« 【映画】『イン・ザ・ベッドルーム』戦慄のホームドラマ | Main | 【映画】『真夜中まで』'Round Midnight »

05/10/2005

【映画】『ゴジラ・モスラ・キングギドラ/大怪獣総攻撃』怪獣映画の金字塔

『ゴジラ・モスラ・キングギドラ/大怪獣総攻撃』。監督が平成ガメラシリーズの金子修介というのが最大のポイントだが、思わず首を傾げたくなる設定、主演が僕の苦手な新山千春、そしてすでに見た人の評判などから、当初の期待はどんどんしぼんでいき、「まあ一応見てみるか」程度の感覚で見に行った。

なるほどストーリーにはかなりの無理がある。特に後半は「そんな馬鹿な…」というご都合主義の連続。人間ドラマの部分は、やろうとしたことはわかるのだが、中途半端な部分が多くて生煮え状態。そもそも登場人物が多すぎる。新山千春をめぐる三角関係など明らかに余分だろう。もう少し登場人物を減らして、宇崎竜童、新山千春、天本英世の3人に焦点を絞っていれば、ドラマ全体が引き締まったし、「巨大生物に過ぎないはずのゴジラがなぜ死なないのか」という疑問に対する本作の回答も、もっと説得力を持ったと思うのだが…(何しろ天本英世の正体があれだし)

そのように少なからぬマイナス点はあるものの、予想よりも遙かに面白かった。前半は「意欲的な失敗作」だと思って見ていたが、思わず手に汗握ってしまう後半にいたって「傷は非常に多いが、十分評価に値する傑作」になってしまった。個人的には、全てのゴジラ・シリーズの中で第1作と並ぶ好きな作品だ。

確かに先ほど述べたようなストーリー上の不満もあって、平成ガメラシリーズに比べれば少々落ちるのは止む終えない。しかしそのようなストーリー上の弱点を補って余りあるほどの「絵」がこの作品にはある。センス・オブ・ワンダーに溢れた、実に見事な「絵」だ。

基本はガメラシリーズに通じる絵作りなのだが、それをさらに磨き上げて改良した部分があちこちに見られ、「意地でもガメラより良いものを作ってやる」という意気込みが感じられる。リアリズムを第一としたガメラに比べると、所々に大胆なデフォルメが施されているのだが、これも大きな効果を上げている。ゴジラシリーズならではのお約束(=ガメラほどにはリアリズムに徹しきれない)を逆手に取った見事な戦法だ。
また過去のゴジラシリーズに対するオマージュがあちこちに散りばめられている点も泣かせる。特に第1作のゴジラ登場シーンをそのまま借用したあのショットには思わず拍手したくなった。それらがただのパロディに陥らず、ドラマの中でちゃんと消化されている点も見事だ。主にキャスティングの面からガメラシリーズとの類似性が取りざたされているが、過去のゴジラシリーズとの類似性はそれ以上なので、必ずしも突出した印象は受けない。ウルトラマンシリーズを彷彿とさせる部分も少なからず見られるし、むしろこの手の怪獣特撮ものの集大成を狙ったと見る方が正しいのではなかろうか。

特に気に入ったのは、ゴジラが最初に光線を吐くシーンだ。マナを集めるガメラのごとく、エネルギーを自らの体に集約し、それを逃げまどう人々に吐き出すゴジラ。次の瞬間カットが変わり、生徒に避難の説明をする小学校の教室。その時目も眩むような一閃。少し遅れて重い爆発音。窓の外に見えるのは、原爆と見紛うばかりのキノコ雲…。

後の戦いではまったくキノコ雲が出てこないわけだから、これもリアリズムの観点からすればおかしいのだが、見ていて思わず鳥肌が立った。「原爆の象徴ゴジラ」というゴジラ・シリーズの基本をここまで見事に復活させたシーンが今までに一度でもあっただろうか? この瞬間僕はゴジラを本当に「怖い」と感じた。それまでは荒唐無稽な絵空事として存在したゴジラが、死と破壊を運ぶ「本物の恐怖」としてそこにあることを実感した時のショック。これぞセンス・オブ・ワンダーだ。

その後の破壊描写も「容赦ない」と言いたくなるほど非情なもの。怪獣が暴れるたびに見慣れた建物が破壊され、その中で人間が死んでいくことの恐怖と哀しみ… 怪獣同士の戦いも、ガメラ以上に凄惨を極める。小さい子供が何人も「怖い」と泣き出してしまったが、それも当然のことだろう。「ゴジラをもう一度恐怖の対象として甦らせたかった」という金子監督の目的は完全に成功している。

それほど優れた描写が満載なだけに、やはりストーリー面における無理は惜しまれるところ。論理性を重視すれば、結末も違ったものになってしかるべきだろう(英霊の怒りを鎮めるには、やはり英霊の哀しみを知る者の犠牲しかないと思うんだがなあ…)。見終わって素直に大絶賛できない点は何とももどかしい。

だが総合すれば、これは明らかにプラスの勝利である。いや、そんな足し算引き算の問題ではなく、後半僕の手に握られた汗や、「怖い」と言って泣き出した子供たちの涙が、何よりも雄弁にこの作品の存在価値を表しているではないか。


この『ゴジラ・モスラ・キングギドラ/大怪獣総攻撃』は、ガメラ三部作と共に、日本怪獣映画史上の金字塔と呼べる作品だ。


P.S.

同時上映のハム太郎効果で場内は小さいお友達がいっぱい。大きいお友達は居心地悪かった〜。そのハム太郎だが、とても大人の見る代物ではない。あれに1時間も付き合わされるのは本当に辛かった。今後見に行く方は、上映時間を調べてゴジラだけ見ることをお薦めする。そう言えばハム太郎のエンドクレジットに樋口真嗣の名を発見(確かCG監督というクレジット)。一緒にゴジラをやればいいものを。ガメラ3でよっぽど対立したんだろうなあ…


(2001年12月初出)

|

« 【映画】『イン・ザ・ベッドルーム』戦慄のホームドラマ | Main | 【映画】『真夜中まで』'Round Midnight »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 【映画】『ゴジラ・モスラ・キングギドラ/大怪獣総攻撃』怪獣映画の金字塔:

« 【映画】『イン・ザ・ベッドルーム』戦慄のホームドラマ | Main | 【映画】『真夜中まで』'Round Midnight »