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05/02/2005

【音楽】UA 2002.8.23 池上本門寺

2002年8月23日(金) 池上本門寺


UA、約3年ぶりのソロ・ライヴである。ただしちょっと特殊なライヴで、大田区の池上本門寺で毎月開かれている「満月の十三祭り」というイベントの第五章(8月分)として行われるもの。他の月には喜納昌吉&チャンプルーズや喜多郎のライヴ、あるいは山口小夜子のパフォーマンスなどが行われたらしい(来月は薪能)。夏の夜、月の光に照らされながらお寺の境内で行われるライヴ…UAの音楽性を考えれば最高のセッティングであり、いやが上にも期待は高まる。

だが朝からずっと雨なのである。時々降り止んだりするが、しばらくするとまた降り出す。しかも気温が8月とは思えないほど寒い。長袖を羽織ってはきたが、長時間雨に濡れていたら風邪をひくこと必至の状況。天気予報では夜の方が降ると言うし、状況によってはリタイアもやむを得ずと思いながら、池上に向かった。

ところが池上の駅に降り立つと、雨がやんでいるのだ! まだ曇ではあるが、すぐには降らない雰囲気。このままもってくれることを期待しつつ本門寺へと向かう。

さて、駅から10分ほど歩いてようやく階段の下に辿り着く。そして境内の中に入ってビックリ。信じられないほど広い! 中の施設もメチャクチャでかい! あとで知ったのだが、ここは日蓮宗の総本山だそうだ。う〜む、前は比較的近くに住んでいたにも関わらず、まったく知らなかった。お寺というものは、中に入ってみると意外に広くて驚くことが多いが、それにしてもこの広さは半端ではない。日蓮聖人恐るべし…

というわけで会場へ向かう。僕の持っていたチケットはEの80番台という一番遅い方のチケットだったが、到着した時にはすでに誰でも入場できる状況。真ん中に柵があるが、前に行きたい人間はどんどん前に入って行けるので、僕は前の方へ。左右で言えばど真ん中、ステージまでは15メートルほどというほぼ理想的なポジションを難なく確保できた。雨が降らないことを祈りながら、じっと待つ。ふと気がつくと、様々な虫が賑やかに鳴いている。よし、こいつらが威勢良く鳴いている以上、しばらくの間雨は降らないだろう。


19時を過ぎた頃、UA…ではなく、本門寺の住職が登場。「イキイキ推進委員会」というおかしな主催団体の名前もあって、若い観客に妙に受ける(僕はアナウンスで聞いた時は「イケイケ推進委員会」だと思った…)。特に「UAさんが…」というたびにクスクス笑いが起きる。まあ確かに記号のような名前にさんづけをすると、ちょっと変な感じがするわな。これを機会にぜひまた本門寺に来てくださいとのことだったが、なるほどこれだけ見事な境内なら十分遊び甲斐もあるというもの。今の我が家からちょいと遠いのが難点だが、機会があればまた来たいものだ(来月の薪能も見たいが、値段高すぎ!)。


UAの登場は19時17分頃。地味目の曲を主体に、予想通りのアンニュイ路線で攻めてくる。シチュエーション的にははまりすぎの素晴らしいムード。雨が降り出す気配もなく、実にいい感じ。

バンドで一番特徴的なのは、ベースがウッドベースで、その太く重い音が全体のサウンドを完全に支配していたこと。ロックでウッドベースを使う例がないわけではないが、ここまで音のバランスが大きく、サウンド全体を支配しているのは多分初めて聞いた。言ってしまえば、UAとベースのデュエットに、その他の楽器がバックを付けているという感じ。AJICOでTOKIEの超強力なアップライトベース(あれはエレクトリックだったが)に触れて、ベースの威力に目覚めたのだろうか? ベースがアルコ奏法でUAの歌にからみつく時など、その豊かな表現力には目を見張るものがあった。

4曲目は素晴らしく幻想的なダブ・ナンバー。やはりこの手の音はライヴで、特に夜に野外で聞くとはまりすぎるほどはまる。十数年前に日比谷の野音で見たミュートビートのライヴがフラッシュバックする(今日はキーボードで朝本浩文も参加していた)。
その曲が終わった後、突然詩の朗読が始まった。一枚の木の葉の切ない願いと死を綴ったもの。誰の詩かは知らない。だがこの朗読が行われていた数分の時間と空間を一体何に例えよう。誰もが身じろぎ一つせず、UAの紡ぎ出す言葉に耳を傾ける。ステージではなく、ステージのバックにある木々に色を付けていく素晴らしい照明も相まって、観客の心はあの時まったく別の時間と空間へ運ばれていた。この日のライヴで、異界への門が最も大きく開いた瞬間だったかもしれない。

詩が「それは、水色…」という言葉で終わったので「水色」が始まるかと思ったが、残念ながらそれはなく、その後も地味シブなナンバーが続く。
中盤で最も光っていたのはAJICOの名曲「すてきなあたしの夢」。AJICOヴァージョンで彼女の歌に寄り添っていた浅井健一のギターがない分、より一層深く、冷たく、青白い光を放つ。圧巻。

だが昼間から延々と歩き続け、立ち続けていた疲れもあって、中盤を過ぎた頃に少し緊張感が緩んでくる。あまりに地味な選曲もあって、若干の退屈を感じる。
それを一挙に吹き飛ばしたのはUA最大の名曲「雲がちぎれる時」。イントロが始まった時に起こった拍手は、誰もがこの歌を待ち望んでいたことを示している。前にBLITZで見た攻撃的とも言える演奏や、ライヴ盤に収録されているエレクトリックヴァイオリンが泣き狂うヴァージョンも凄いが、比較的アコースティックなサウンドでまとめたこの日の演奏も最高だった。もはやどうアレンジを変えようが、UAが歌う限り、名曲/名演にしかなりようがない最高のナンバーだ。「この一曲が聞けただけで、すでにチケット代の元は取れた」と思った後、「そう言えば前のライヴでも、この歌を聞きながらそんなことを思ったな」と思いだし、苦笑した。
(こんな素晴らしい音楽をチケット代を基準に評価するあたりが貧乏人の悲しさ)

終盤は、ゆったりとしたグルーヴを持った曲が多くなり、リズムに乗せて静かに体を揺らせながら、心地よい時を過ごす。アンコールは2曲。終演はちょうど21時だったので、演奏時間は約1時間45分。

この間、ついに一滴も雨は降らなかった。ところが駅へ向かう途中からポツポツと降り始め、近所に住んでいる友人たちと駅近くの飲み屋で飲んで23時過ぎに店を出た時には本降り。まさしくライヴ(と、待ち時間)の間だけ雨が止んでいたのだ。偶然と言うにはあまりにも出来過ぎなシチュエーション。僕の日頃の行いがよいのか、日蓮聖人の恩恵か、はたまた夜空もUAの歌声を聞きたかったのか…


冬に行われるライヴはどうやってチケットを確保しようかと悩んでいたが、開演時にもらったチラシに、今日このチラシをもらった人のみの優先予約が当日の夜にあるという記述。飲み終わってからでは遅いかなとも思ったが、電話したら難なく確保できた。9月にニューアルバムが出るので、冬はその中のナンバーをライヴで昇華していくものになるだろう。こちらも大いに楽しみだ。


【注】(2005年4月)
5曲目に披露された「詩の朗読」というのは、実はこの時点ではまだ発表されていなかったアルバム『泥棒』の4曲目「瞬間」の前半部だった。


(2002年8月初出)

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