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05/21/2005

【映画】『ウォーターボーイズ』まことに下品な映画ではあるが…

おそらくあちこちで絶賛の嵐が巻き起こるであろう『ウォーターボーイズ』。
だが僕はあえて苦言を呈したい。

はっきり言って、この映画は非常に「下品」である。
その下品さに引っかかって素直に楽しめないところが多々あった。

まず第一に、演出があざとすぎる。全編笑えるのだが、その笑いの演出があまりにもこれ見よがしで、かえって興醒めする部分が少なからずあった。例えば多用されるハイスピード撮影のシーンなど、いかにも「見ろ! 面白いだろう!」と強制されているようで、かえって引いてしまう。マーラーの5番は完全にすべっているし、燃えるアフロヘアもいささかやりすぎでドリフのコントのようだ。

第二に、「難問の出現」→「解決」のパターンが延々と続くのが、これまたあざとすぎる。しかも難問提起の仕方は教科書通りなのに、その解決方法が意外なほど安易なので、ドラマ的な必然性というよりも、退屈させないために無理矢理難問を作っているかのようだ。難問を解決することで主人公たちが変化/成長したりする部分が非常に少ないのも、その印象を一層強くする。矢口監督によれば「障害を引っ張ってドラマ的に盛り上げるよりも、この作品の場合、勢いで突っ走った方が面白いと思った」とのことだが、その意図は多くの部分で成功しているものの、完全な成功にはほど遠い。

第三に、あまりにもパクリが露骨。不純な動機から潰れかけの水泳部に入部した男の子たちが、何とシンクロナイズド・スイミングをやることになる。最初は「男がシンクロなんて」と恥ずかしがったり、とても不可能だと思ったりしていた彼らが、ユニークなコーチや回りの人々の励まし、そして何もかも中途半端だった自分の高校生活の穴埋めをするため、いつしかシンクロに自分の青春をかけるようになっていく…その内容を聞いただけで誰もが『シコふんじゃった。』を思い浮かべるだろう。中には『がんばっていきまっしょい』を思い浮かべる人もいるかもしれない。その予想はまったくもって正しい。また実際に見てみると、その二作にもまして『青春デンデケデケデケ』を思わせる設定が満載である。それに『フル・モンティ』も。
何よりも致命的なのは、竹中直人が例によって例のごとしのキャラを、例によって例のごとくの芸風で演じていること。これで『シコふんじゃった。』や『Shall we ダンス?』といった同傾向の先行作を思い浮かべるなと言う方が無理だろう。
もちろんパクリであっても面白ければいいし、事実この作品は面白い。だが「パクリだけど面白いからいいや」ではなく、「これって面白いけどパクリだよね」と思ってしまう部分が少なからずある。このよく似た二つのフレーズの間には、字面以上の大きな差がある。特にクライマックス直前の主人公のある行動には、思わず「わかった、もうわかったからそこまでパクルのはやめておけ」と言いたくなった。


そんなわけでこの作品はまことにもって「下品」である。別の言葉で言えば「志が低い」。なぜここまで露骨に先行作と同じことをやれるのか、なぜここまで演出と脚本があざとくあらねばならぬのか…「そんなことあるわけねえだろう!」というストーリー上の難点も含め、僕はどうしてもこの作品を手放しに誉められないし、「傑作」と祭り上げる気にもならない。


では結果的にこの作品がつまらないかと言うと…

          【素晴らしく面白い】

…のだ。実に忌々しいことに。


先述したように様々な欠点はある。だがそれを補って余りあるほどの美点が、次から次へと泉のように湧き出してくる。その大部分は先述した通り「パクリだけど面白いからいいや」というものだ。「これって面白いけどパクリだよね」と白ける部分はあるにせよ、量から言えば前者の方が遙かに多いのだ。
例によって例のごとしの竹中の芸風も、もはや山田洋次映画における渥美清のごとく「この人にこれ以外の芸を期待するあなたの方がおかしい」と言わんばかりの確信犯的なものだ。しかも内心うんざりしながら、やはり見ていて笑ってしまうのだから「はい、すいません。そんなことでケチを付けた私が悪うございました」と言う他ないではないか。

そしていかなる文句も、クライマックスのシンクロシーンで全てねじ伏せられてしまう。このシーンにしても「あんな急拵えの練習でこんな見事な演技が出来るわけないだろう」とか「○○○が変わったのに、何事もなかったかのように演技できるとはどういうことだ」等々、嘘っぱちの連続である。だがここまで楽しくて仕方ない大嘘を見せられてしまうと、本作にみなぎる躍動感が「映画など最初からただの嘘っぱち。でもそれはどんな現実よりも楽しくて賑やかな嘘っぱちなのだ」という認識に基づいたものであることを痛感させられる。
もちろんただ賑やかで楽しい光景を描いただけでは、見る者の心は踊らない。大抵の作品は、その嘘を本当のように思わせることに心血を注ぐものだが、この作品はむしろ楽しい嘘の上にさらに楽しい嘘を積み重ねることで、観客に「嘘だとわかってはいるけれど、これほど楽しい嘘なら、今は素直にそれを受け入れて楽しもう」と思わせてしまう。その力業は並大抵のものではない。


この作品は下品で志の低い映画だ。


だが最近の暗い世相を吹き飛ばすのに、これほどピッタリの映画もない。


少なくともこの1年間、終映後の場内から「すっごく面白かった」「笑った〜」という声が、これほどたくさん沸き上がった映画を、僕は他に知らない。


(2001年9月初出)

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Tracked on 06/05/2005 at 22:34

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