【映画】『スターシップ・トゥルーパーズ』狂ってるのは虫か人間か
いやあ〜、狂ってます。最高です。うれしくなっちゃいます。バーホーベンって、以前は大嫌いな監督だったのだが、何だ、やれば出来るじゃないか。と言うか、何も考えず、趣味に走らせると、ここまで行っちゃうのね。恐るべし、バーホーベン。
僕がかつてバーホーベンを嫌いだったのは、グロで陰惨なばかりで、ちょっと傾向の似ているデヴィッド・リンチのようなユーモアがなかったからだ。しかし今回は、ユーモアがないどころか全編大笑い。とにかく全編が軍事プロパガンダ・フィルムのカリカチュアになっているところがたまらない。ゴキブリを踏みつぶす子供たちと、それを見て大喜びするお母さんのCMなどはその頂点だ。腹を抱えて笑ってしまった。
ただしこれが本来の意図通り反戦映画として機能しているかどうかは、ちょっと微妙なところだ。確かに戦争の「むごたらしさ」は良く出ているが、残念ながら戦争の「恐怖」までは描けていなかったし、なおかつシューティング・ゲーム的な爽快感にも満ちているからだ。第一脳味噌まき散らして死ぬのは、名も知れぬ兵隊ばかりで、主人公たちはみんな明るい顔して生き残ってるしなあ(笑)。カルメンのパートナーは元々嫌な奴なので、あいつが脳味噌吸われて死んでも「ざまあみろ」としか思わない。ディジーが死ぬのは可哀相だが、主人公は戦争の残酷さに思いをはせるどころか、しっかりカルメンとよりを戻してるんだから何というか…
もちろんバーホーベンの企画意図が、逆説的な反戦映画にあったことは疑いない。ところがアクション/スペクタクル映画として面白く作りすぎてしまったために、「戦争ってこんなにエキサイティングなんだ〜」という感想も抱かせる結果になってしまっている。「知性的には反戦映画でも、感性的には好戦映画」という非常に微妙なポジションにある映画だ。でも個人的には大好き。
(1998年5月初出/2001年1月改訂)
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