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12/10/2005

【ライヴ】三上ちさこ 2005.11.27

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三上ちさこライヴ
2005年11月27日(日) クラブクアトロ


セカンドソロアルバム『Here』に伴うツアー。東京では1回だけの公演だが、せめて2回くらいやって欲しいものだ。何しろツアーメンバーが凄まじい。ギターが花田裕之(ex-Roosters)と藤井一彦(The Groovers)、ベースが井上富雄 (ex-Roosters)、ドラムスが中幸一郎 (Demi-Semi Quaver)。あのルースターズのギターとベースが参加しているのだ。どういう経緯でこんな豪華メンバーが集まったのかは知らないが、わずか6回の公演で終わりにするにはもったいなさすぎる。せめてこのツアーのライヴ盤を出して欲しい…と思いきや、終演後にもらったチラシによれば来年2月にライヴDVDが出るそうだ。出来れば気軽に音だけ聞けるライヴCDも一緒に出して欲しいものだ。


もっとゆっくり入るはずだったのに、用事が早く終わってしまったため、最初から列に並び入場することになる。整理番号が早いので行こうと思えば最前列に行けるが、いつも通り、真ん中辺りでゆったり見ようと思っていた。しかし「花田と井上が参加するライヴなんて、これがきっと最初で最後だよなあ…」と思い直し、気がつけば真ん中の前から2列目に立っていた。fra-foa時代、下北沢やタワーレコードのインストアライヴで、最前列付近に陣取って死にそうな目にあったが、最近は客も非常におとなしくなって、前に押しかけたり飛び跳ねたりしないから、まず大丈夫だろうという読みもあった。これだけ近くでちさこのステージを見るのは久しぶりだ。

じっと待つこと1時間以上。


18時10分。リミックスされた「解放区」のイントロが流れ出す。5人のメンバー登場。花田は上手(向かって右側)、藤井は上手(向かって左側)。井上は後ろの方で少し上手。ドラムスは真後ろではなく少し下手にセッティングされている。

今日のちさこはゾッとするほど美しい。本当にこの人は、状況によって、恐ろしいほど妖艶にもなれば、無垢な少年のようにもなれば、地味なママさんにもなる。そんなオーラの変化を意識的に行っているのかどうか、いまだにわからない。

1曲目は「解放区」。メンバーの顔ぶれから予想されたように、アルバムヴァージョンよりもストレートでロック色の強い演奏になっている。5月に新宿LOFTで聞いた、実験色の強いナイン・インチ・ネイルズ風ともかなり違う。
いずれにせよ「解放区」は正真正銘の名曲だ。ソロになってからの最高傑作ではあるのはもちろん、fra-foa時代の曲と並べてもトップクラスに入る。アルバムヴァージョンは、イントロとアウトロが長すぎるのと、ヴォーカルが少し小さくて歌が演奏に埋もれ気味なのが欠点だが、それはあくまでもアレンジやミックスの問題。こうして違うアレンジ/演奏で聞くと、身震いするほどの名曲であることを再確認させられる。
この演奏には思わず「本当にこれが1曲目でいいのか?」言いたくなった。元々壮大な曲だが、それをさらに壮大かつパワフルに演奏していて、どう聞いても本編クライマックスかアンコールのような盛り上がり方だからだ。あまりの迫力に気圧されて、観客は盛り上がるどころか呆然と立ちすくんでいる。初っ端にいきなりこれだけのものをぶちかまして、最後までそのテンションがもつのだろうか?


その不安は杞憂に終わった。
ちさこのテンションは最後まで下がることなく、fra-foa時代の青白い炎とは違う、赤々とした炎を吹き上げるような、エネルギッシュなライヴを見せてくれたのだ。


2曲目は陽性な名曲「相対形」。アルバムと同じ並びで最高のナンバーをぶっ続けでやるとは、もったいないくらいだ。ちさこのテンションは、いささかも衰えない。ツアー初日の広島で飛び降りてケガをした左足には包帯が巻かれているが、その足を浮かせたまま踊りまくっている。あの細い体でよくあれほどエネルギッシュに動き回れるものだ。逆に体が細くて体重が軽いからこそ、あんな器用な踊り方が出来るのかもしれないが。


