評ではトップに来ているし、助演ではなく主演なのではという疑問もないではないが…

助演女優賞でまた頭を抱えてしまった。『城』の石村実伽と『海賊』の笹野鈴々音、どちらも相譲らない。あの役は彼女にしか演じられないという意味で、笹野鈴々音に勝るものはないだろう。だが『城』の石村実伽も本当に素晴らしかった。しかも彼女は他に『遙〈ニライ〉』と『冬のエチュード』がある。これで賞をやらないのはおかしい…ということで、ここだけ反則業。石村と笹野のダブル受賞ということにした。

舞台美術賞は、最後の大仕掛けも含め、やはり桟敷童子の『博多湾岸台風小僧』だろう。対抗馬は同じ桟敷童子の『風来坊雷神屋敷』。


2006年は、少し演劇を見る本数を減らし、お気に入りのレギュラー劇団中心でいこうと思っていた。ところがグリングの新作は12月までない。MODEは2007年に大きなプロジェクトを抱えているためか、今年は大きな動きがない模様。ク・ナウカも今後の活動がまだ発表されていない…という具合。そんな中、桟敷童子だけはマゾヒスティックなまでの勢いで働き続け、早くも2月に新作公演がある。さすがはサバイバル系劇団だ。今度見に行ったら、彼らの爪の垢でも煎じて飲ませてもらうことにしよう。


(2006年1月初出)

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