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12/11/2005

【ライヴ】fra-foa presents 4×4  2005.12.10

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fra-foa presents 4×4 
2005年12月10日(土) 下北沢CLUB251


今年5月に解散したfra-foa。ヴォーカルの三上ちさこはソロになり、3人の男メンバーは別々のバンドで活動しているが、その4人がそれぞれのバンドで対バンを行うという、世にも珍しいイヴェント。ディープ・パープル解散後に、レインボーとホワイトスネイクとギランが一つのイヴェントで共演するようなものだ。スケールが激しく違うような気もするが、気にしないでくれ。

場所は、昨年の1月にfra-foaとしては最悪のライヴを行った下北沢のCLUB251。全体に狭くて汚いのもさることながら、ステージが低くて、最前列でないとミュージシャンの演奏がよく見えないのが最大の難。今日はたまたま良いポジションに立ったせいで、少し後ろでもよく見えたが、やはりあまり好きになれない小屋だ。

最初に言っておくと、男メンバー3人が在籍するバンドの音を聞くのは、今回が初めてである。


                  *


1番手は三上ちさこ。Hereツアーは昨日の仙台公演で終了したが、仙台が寒くて風邪をひいたそうだ。確かに声が少しがらついているし咳もしているが、短いステージなので大きな影響はなかった。しかし仙台って彼女の出身地だろうに、東京に住み慣れると、やはり駄目なのかねえ? そう言えばこんなイヴェントこそ、仙台で開けばいいのに。

ちさこは「アコースティック」と銘打たれていたが、実際にはエレキギター一本のバッキング。ツアーから引き続き参加の藤井一彦がエレクトリックな音色をかき鳴らすので、Hereツアーの省エネヴァージョンという感じだ。「バンドではない」というだけで、決してアコースティックではない。この規模のイヴェントでは、ギャラなどの関係で、花田たちまで連れてくることは出来なかったのだろう。

セットリストは以下の通り。

1.解放区
2.相対形
3.咲かない花
4.望
5.ファンダメンタル
6.Hole

先週と同じくリミックスされた「解放区」のイントロと共に登場するちさこと藤井。藤井がかき鳴らすコードをバックに、ちさこが「解放区」を歌い上げる。このようなシンプルなスタイルで歌われると、「解放区」という歌が持つ根源的な美しさと力強さが、よりくっきりとした姿で立ち現れてくる。またこの曲が「青白い月」によく似た構造を持っていることにも気づかされる。こういった別ヴァージョンを幾つか収録したシングルでも出してもらえないものだろうか。
それにしても、最近子供たちが殺される悲惨な事件が相次いでいるだけに、最初の方の歌詞が切実なリアリティを持って響くのには、複雑な心境だった。

続く「相対形」や「咲かない花」のようなナンバーは、やはりギター一本のバッキングでは無理があるのだが、それを補うかのようにちさこが声を振り絞る。それが凄い迫力を出している部分もあるが、空回りしている部分もあり、功罪相半ばといったころか。

次の「望」は比較的ギター一本で演奏しやすいナンバーなので、よくはまっていた。

「ファンダメンタル」もギター一本では演奏しにくそうだが、これが意外と良い仕上がり。「今、すごくかっこいい終わり方をしたね」とちさこも驚いていたように、藤井の演奏が一番良かったのは、この曲かも。

最後は「Hole」。これはギター一本では苦しい。また先週のライヴでも思ったが、やはりこの曲はfra-foaの「月と砂漠」によく似ている。

以上、演奏時間は約35分。


全体的には、最初に述べたように「Hereツアーの省エネヴァージョン」であり、それ以上でもそれ以下でもない。どうせなら本当にアコースティックギター一本のバッキングで、それに適したアレンジを施された歌と演奏を聞きたかった。

そのような企画なら、かつてエルトン・ジョンが、自分のピアノとパーカッションだけの編成で来日公演を行ったことがある。前半はパーカッションすら参加せず、ピアノ一台とヴォーカルだけの演奏だったが、これが身震いするほどの素晴らしさ。「弾き語り」というような地味なものではなく、アップテンポの曲はあくまでも華やかでリズミカルに、バラードはあくまでも美しくメロディアスにと、たった一台のピアノでここまで多彩な表現が出来るものなのかと唖然とした。その後エルトンがバンド編成で来たときには見なかったのだが、一つの理由は、その小編成ライヴが素晴らしすぎて、よりショーアップされたバンド演奏では、あれ以上の音楽的純度は望めないだろうと思ったからだ。
今回のライヴはあくまでも一晩限りの企画もの。そこまでの丹念なアレンジと演奏を期待するのは無理というものだろうが、「バンドの省エネヴァージョン」を超える音楽的アイディアをもう少し見せて欲しかった。ただし、どのようなアレンジを施されても「解放区」が名曲であることを確認できたのは、大きな収穫だった。


                  *


2番手はドラムスの佐々木康治が在籍する「裏返せ俺を」。通称裏俺。

ジョン・ボーナムを思わせる佐々木のドラムスは、やはり強力。一打一打が腹にズシンと来る。堅くて太いゴムをハンマーで叩いているような音色のベースも素晴らしい。ギターはそれほど印象に残らないが、強力なリズムセクションの絡み合いだけで十分聞くに値する。

