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04/20/2005

【映画】追悼 深作欣二

深作欣二監督が、前立腺癌のために2003年1月12日午前1時20分にこの世を去った。

『バトル・ロワイアルII』の撮影をわずか数日分行っただけで入院し、そのまま帰らぬ人となったので、深作欣二監督作品としては『バトル・ロワイアル』が遺作ということになる。しかし『バトルロワイアルII』は、それが遺作となることを自覚した深作監督が、自らの総決算として製作を進めていた作品。もはや映画の出来がどうのこうのというレヴェルではなく、深作欣二という日本映画界屈指の巨匠の遺言状としてこちらも襟を正して待っていただけに、とても残念だ。死ぬのは仕方ない。だがせめてこの作品の完成まで、それがダメならせめてクランクアップまで保って欲しかった…深作監督もこれではきっと死にきれないことだろう。
せめて息子さんをはじめ、残されたスタッフ・キャストが力を合わせ、深作欣二が監督した場合よりも凄い映画を作り上げて欲しい。百万語の追悼文よりも、それが最大の手向けとなることだろう。何も出来ることはないかもしれないが、一観客として、それを応援していきたい。


こんな文章を書いてはいるものの、実を言うと僕が深作欣二という監督の魅力に目覚めたのはかなり最近のことだ。しかしそれは仕方あるまい。今フィルモグラフィを眺めてみて、僕は最悪のタイミングで彼の作品と出会っていたことが、あらためてわかったからだ。

最初の出会いは1978年の『柳生一族の陰謀』。劇場で見た時代劇と言えば黒澤明くらいしかなかった中学生にとっては、何だか作り物くさいばかりで黒澤のような風格がないのがイマイチに感じられた。黒澤時代劇と東映の時代劇を同じ視点から見てどうこう言うのは、ジョン・コルトレーンとヴァン・ヘイレン(?)を比べてどうこう言うのにも似ているが、まだ駆け出しの映画少年に、そこまでの広い視点はなかったのだ。
そして次の出会いが同じ年の『宇宙からのメッセージ』! 出来れば見なかったことにしたい(笑)この作品によって、深作欣二という名は、僕にとって忌むべき存在として決定づけられてしまったのです。
その次が1980年の『復活の日』。全体的にはまあまあの作品として評価できるが、何しろ僕は当時小松左京の原作にとてつもなく深い思い入れを持っていた。思いこんだら命がけ、聖なる作品を汚す奴は許さん!と熱き血潮に燃える少年にとって、原作にあった深い思想性と壮大なスケールを、通俗的な娯楽映画の枠内にスケールダウンした映画版は、これまた十分に忌むべき存在だった。前の『宇宙からのメッセージ』と合わせて「このクソ監督の体内にSFの血は一滴も流れていない!」と憤ったものだ。まあ、フィルモグラフィを眺めても、純粋にSFと呼べるのはこの2作だけなので、この感想自体は決して間違いではなかったりするのだが…

そんな最低の評価を大きく覆してくれたのが1983年に見た『蒲田行進曲』。前年のロードショーは当然のごとくパスしていたのだが、その年のキネ旬ベストワンに選ばれたことで「あれ?」と思い、今は亡き二子玉川園の名画座二子東急で見て、大いに感動した。ここでようやく「前のSF2本は深作欣二の本分ではなかったのだ、こういう普通のドラマを撮っていれば力のある人なんだ」とわかったわけだ。

しかし半分SFのごとき時代劇『里見八犬伝』はあまり見るところのない凡作で、やはりこの人にはSFやファンタジーは撮れないのだということを再確認しただけ。『蒲田行進曲』と同傾向の『上海バンスキング』は評判が悪すぎたので未見。評判の良かった『家宅の人』も内容に興味がなかったので未見…という具合で、70年代80年代を通じて、深作欣二という人は、僕の中で「『蒲田行進曲』以外はどうでもいい人」とみなされてきた。ヤクザ映画にはまだ偏見があったので、名画座でそれらの作品が上映されていても見ることはなかった。

そして1990年代。92年に『いつかギラギラする日』、94年に『忠臣蔵外伝 四谷怪談』という佳作2本、そして98年には『おもちゃ』という、深作のイメージからはいささかかけ離れた、しかし紛れもない傑作が作られた。フィルモグラフィを眺めていくと、『いつかギラギラする日』から『バトル・ロワイアル』へと至る最後の10年間は、実り多き第二か第三の黄金期だったことがわかる。

しかし僕が深作欣二を本当に凄い監督だと思うようになったのは、90年代も後半に入って、ようやく『仁義なき戦い』シリーズを見たときだ。
その後昔のヤクザ映画や、大傑作『軍旗はためく下に』などを見て、この人の表現のコアに触れたとき、自分が深作欣二という男といかに不幸な出会いを繰り返してきたか悟ったものだ。『柳生一族の陰謀』からすでに20年以上の月日が流れていた。

しかし…ずいぶん遠回りはしたものの、最後の実り多き10年間には何とかリアルタイムで接することができた…今はそのことに感謝するばかりだ。

遺作となった『バトル・ロワイアル』。戦いを通して人間の生と死を描き続けてきた深作欣二の一つの到達点であり、『仁義なき戦い』シリーズの現代的リメイクと見ることも出来る作品。監督の思いがより純粋に表出されるはずだったのは、未完の『II』であったとしても、これはこれで遺作として何ら恥じるところのない見事な傑作だ。


最後に、監督の作品で僕のお気に入りベスト5を(製作年代順)。

『軍旗はためく下に』
『仁義なき戦い』
『仁義なき戦い 代理戦争』
『蒲田行進曲』
『バトル・ロワイアル』


なお深作欣二および東映ヤクザ映画の最高傑作という評価が高い『仁義の墓場』はまだ見ていない。いささか不謹慎だが、近々行われるであろう追悼上映で見られるのを楽しみにしている。


非常に遅れてきた、決して良いファンとは言えないかもしれない自分だが、深作欣二監督の冥福を心から祈りたい。

監督、お疲れさまでした。


(2003年1月初出/2005年4月改訂)

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