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06/09/2005

【映画】『シンプル・プラン』短評

非常に面白い。ストーリー自体はよくあるものだが、人間描写が実に丹念で、登場人物の取る愚かな行動にも「なるほど、自分がこの立場にいたらきっと同じことをやるだろう」といちいち納得できる(納得できてしまう自分が哀しくもある(^^;)。
特に、高い教育と常識を備え、最も「いい人」であるはずの主人公とその妻が、次第に罪の意識を失い猜疑心に駆られていく展開はあまりにも恐ろしい。

そして何と言っても素晴らしいのは、ビリー・ボブ・ソーントン。最もキレてるように見えて、実は無垢な魂と深い罪の意識を持つ、その哀しく切ない人物像こそ、この作品を堂々たる人間ドラマに押し上げた最大の要因だ。特にかつてのガールフレンド(?)に関するエピソードはあまりにも切ない。その子が一ヶ月たった後もそれなりに優しく接してくれたというのが…たまらなく哀しい。

ただ今のままでも十分に素晴らしいのだが、もっともっと素晴らしい作品になる可能性はあったと思う。2時間の映画として破綻なくまとまっているが、この物語内で提示された人間ドラマの要素は、まだまだこの程度で納まるものではない。もっと夜も寝られないほどに恐ろしく、涙で画面が見えなくなるほど切ないドラマになりえたはずだ。サム・ライミは一切のギミックを排して、本格的な人間ドラマを作ろうとしたのだろうが、結果的には抑制が利きすぎて、胸ぐらをつかむようなパワーまで失ってしまったようだ。非常に惜しい。ヴィジュアル的に魅力が感じられなかったのも、大きなマイナス点。あの一面の雪景色は、もっと切なく、もっと荒涼とした心象を映し出すことが出来たはずなのに…

とは言うものの、絶対に見て損することはない作品だ。と言うより、ぜひとも多くの人に見て欲しい作品だ。画面の雰囲気といい内容といいコーエン兄弟の『ファーゴ』を彷彿とさせるものがあるが、僕は『ファーゴ』という作品をまったく評価していない(撮影は素晴らしいけど)。「人間は哀しくて、おかしい」? 「人間の愚かさを描いた作品」? バカ言っちゃいかん。何を考えているのかさっぱりわからんエイリアンみたいな男にほとんどの殺人を犯させておいて、人間の愚かさや悲しさなど描けるものか。

「人間は哀しくて、おかしい」…そのコピーは、この『シンプル・プラン』にこそふさわしい。


(1999年9月初出/2001年1月改訂)

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