この辺りでバックの演奏に若干気になる点が出てくる。演奏全体はエネルギッシュでグルーヴ感に溢れたものだが、お目当ての花田がどうも地味なのだ。特に花田らしい個性を出すわけでもなく、黙々とバッキングに徹している。ちと物足りない。もう一人のルースター井上も地味だが、それは毎度のことだから仕方ない(笑)。
代わりに目立ちまくっているのが藤井一彦。ヘアスタイルとサングラスがまるで鮎川誠(シーナ&ロケッツ)のようだが、弾き方まで少しそれっぽい。黒のレスポール(アーム付き)を、あまりエフェクターも通さずにガンガン弾きまくる。大まかに、藤井がリード、花田がリズムを担当している上に、どう聞いても藤井の方が音量がでかい。花田の130%増しといったところか。時には藤井のギターがちさこのヴォーカルに挑みかかっているように聞こえる部分もあった。
そして初めて聞く中幸一郎のドラミング。最初の内は「池畑潤二のようなパワータイプではなく、三原重夫のような知性的なドラムを叩く人だな」と思っていたのだが、後半になると本性が現れてきたのか、シンバル鳴らしまくりで実に騒々しい。池畑とも三原とも違う個性的なドラミングで楽しめた。
全体的に言って、上手に位置する1/2ルースターズ(花田と井上)が堅実な演奏で土台を固め、下手に位置する藤井と中が、その上で暴れまくっているような印象だ。それはそれでいいのだが、個人的には「ルースターズのメンバーをバックに歌うちさこ」を楽しみにしていただけに、少し肩すかしを食った感は否めない。


とは言っても、それによってライヴの感動が大きく損なわれたわけではない。主役であるちさこが、細かい不満など全て吹き飛ばす強力なエネルギーを発していたからだ。


3曲目は『Here』後半の中でも特に好きな「望」。ヘヴィーなサウンドと希望に満ちた明るさが共存する佳曲だ。fra-foa時代ならもっと痛みに満ちた曲になったことだろうが、今のちさこは闇よりも光の部分に焦点を合わせ、ポジティヴで力強い作品に仕上げている。

4曲目はファースト収録の「孤高の空」。紛れもない名曲だが、『わたしはあなたの宇宙/破壊編』でのパワフルさに比べると、少し大人しい感じがした。

5曲目は「神の樹」。やはりこの手の曲は、ちさこに合っていないのではないかという思いは消えない。だがインストゥルメンタルの比重が高い作品だけに、精鋭メンバーの演奏によって、レコーディングされた3ヴァージョンのどれよりも魅力的な仕上がりとなっている。

6曲目の「Insane」も同様。iPodで聞くときはいつもスキップしてしまう曲だが、このバンドによる演奏は格段に魅力的だ。

ここから10曲目の「処方箋」まで、曲間無しで怒濤の演奏が続く。

グッとパワーアップした「ファンダメンタル」。アカペラの歌い出しは、これまでで最高。

ブルーハーツを彷彿とさせるポップなパンクチューン「粗大ゴミ」。

いかにもfra-foaチックな「咲かない花」。

フリーキーなギターが暴れ回る「処方箋」。

「粗大ゴミ」から「処方箋」までのアップテンポナンバー3連発はかなり強力。中幸一郎のドラムスと藤井一彦のギターが爆音を叩き出すが、それにも増してちさこが暴れまくる。fra-foa時代だったら、この辺で必ず声が出なくなったものだが、今回は最後までそのような場面は見られなかった。声のコントロール能力が格段に進歩したようだ。

一旦ブレイクが入った後始まったのは、ヘヴィーな「Hole」。『わたしはあなたの宇宙』収録のナンバーは、すべてオリジナルアルバムではなくリミックスアルバム『破壊編』に準じたアレンジと演奏になっているが、当然のことだろう。
SMさながらにマイクのコードを体に巻き付けるちさこ。この手の狂気じみたパフォーマンスを見るのは久しぶりだが、かつてのような痛々しさよりも、溢れるような生命力の発露が感じられる。

