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05/29/2005

【映画】『テシス/次に私が殺される』サスペンスを超えた禍々しさ

どうせなら『オープン・ユア・アイズ』を見る前にこちらも見ておこうと思って、レイトショーで『テシス/次に私が殺される』を見てきた。


いや〜、いいです。これは(^^)


アレハンドロ・アメナーバル監督のデビュー作。主演は『ミツバチのささやき』の美少女アナ・トレント。ただし何も知らずに、あの愛らしい少女アナの成長した姿を期待して見に行くと、愕然とすること受け合いなので気を付けた方がいい(笑)。大人になったアナ・トレントは、少なくともあの少女時代を知る者にとっては「どうしてあの少女が成長すると、こうなるの?(^^;)」としか言いようのないお姿になっておりますので…わたしゃ何年か前に東京映画祭で上映された作品(何とヌードまであるのだが、そのヌードがまた何と言うか…)で、その姿を見ていたので、改めてショックを受けることはなかったものの…ああ、命短し恋せよ乙女(意味不明)。


内容はスナッフフィルム(この場合スナッフビデオと言うべきか?)をモチーフにしたスリラー。『スクリーム』に似通った点も多々見られるが、製作はこちらの方が先なので、『スクリーム』の方が幾つかのアイディアをぱくったのかもしれない。

スナッフフィルムというモチーフからすれば、むしろアンソニー・ウォラー監督の知られざる大傑作『ミュート・ウィットネス』が比較の対象になるだろう。ただしあの作品と比べた場合、サスペンスの切れ味/緻密なストーリー展開/主役の女の子の可愛さ(笑)/映画としての語り口の上手さ…どれを取っても残念ながら『ミュート・ウィットネス』の方に軍配が上がる。
だが『ミュート・ウィットネス』が、極めて健全なサスペンス映画として、ヒッチコック的な娯楽映画の枠を踏み越えることがなかったのに対し、この『テシス』は表面的なサスペンスの向こう側=人間の内面に存在する「暗黒」に肉薄しようという意志が感じられる。その暗黒をスクリーン上に引きずり出そうとする演出の幾つかは、決して洗練されているとは言い難いが、十分に刺激的であり、『ミュート・ウィットネス』には見られなかった「禍々しさ」で全編を彩ることに成功している。『ミュート・ウィットネス』がヒッチコックだとすれば、『テシス』はデヴィッド・リンチやクローネンバーグの世界に片足を踏み込んでいると言っていいだろう。最後は社会批評的な要素が入ってくるが、これもステレオタイプなメッセージそのものよりも、メッセージを表現する映像の何とも言えない気色悪さの方を評価すべきだ。このラストを見た後、冒頭でアナ・トレントが取っていた行動を思い出すと、さらに嫌な気分になれること間違いなしだ。

他作品との比較はともかく、言いしれぬ不安感と、皮膚にベッタリとまとわりつくような気色悪さを125分間持続させた力業は、十分称賛に値する。これだけの才能があれば、第2作で東京映画祭グランプリ獲得というのも十分うなずける。『オープン・ユア・アイズ』に対する期待が俄然高まった。


(1999年7月初出)

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» エル・ニド [saaya_holic]
アナ・トレント主演、ハイメ・デ・アルミニャン監督。 1980年スペイン(制作会社はフランス)。 紗綾でリメイクを観てみたい…。 [Read More]

Tracked on 08/16/2005 at 17:44

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