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07/07/2005

【演劇】THE SHAMPOO HAT『事件』 2005.7.1

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THE SHAMPOO HAT『事件』
2005年7月1日(金) 19:30〜 ザ・スズナリ


前の日に風邪をひいてしまい少し熱があった。芝居を見るくらい何とかなるだろうと思いながら下北沢へ向かったが、やはり楽ではなかった。熱でうなされたり頭がガンガンするというほどではないが、同じ姿勢でじっと座っているのがけっこうつらかった。そのような事情から、多少集中力を欠いた状態での鑑賞であることを最初にお断りしておく。


内容は、連続通り魔殺人事件を核としたサイコスリラー。事件に関係した人たちの卑近な日常生活と、その裏に潜む狂気が、いつもどおりのねばっこいタッチで描かれていく。この劇団の芝居は本当にいつも油っこい。出てくる食べ物は美味いが、椅子やテーブルがベタベタしていて、ゴキブリが這っていないか心配してしまう中華料理屋のようだ。そう言えば最近明大前でそんな店を見つけたな。

まず目を引くのは、あるようでいてなかったユニークなセットの使い方。スズナリの舞台いっぱいに6つのセット(前に3つ、後ろに3つ)が作られているのだが、それらのセットを隔てる物は何もない。ライトが当たり、役者が芝居をしているセットが今現在のシーンとなる。セットチェンジをせずとも6つの場を自由に行き来できるわけだ。映画のようにカット一つで別の場に飛ぶことが出来ない演劇にとっては、コロンブスの卵的な発想でなかなか面白かった。
ただしそれらのセットの幾つかに役者がいることはあっても、芝居が行われるのは実質的に一つだけで、複数のセットで複数の芝居が同時に行われるようなことはなかった。せっかく面白いセットを作ったのだから、そんな実験的手法をやってみても良かったのではないだろうか。

セットとは思えないほど乱雑で生活臭溢れる舞台。見ているだけでジメジメとした湿気が体にまとわりつく。この辺りの生臭さがいかにもTHE SHAMPOO HATだ。怒声と嘆き、殺意と自己憐憫…両極端な感情が複雑に交錯する芝居も迫力がある。

日常の中からにじみ出す狂気を描く手つきはいつもどおり達者だが、そこに忍び込んでくるノアの洪水やクジラといった巨大なモチーフのからめ方がいまひとつだった。やるせない日常、逃れようのない閉塞感に対するアンチテーゼなのだろうが、それが他の描写やストーリーとうまく噛み合っているとは思えない。最初は犯人にしか見えなかったクジラの影を誰もが目撃するラストなど、いかようにも理解できる分、話をまとめきれなくなって曖昧なシンボルに逃げてしまったのでは?と勘ぐりたくなる。2時間の上演時間も長すぎで、あれこれ詰め込みすぎた分、中心となるべきテーマが拡散してしまった印象を受ける。もう少し短くできたはずだし、その方がインパクトは強かっただろう。

意地悪く見れば、中途半端にエンタテインメントに色目を使った出来損ないとも言えるが、好意的に解釈すれば、今までにないスケールの大きな作風に挑戦したが故の偉大な失敗作とも言える。そのどちらが正しいかは、来年3月の新作を見ればある程度結論が出るだろう。


今にして思えば、最初に見た『肉屋の息子』は、この劇団としてはうまく出来すぎていたのだろう。しかし前作の『ゴスペル』も今回の『事件』も、作品としてのまとまりについてはいろいろ問題があるが、その分ウェルメイドな『肉屋の息子』にはなかった不気味な可能性を感じさせることも確か。その可能性がどのように花開くのか開かないのか…まだしばらくはこの劇団から目が離せない。


(2005年7月初出)

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Posted by: みんなのプロフィール | 07/07/2005 05:15

TBありがとうございます。

> 複数のセットで複数の芝居が同時に行われるようなこと

そうですよね、それがあったらもっともっと面白かっただろうなって思います。

Posted by: しのぶ | 07/07/2005 11:35

TBありがとうございます。舞台上で複数の物語が進行する際、さまざまな工夫が凝らされているようですね。
> まず目を引くのは、あるようでいてなかったユニークなセットの使い方。スズ
> ナリの舞台いっぱいに6つのセット(前に3つ、後ろに3つ)が作られているの
> だが、それらのセットを隔てる物は何もない。ライトが当たり、役者が芝居を
> しているセットが今現在のシーンとなる。セットチェンジをせずとも6つの場
> を自由に行き来できるわけだ。映画のようにカット一つで別の場に飛ぶことが
> 出来ない演劇にとっては、コロンブスの卵的な発想でなかなか面白かった。

最近立て続けに、同じようなステージをみました。机上風景「複雑な愛の記録」と、劇団印象「空白」公演です。セットと照明の工夫で、同じ舞台で複数の場面をほぼ同時進行させる試みだと思います。

幅広いステージをこれからも紹介したいと思います。よろしくお願いします。

Posted by: 北嶋孝@ノースアイランド舎 | 07/07/2005 22:23

#しのぶさん、北嶋孝@ノースアイランド舎さん

今度の公演は、ストーリーについては賛否両論あるようですが、セットの使い方についてはほとんどの人が誉めているようですね。次は今のアクの強さを失わぬまま、ストーリー面でも文句なしにガツンと言わせてくれる作品を期待してしまいます。

これからもよろしくお願いします。

Posted by: ぼのぼの | 07/08/2005 22:31

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