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06/13/2005

【映画】『シベリアの理髪師』短評

何ともはや困った映画だ。ニキータ・ミハルコフの良い部分と悪い部分が両方共によく出ていて、評価に困ってしまう。

コメディタッチの前半は、確かに笑える部分も多いのだが、この映画が何を描こうとしているのか方向性が見えず、少々退屈した。こういう饒舌でまだるっこしい、いかにもロシア的な語り口はミハルコフらしい欠点。もっともこの作品はロシア的なる精神を描くことがテーマの一つだったとも聞いているので、あえてそのような語り口を採用したのかもしれないが。

それよりは後半の悲劇的な展開、ドラマチックな盛り上がりの方を評価する。とりわけ『黒い瞳』を想起させる最後の30分ほどは、それまでの冗長さは何だったんだ?と思わせる見事な展開。特に「シベリアの理髪師」が実際に動き出すスペクタクルは、コンピューターから生み出されるSFXを見慣れた目に、新鮮な興奮と感動をもたらしてくれた。
ただしその後半も、「他の士官候補生のキャラがもう少し立っていたら、あの駅のシーンはさらに感動的になっただろう」とか「あのマスク男の正体などとっくにわかっているんだから、もったいつけてじらすなよ」といった具合に、いろいろ不満もあるのだが… 
特に後者の「もうネタはわかりきってるんだからもったいつけるなよ」という不満は『黒い瞳』を見たときにも感じたもので、こういうベタさ加減はミハルコフの拭いがたい個性なのだろう。1905年のシーンは、あの半分の量でも十分過ぎると思うのだが。

…と、文句を言い始めれば切りがないし、紛う方なき傑作『太陽に灼かれて』に及ばないことは確かだが、やはりどこか惹かれずにはいられない。しかし惹かれれば惹かれるほど、作品としてのちぐはぐさが気になってくる…ああ、『黒い瞳』や『ウルガ』に感じたのと同じ歯がゆさをまた味わうことになろうとは…


(2000年10月初出/2001年1月改訂)

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