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06/12/2005

【映画】『バタフライ・エフェクト』SFとしてもラヴストーリーとしても斬新な傑作

最初は観賞予定に入っていなかったのだが、何人かの人に勧められたので見ることになった。見て大いに納得。これは人に勧めたくなるのも当然だろう。
すでに年間ベストワン級の作品が続出している大豊作の洋画界だが、こんなところにも思わぬ伏兵が隠れていた。『エレニの旅』や『海を飛ぶ夢』や『ミリオンダラー・ベイビー』を凌ぐ作品だとは言いにくいが、映画としての斬新さ、物語と登場人物の運命に対する誠実さ、そして観客を楽しませ何かを考えさせようという熱意に関しては、それらの傑作に一歩も引けを取らない。いや、少なくともストーリーの斬新さに関しては他を大きく引き離していると言ってもいい。


以下、具体的な内容にはほとんど触れない。できるだけ予備知識なしで、この奇想天外な物語を楽しんで欲しいからだ。


この映画の最も素晴らしい点は、まったく先の読めないストーリー展開だ。ここまで先が読めないジェットコースタームービーは、少なくともここ数年は記憶にないし、全観賞歴の中でもトップクラスに入るだろう。
冷静に考えると、基本となるアイディアは、誰でも知っている某ハリウッド映画とほとんど同じなのだが、どこからどう見てもあの映画とはまったくの別物になっている。アイディアそのものではなく、具体的な語り口がいかにユニークなものであるかの証明だ。

しかもその奇想天外なストーリーを映画として見せきってしまう演出が凄い。監督・脚本を手がけたエリック・ブレス&J・マッキー・グラバーのコンビは、脚本家としては『セルラー』『デッドコースター』(なるほど!)などを手がけているようだが、監督してはグラバーが2作目、ブレスに至ってはこれがデビュー作。かなりのVFXを多用しているのに、それが決してやかましくならない節度をわきまえた絵作りと、奔放な映像的アイディアの数々には感心するばかりだ。

ストーリーの奇想天外さについてだが、最初は「え? それはつまりこういうこと?」などといろいろ考えたのだが、すぐにどうでも良くなってしまった。映画内でのルールがきちんと確立されているので、それを現実に当てはめてどうこうという点があまり気にならないからだ。最初から最後まで「本当のようにしか見えない大嘘」の連続。これこそ映画というものの一つの理想ではないか。

一方で、この物語をSFとしてある程度論理的にとらえた場合、幾つもの解釈が可能な点がまた面白い。根本となるあの設定はそもそもどういうことなのか? この物語が実際に起きている事なのか、それとも全て1人の人間の脳内だけで起きている事なのか… それによってストーリーの意味も変わってくるし、映画では描かれていない物語にまで次々と連想が及んでいく。実にイマジネーションを刺激する作品だ。

アイディアだけなら『ミステリーゾーン』や『Xファイル』の1エピソードとして終わっても不思議のない話だ。それが見事な映画になっているのは、脚本と演出の圧倒的力量によるものだが、「過去に戻って何かをやり直せたら」という、どんな人間でも必ず持っているであろう願望がテーマになっている点も見逃せない。単なるアイディア一発勝負でも、奇想天外さだけでもない。人間にとっての普遍的な悲しみが物語の中心にあるからこそ、主人公がたどる荒唐無稽な運命と切ないラストが、単なる見せ物を超えた胸を打つドラマとして成立しているのだ。


表面上のSF的なアイディアだけを語っても、この作品の魅力は決して伝わらない。しかしそれ以上の事を話そうとすると、どうしてもネタバレになってしまう…宣伝はとても難しいだろうし、事実あまり大きな話題にはなっていないようだ。

だが『バタフライ・エフェクト』は間違いなく必見の映画だ。これほどユニークなストーリーとスタイルを持った作品は滅多に見られるものではない。

たとえ全面的に気に入らなかったとしても、ある人にとっては甘酸っぱいラヴストーリーとして、ある人にとっては巧妙なSFとして、またある人にとっては自分の痛い過去を思い出させる切ないドラマとして、何かしら心に残る点があるはずだ。

ともかく必見。この文章を読んだら、すぐにでも劇場に走るべし。

ブレス&グラバーの今後の動きにも要注目だ。


(2005年6月初出)

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