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06/24/2005

【映画】『オーシャン・オブ・ファイヤー』を再見して号泣する

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再見。

やはり最高だ、これ。

もちろんこれよりも良い映画、面白い映画がないわけではない。
しかし中学生の頃映画を見始めた時の喜びを、これほど思い出させてくれる映画は滅多にない。

シネスコの大画面に展開されるスペクタクル。鮮やかな光と色の躍動。苦難の果てにもたらされるカタルシスと深い感動。高い娯楽性と人間ドラマの見事な融合…

そう、中学生時代の自分は、このような作品に接して、映画の世界にのめり込んでいったのだ。

今現在、見る映画の好みは多少変わっている。映画の見方自体も変わっている。

しかし「原点」はあくまでもここなのだ。

ごくたまに使うのとはまったく違う意味で、こう呟かずにはいられない。
「これが映画なんだ…」

そう、映画を見ることの喜び、その一つの理想型がこの作品にある。


再見で気が付いたことを幾つか。

子細に見ていくと、実に細かな伏線が張られていたり説明描写がなされていたりすることに驚かされる。前回ひどいご都合主義だと思った部分も、よく見ると、なぜそうなったかの言い訳が、ほんの一瞬ではあるがちゃんと描写されているのだ。それでもちょっと…とは思うが、この誠実さは微笑ましいものがある。

また前回もちらりとは脳裏を横切ったが、この作品、気持ち悪いくらい『ラストサムライ』に構造がそっくりだ。ある意味、日本がアラビアの砂漠に、サムライがベドウィンに変わっただけという感じも。先住民虐殺のショックによって酒浸りになっていた主人公が、ひょんなことから異文化の国に向かい、そこでの闘いを通じて魂の救済を得るという大枠はほとんどそのまま。
ただし『ラストサムライ』がサムライ文化を徹底的に美化し、主人公がそこに心酔しきってしまうのに比べると、『オーシャン・オブ・ファイヤー』はもう少しクール。異文化の直接的な融合と言うよりも、文化の違いを乗り越えた精神の共感や、虐げられた者が互いの文化の中で、互いの障壁に向き合いながら、それぞれに自らの魂を解放していく物語に重きが置かれている。だからこそフランクとジャジーラが互いに言う「あなたにはわからない世界だ」という言葉が胸に響く。

そして何度見ても驚愕させられるのは、ヒダルゴ役の馬の演技だ。
そもそもこの映画が僕にとって特別なものになった最初の瞬間は、レースを棄権しかけたフランクに対して、ある行動を取ったヒダルゴが「何してるんだい? さあ、もうレースが始まるよ」という目でじっとこちらを見た、あのショットだった。よく見れば、他にもヒダルゴがフランクを精神的に叱咤する場面があちこちにある。
馬が脚本を読んだとも思えないので、これは監督や馬のトレーナーの指導の賜だろう。だがそれだけで割り切るわけにはいかない何か精神的なもの、「たとえ脚本は読めなくても、やはりこの馬は自分がやっていることを理解しているのではないか」と思わずにいられない輝きを帯びている。
本作の原題は『ヒダルゴ』。タイトルからして、この馬が主人公であることを明示している。それも当然のことだろう。

それにしても主人公のヒダルゴに限らず、馬が走るシーンは、どうしてこうも映画的に美しく、感動的なのだろう。車やバイクが走るシーンにも、別種の興奮や躍動感があるが、馬が走る姿以上の美しさは存在しない。少なくとも、これまでの映画に、そのような美しさが描かれたことはない。初期の映画の多くが西部劇であったことはご存じの通りだ。「馬が走る」というのは、まさしく映画を見る喜びの原点なのだということを、痛切に思い知らされる。

また、これは残念ながら悪い発見なのだが、「なぜここでベドウィン同士が英語を話す?」と首をかしげるシーンが数多く見られた。深く考えずに字幕だけ見ていれば、しょせんはどちらも外国語として聞き流せるのだが、やはり少しでも意識的に見ると、この中途半端さは気になる。『ラストサムライ』にもそういう部分はあったが、こちらの方が遙かにひどい。とは言え、アラビア語(?)での会話シーンもかなりのヴォリュームがあり、アメリカ本国での興業という第一命題を考えれば、これでもかなりがんばった方だろう。『アラビアのロレンス』など、最初から最後までベドウィンがみんな英語をしゃべっているわけだし。


え? お前が感動したとかいうエピローグはどうしたって?

・・・・・・・・・聞くなよ。

「ボロ泣き」に決まってるだろうがあああああああああああ!!!!(/_;)


いやもう、今回は本当に「ボロ泣き」としか言いようがないほど泣いた。

クライマックスの闘いの辺りからもうウルウル。

レースの決着シーンですでに涙。

前回はさほど引っかかってこなかったあの「旗」に涙涙。

その後のオマー・シャリフとのやり取りにもう涙涙涙。

しつこいようだが、オマー・シャリフはもうこの作品が遺作でいい。デヴィッド・リーンの『ドクトル・ジバゴ』『アラビアのロレンス』を生涯の代表作とする彼にとって、この映画以上に素晴らしい花道などありえない。あんな素晴らしいシーンで俳優人生を締めくくることができる幸福な人間が一体どれだけいると言うのか?

そしてあのエピローグ…すまん、今回はもう涙で画面がよく見えなかった。


ビデオでいいという向きもあろうが、これほど劇場の大画面で見るべき作品は希だ。シネスコ画面の魅力を堪能させてくれるという点では、『王の帰還』を凌いでいる。テレビのモニターでは、決してあの感動は得られないだろう。


だから騙されたと思って見るべし。
他の映画を見るくらいなら、ぜひこの作品を。


(2004年5月初出)

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