問題はヴォーカルだ。決して下手ではない。下手どころか、あれだけ伸びやかな高音を苦もなく出せるヴォーカリストは、メジャーでも数少ないだろう。ジョー・リン・ターナーやルー・グラムといったヴォーカリストを彷彿とさせる。しかしその伸びやかな高音に頼りすぎることで、表現の幅が狭くなってはいまいか。押しばかりで引きがなく、長く聞いているとワンパターンな印象を覚えてしまう。本来なら大きな武器となるべき才能が、逆にバンドを一つの殻に閉じこめてしまっているかのようだ。
ヴォーカルがもう少し表現の幅を広げ、一発で覚えられるようなメロディを書けるようになったら、大化けする可能性もあるだろう。だが現状でこじんまりとまとまっているだけに、このままで終わってしまう可能性も高そうだ。自分自身の殻を破る、もっと大胆な音楽的挑戦を試みて欲しい。


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3番手は、ベースの平塚学がいるWREEP。

残念ながら、このバンドについて語るべき事はほとんどない。

特別下手というわけではないが、いくら聞いていてもWREEPとしての個性や、音楽的な主張がほとんど感じられない。何よりも「自分はなぜ音楽に向かうのか」という姿勢のようなものがまったく見えてこない。一つの型としてロックをやっているだけで、その型を通じて伝えたいものが何も無いのではなかろうか。僕はそのような音楽を、あえて金を払って聞くほど暇でも金持ちでもない。

残酷なようだが、このバンドは「達者なアマチュア」としての活動が限界だろう。

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トリはギターの高橋誠二が在籍するN.E.S.。

最初の一音を聞いただけで「これはただ者ではない」と直感した。

こいつらは凄い。

リフ中心の、予想だにせぬヘヴィーなサウンド。レッド・ツェッペリン、ブラック・サバス、メタリカ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンといった、ハードロックの中でもとりわけ硬派なバンドに通じるサウンドがあちこちに散りばめられている。とりわけよく似ているのは、今一番旬のバンドとも言えるシステム・オブ・ア・ダウンだ。音楽の中身はかなり違うが、一曲の中で曲調が千変万化する複雑な構成や、ハード&ヘヴィーでありつつ独特の哀愁を持ったメロディも兼ね備えているあたりなど、そっくりだ。

サウンド的に言えば、ちさこのソロよりも、このバンドの方が初期のfra-foaに近いのではなかろうか。いかにもロックらしいグルーヴ感と、火傷をしそうな初期衝動の強さに、胸が熱くなる。

あんな複雑なナンバーを軽々と演奏しきってしまうメンバーのテクニックも凄い。
リズムセクションは最強。メジャーのかなり上手いバンドと比較しても遜色ないレヴェルだ。ベースはヴォーカルも味がある。
高橋のギターも、fra-foa時代より遙かに上手くなっている。以前はfra-foaの中でもテクニック的に最も見劣りし、成長著しいちさこのヴォーカルに対して、足を引っ張る役目しか果たしていなかったが、解散ライヴの時には、別人かと思うようなギターを弾いていた。こんなバンドでライヴをガンガンこなしていたのだから、それも当然だろう。fra-foa時代には決して聞けなかった斬新なフレーズや音色を聞いていると、高橋にとっては、これで良かったんだなと思わずにはいられない。
そしてヴォーカルとギターを担当する津田憲三。ヴォーカルは、普通の意味で特に上手いというわけではない。声域が狭く、高音があまり出ないようだ。しかし歌詞の一語一語を噛みしめるようなヴォーカルには、伝えたいと思う感情が明確に刻み込まれている。テクニックが無くては伝えられないものは確かに存在する。だがそれほど高度なテクニックが無くても伝えられるものも数多い。この人は自分のヴォーカリストとしての限界を見極めた上で、何をどのように表現すれば聞く者に最も効果的にメッセージを伝えられるのか、真剣に考えているようだ。


ただ一つ気になったのは、今の日本の音楽シーンに、こんなタイプのバンドを受け入れる余地があるだろうかということだ。一見バラエティに富み、活況を呈しているJ-ROCK/J-POPだが、少なくともメジャーの世界ではかなりの画一化が進んでいる。fra-foaほどの優れたバンドですら、商業的には成功しなかったのだ。カラオケでは歌えず、着メロにもなりえず、アマチュアのコピーの対象としても不適当なN.E.S.が、メジャーの世界に進出して成功する可能性はかなり低そうだ。もちろんインディーズで地道にやっていく道もあるだろうが、これほど高い音楽性を持ったバンドが、一部のマニアにしか知られないとすれば、とても残念だ。今後彼らは、純粋に音楽に向き合うだけでなく、その音楽を少しでも多くの人々に届ける手段を真剣に模索せざるをえないだろう。

                  *


そんなわけで本日の最大の収穫はN.E.S.との出会いだった。もちろんちさこも良かったが、先週の正式なツアーを見ていれば、絶対に見逃せないというほどのものではない。やはりN.E.S.に尽きる。


ところで終演時間遅すぎ。事前に電話で聞いたら、終了予定時刻は21時20分と言われた(開演は19時)。そんなに早く終わるものだろうかと思ったが、案の定終わったのは22時10分。予定より50分押しはちょっとひどいな。終演後友達と飲む約束があって「21時半に終わる」と言っておいたのだが、最後がN.E.S.では途中退出もできず、えらく待たせてしまった。年をとるごとに、こういう時間的なルーズさが嫌で足が遠のく場所が、どうしても増えてくる。


(2005年12月初出)

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