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06/06/2005

【映画】『スクール オブ ロック』無邪気すぎる

普段なら無視してしまうタイプの作品だが、妙に評判が良いので見ることにした。
シネコンで『パッション』と続けて見たのだが、『パッション』の終映が21:20で、『スクール オブ ロック』の開映も21:20。実際には『パッション』が終わるのは21:18頃だし、『スクール オブ ロック』の前には15分もの予告編があるから特に問題はないのだが、息つく間もなくスクリーンを移動し、まるっきり世界観の違う映画を見るのは何だかなあ…と思っていた。
ところがいざやってみると、そんなに違和感がない。確かに描かれている世界は大きく違うものの、映画としての文法自体はどちらもアメリカ映画の枠内に収まっているということだろう。

物語は、バンドを首になったばかりのロックミュージシャン デューイ(ジャック・ブラック)が、友達の代わりに名門小学校の代用教員になりすます。そこで担当クラスの生徒たちにロックの素晴らしさを教えこみ、「スクール オブ ロック」というバンドを結成。バンドバトルに参加するという話。

最初から最後までありえないことの連続。しかもそのありえない話を、映画的なウソで強引にねじ伏せるわけでもなく、ありえないことをありえないままほったらかしにして先に進んでいく。ロックの授業が校長や親になかなかばれないのはまだしも、勉強を第一に考えていた子供たちが、このおかしな先生にほとんど反発することなく、素直にロックに親しんでいくあたりは著しく説得力に欠け、ドラマが盛り上がらない大きな要因となっている。
作りから言えば、はっきり言って、非常に安直な作品である。ありえない話を説得力を持って描き出す話術は、アメリカ映画のお家芸なのだが、この作品にそのような美点を見いだすのは難しい。

また、この作品におけるロックの扱いにも納得いかないものがある。いくら使われる音楽が60〜70年代のロック中心だとは言え、今時こんな古臭いロック観はないだろう。いっそのこと設定を70年頃にしてしまえばまだ話はわかるのだが、2004年の今、「ロックとは反抗だ」とか言われてもねえ…。それに子供たちが、多少クラシックの素養があるからと言って、ロックをやらせてもすぐに様になってしまう設定は、逆にロックを馬鹿にしてないか? この作品を見ていると、ロックが非常に知能指数の低い安直な音楽に感じられてしまうのは何だかなあ…

作り手のロックに対する愛情はわかった。しかしロックの全盛期がとうの昔に過ぎ去った今、ロックに関する映画を作るなら、そこには何らかの批評精神が必要なはずだ。その点この映画はあまりにも無邪気、いや、幼稚に過ぎる。


…とは言え、それは前評判の高さを聞いて期待して見たからであり、最初からただのB級映画として暇つぶし程度の気持ちで見れば、なかなか楽しめる映画ではある。随所に使われる黄金時代のロックミュージック、台詞のそこかしこに散りばめられたロックの歌詞にもニヤリとさせられる。そして最後のバンドバトルは、映画的な工夫こそあまりないものの素直に楽しめる(主人公のアンガス・ヤング・ファッションには笑った)。無邪気すぎて溜息も出るが、ロックファン(最近は「元」をつけた方がいいような状況だが)としては、やはり嬉しくなってしまう部分も山ほどある映画だ。


(2004年5月初出)

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Comments

はじめまして。
私はこの映画、ある意味すごく楽しめましたよ。(DVDで観たんですけど)
この有り得なさ加減にツッコミ入れまくりで萌えました(笑
確かにロックファンには別の楽しみ方がありましたね^^
モランダ・コスグローブが何気によかったです。

Posted by: ぺこ | 06/11/2005 14:50

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