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05/11/2005

【映画】『真夜中まで』'Round Midnight

何はともあれ「月の砂漠」に尽きる。


ジャズ・トランペッターの守山紘二(真田広之)は、自分のクインテットを率いてジャズ・クラブ「コットン・テイル」に出演していた。12時から始まるセカンド・ステージには、守山の尊敬するジャズマンG・Pがやってくる。もし今日のステージで彼に認められれば、ニューヨーク進出も夢ではない。
最初のステージを終えた守山は、練習のため屋上に出る。ところが非常階段から下へ降りてきた守山は、二人の男がアジア人ホステスのリンダ(ミシェル・リー)をナイフで脅しているところに出喰わしてしまう。成り行きでリンダを救うことになった守山だが、殺人を目撃したことで命を狙われている彼女を、そのままにもしておけない。すべてを解決するはずの証拠を探して、彼女につき合うはめに。だが意外な敵と、大切なステージの始まる時間は刻一刻と迫っていた…


『怪盗ルビイ』『怖がる人々』を見ていないため、和田誠の監督作品を見るのは、『麻雀放浪記』以来実に16年ぶりのこととなる。昨年の東京国際映画祭でコンペに出品されながら、まったく話題にならなかった作品なので、さほど期待はしていなかった。
それでもなお「あれ?? この人ってこんなに演出ヘタだっけ?」と戸惑う部分が少なからず見られた。話はこじんまりとまとまっているし、極端に大きな欠点はないものの、細かな部分でやたらと引っかかるのだ。

例えば冒頭のカメラワーク。屋外から窓を開けてジャズクラブの中に入り、そのまま主人公の演奏を捉える、まるでヒッチコックのようにトリッキーな撮影なのだが、手持ちで撮影しているため、やたらと画面が不安定なのだ。そのため見ている方は、どうしてもカメラマンの存在を意識してしまうし、製作の舞台裏が気になって、素直に映画の世界に入り込めない。まあこれに関しては、エンドクレジットで「撮影 篠田昇」という文字を見た時、「ああ…撮影があの人じゃあ、何を言っても仕方ないか(ーー;)」と納得してしまったが(笑)。
(【注】篠田昇=岩井俊二作品や『男たちのかいた絵』『死国』などを手がけた、手持ち撮影大好きカメラマン)
他にも真田広之とミシェル・リーの乗った車の位置が妙に地面から高かったり(トラックの荷台に車を載せて撮影しているということ)、撮影の舞台裏が透けて見えるようなところがやたらに多い。あえてリアリズムを追求せず、逆に作り物めいた部分を強調することで、一つの虚構世界を作り上げるという手法もあるだろう。しかし全体的にはそのような虚構に徹しているわけでもなく、どうにも中途半端なのだ。

またストーリー的にも、大きな破綻こそないものの、守山がリンダにつき合う動機が少々弱すぎはしまいか(何度も別れようとするのだが、何かしら思うところがあってまた戻ってくる)。そのせいでどうも「命がかかっている」という切迫感が出てこないし、当然サスペンスも盛り上がらない。
この作品の一つの売りは、『真昼の決闘』などと同じく映画内の時間と現実の時間が同じだということだが、これもあまり効果を上げているとは言い難い。「いくら何でもたった1時間50分の間にこれだけのドラマが展開するはずないだろう」と、逆に時間の一致そのものを疑いたくなってくるのだ。スタッフがあちこち走り回り、すべてを綿密に計算して練り上げた作品らしいから、少なくともある場所からある場所への移動時間などに嘘はないのだろう。にも関わらずそれが嘘に見えてしまう。「嘘を描いているのに、本当に見えてしまう映画」と「本当のことを描いているのに、嘘に見えてしまう映画」…どちらが映画として正しいかは、言うまでもなかろう。


しかし…だ。見終わってみると、奇妙なことに、その「サスペンスなき逃亡劇」というあり方が、妙に心地よいのだ。つまり題材こそヒッチコック風の典型的巻き込まれ型サスペンスだが、和田の狙いは、そのようなサスペンス映画ではなく、夜の東京を一種のワンダーランドに見立てたおとぎ話のような作品を作ることにあったのではないか? そのように受け取ると、サスペンス映画としては欠点にしかならない、ほのぼの&のんびりした展開が、一転して好ましいものとなってくる。至るところに出てくる個性溢れる役者たちも、まるで遊園地のキャラクター人形のように見えてくる。


そして音楽! ジャズ! 最近またエレクトリック時代のマイルス・デイヴィスにはまっているため、このようなハードパップ・スタイルの演奏からは離れていたのだが、いやあ、やはり心地いい。一つの「型」として完成された音楽ならではの、抗しがたい魅力に溢れている。トラックのラジオからホレス・シルヴァーの「ソング・フォー・マイ・ファーザー」が流れてくるところなど、く〜〜〜っ(ToT)だ(笑)。
その他の守山紘二クインテット名義の演奏も、決して「火花散る壮絶な演奏」などというものではなく、むしろ肩の力をぐっと抜いた軽めの演奏なのだが、この作品の雰囲気にはピッタリ合っている。


そして…「月の砂漠」に尽きる。ネタバレになるので詳しく書けないのが残念だ。もっとも冒頭の10分を見れば、観客の少なくとも95%は(特にジャズに詳しい人なら)、落ちの予想が付くはずだ。その予想が裏切られることはない。まったく見え見えの落ち。にも関わらず、その見え見えの落ちがこれほどかっこよく決まるのは、一体どうしたことか…


不満は多い。しかし「月の砂漠」の最初のフレーズが流れてきた時、そしてエンド・クレジットでミシェル・リーの語り入りで「ラウンド・ミッドナイト」が再び流れてきた時…僕は全てを許した。


まさに終わりよければ全て良し、だ。


ともかく「月の砂漠」に尽きる。


(2001年8月初出)

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