【映画】『ロゼッタ』短評
表面的な演出スタイルはあまり似てないのに、終始ロベール・ブレッソンの影が感じられた。内容が『少女ムシェット』に似ているせいもあるだろうが、登場人物に対する距離の取り方や、極めて冷徹なタッチでありながらその奥底に宗教的とも言える愛を感じさせる点、些細な日常行為に映画的なダイナミズムを与える上手さなど、確かに幾つかの共通項はあると思う。
全編手持ちカメラでアップ気味の画面ばかりなのだが、これが非常に効果的。外界との距離感がうまくつかめないことで、自分が世界から拒否されているかのようなロゼッタの孤独と焦燥が強く伝わってくる。演技なのか地なのかわからぬエミリー・デュケンヌの熱演も素晴らしい。内容はとても地味だが、それでもまったく退屈しないのは、見る者が彼女と同じ心理を共有し、彼女と同じ視点で世界を見ることが出来るからだろう。そのような映画作りに成功しただけでも、本作は十分賞賛に値する。
それにしてもカンヌのパルムドール作品だというのに、全然話題になっていないし、劇場も見事に空いていた。路傍にひっそりと咲いた花のような小品で、決して大向こうを唸らせるような大傑作ではないが、ある程度ヨーロッパ映画に親しんでいる人なら、きっとこの面白さをわかってくれると思うのだが…。
ところで彼女が時々お腹を押さえて苦しんだりしているのは、精神的なストレスから来る胃潰瘍or胃炎という解釈で間違いないのだろうか? 13歳の時に胃潰瘍で入院した経験を持つ自分としては、これだけでロゼッタが他人とは思えない(笑)。
それにしてもあのワッフル、旨そうだった。
(2000年4月初出/2001年1月改訂)
【注】2005年5月
この映画の監督であるダルデンヌ兄弟は、新作『ザ・チャイルド』によって2005年のカンヌ映画祭で再びパルムドールを獲得した。カンヌの最高賞獲得2回は史上5組目の快挙。この2作品の間に撮られた『息子のまなざし』も素晴らしい傑作。今度こそ、日本でもダルデンヌ兄弟に正当な評価が与えられんことを願う。


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