ラストは、唯一の純粋なfra-foaナンバー「月と砂漠」。マイクスタンドを振り回し、コードで自らの体をがんじがらめにしながら、絶唱するちさこ。強力なバックバンドさえ影が薄くなるほどの迫力で、もはやちさこの一挙一動から目が離せない。


本編は19時25分頃に終わり。ちさこが呼吸を整えているのか、かなり長めに待たせた後、アンコールが始まる。再登場したちさこは、憑き物が落ちたかのように爽やかな顔をしている。

アンコールの3曲「Here」「Pendulum」「Yes」はどれもポップな曲調で、本編後半の荒れ狂うようなロックから一転、今のちさこならではの優しく穏やかな側面を印象づける。素晴らしい。fra-foa時代とはかなり違う、しかし同じくらいの感動で胸がいっぱいになる。

終了は19時45分頃。これだけの豪華な顔ぶれを揃えながら、最後までメンバー紹介が無かったのは、さすがに礼儀を欠くのではないかと思ったが、まあそんなところもちさこらしいと言えばちさこらしい。


すでに述べたように、今回のライヴで残念だったのは、大きなお目当てである花田裕之が目立った活躍をしてくれなかったことだ。代わりに目立っていた藤井と中も、ちさこと激しい化学反応を起こすところまではいかず「最高に優秀なサポートメンバー」という域を越えるものではなかった。やはり短期のツアーバンドとしては、これが限度なのだろうか。ちさこの曲を、もっと彼ら独自の解釈による演奏で聞いてみたかった。また花田も藤井も、普段は自分のバンドでリードヴォーカルを取っているのだから、ちさことの声の絡みをぜひ聞いてみたかった。

そのような問題はあるものの、全体としては十分に見応えのあるライヴだった。ソロになってからのベストライヴであるのはもちろん、fra-foa時代を含めても、ティアラこうとう以来の素晴らしい出来だった。
最大の要因は、ちさこがfra-foa時代とは違う新しい魅力を確立していたからだ。精神的にも肉体的にも充実しているようだし、これまでの音楽的模索が、ようやく実を結んできた感じだ。

fra-foa時代のちさこは、いつ息絶えても不思議がないような、痛々しいほど純粋なパフォーマンスによって、多くの熱狂的ファンを生み出していた。だがあんなに無防備で、自滅的とも言えるパフォーマンスを何年も続けていけるはずはない。問題は、そのような初期衝動を、表現の純度を落とさぬまま、どうやって長続きする音楽性にシフトしていくかだ。それに失敗して、アーティストとしての輝きを失ってしまった人は数知れない。
明らかなミスプロデュースによって、ちさこらしい魅力が完全に封殺されていた『わたしはあなたの宇宙』を出した頃は、彼女もかなり危ないところにいたはずだ。だがその後、より生々しいプロデュースによって曲本来の良さを復活させたリミックスアルバム『わたしはあなたの宇宙/破壊編』を出すことで軌道修正。fra-foaを正式に解散して、精神的けじめを付けたのもプラスに働いたのだろう。セカンドアルバム『Here』は、前作とは比較にならないほど魅力的な作品に仕上がっていた。そして今回の見事なライヴ…ちさこはソロアーティストとしての正しい道を、着実に歩み始めたようだ。


fra-foaの歌とはかなりタイプの違う、「解放区」や「相対形」のような名曲も少しずつ生み出されている。

そしてfra-foa時代のちさこが、常に「終わり」を感じさせていたのに対し、今の彼女には大きな「未来」が感じられる。


三上ちさこという素晴らしい表現者の歩みを、リアルタイムで見られる幸福。

彼女の次なるステップがどんなものになるか、楽しみで仕方がない。


2005年11月27日(日) セットリスト

1.解放区
2.相対形
3.望
4.孤高の空
5.神の樹
6.Insane
7.ファンダメンタル
8.粗大ゴミ
9.咲かない花
10.処方箋
11.Hole
12.月と砂漠
(アンコール)
13.Here
14.Pendulum
15.Yes


(2005年12月初出)


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