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04/13/2005

【映画】『インファナル・アフェアII 無間序曲』前作を凌ぐ大傑作

前作『インファナル・アフェア』は、香港映画とは思えぬほど緻密な劇構造を持った傑作だった。本作『インファナル・アフェアII 無間序曲』はその続編…と言っても主人公2人の若き日を描く前日譚になっている。続く第3作は「第2作と第1作の間の物語+第1作のその後」が描かれるらしい。時系列で言えば「2→3の大部分→1→3の終盤」という構成だ。

「前日譚」という企画はこれまでにも幾つかあったが、まず前作を超えた試しがない。せいぜい前日譚と前作のその後の複合技で攻めてきた『ゴッドファーザーPartII』が、ほぼ同レベルの作品になっていた程度だ。しかも主役2人を年齢的に若返らせるのは無理と言うことで、トニー・レオン+アンディ・ラウという二大スターは出演せず、代わりにメインに立つのは、前作で2人の若かりし頃をやった若手俳優2人と、アンソニー・ウォン+エリック・ツァンという中年オヤジコンビだ。

どう考えてもこれで面白くなるはずがない。妙に良い評判が聞こえてきたので一応見ることにしたが、はっきり言ってほとんど期待していなかった。


だが度肝を抜かれるとは、このことだ。


そこに現れたのは、前作を超える鳥肌の立つような傑作だったからだ。


「こんな条件下での製作で面白くなるはずがない」と、深く考えずに決めつけていた自分を恥じた。いつから自分は、こんな惰性思考に染まりきってしまったのだろう。この作品を作り上げたスタッフの前に、僕は無条件に頭を垂れ、ただただ赤面するしかない。


本作は、主人公ヤンとラウの若き日を描く…ということになっているが、実はそんな単純なものではない。と言うより、この2人の物語は全体から見ればかなり比重は軽い。一応前作は2人がメインだったから…ということで、仕方なくある程度の比重を裂いているような印象さえある。
では何が中心になるかと言うと、若かりし(と言ってもルックスは前作とほとんど同じ。前作より老けてないだけ良しとするか)ウォン(アンソニー・ウォン)とサム(エリック・ツァン)の複雑な友情、それにもまして本作だけに登場する黒社会の大物ハウの物語だ。しかしそれらもあくまでも「中心」に位置する物語であって、全体の構図は、前作など比べものにならないほど複雑で、壮大と言っていいスケールを誇っている。様々な登場人物が登場し、しかもそれぞれにドラマを感じさせるあたり、『仁義なき戦い』を彷彿とさせる。

だが本作がここまでの傑作になったのは、その中心に位置する物語が人間ドラマとして、驚くほど深いレベルに達していたからに他ならない。

ウォンとサムの友情が泣ける。この2人がやがてあのような形で明確に敵対していくことを思うと切なすぎる。特に前作では、「キャラが立ちまくった個性的な悪役」と言う以上の意味はなかったサムに、まさかあんなドラマがあったとは…

だが、それすらも凌ぐ本作の最大のポイントは、黒社会の大物ハウ(フランシス・ン)である。彼が本作の実質的主役であることは、アンソニー・ウォンでもエリック・ツァンでもなく、フランシス・ンが香港電映金像奨の主演男優賞にノミネートされていることでも分かるだろう。まるでシェイクスピア悲劇の登場人物のごときハウという人物像を描ききったことこそ、本作の最高に素晴らしい点なのだ。
もっともこのハウという人物像に対して「『ゴッドファーザー』シリーズのマイケル・コルレオーネそのまんまじゃないか」という批判が出ることは確実だろう。と言うより、この作品全体が『ゴッドファーザー』I&IIの換骨奪胎と言っていいエピソードに満ちている。
しかしそれは実に見事な「換骨奪胎」であり、「物真似」というレベルを遙かに超えている。何よりも本家の『ゴッドファーザー』を超えてしまっている。そのような創造性溢れる作劇行為に対してパクリだ何だと批判するなど、馬鹿げた話だ。
この役を演じたフランシス・ンという俳優が、圧倒的に素晴らしい。息を呑むほど素晴らしい。彼が出てきただけで、画面から一瞬たりとも目が離せなくなる。怒り、悲しみ、残酷さ、愛情、疲れ、後悔…彼が指先を動かすだけ、言葉を一つ発するだけで、人間の持つ様々な感情が画面から迸る。この演技は、『ゴッドファーザー』シリーズのアル・パチーノを遙かに超えるものだと断言しよう。見終わった後、この無間道サーガの果てしない悲劇は、マクベスとハムレットを合わせたような巨人、ハウの呪詛に端を発するのではないかという思いから逃れられない。


口を極めて絶賛している本作だが、欠点がないわけではない。どう考えても「それ、ちょっと話の展開に無理がないか?」という部分はあるし、前作との整合性に多少のほころびも見られる(オーディオの話など、唸るしかないような部分もある。と言うより、その方が多い)。すでに述べたように、若きヤンとラウのエピソードは、中心となるハウおよびウォン&サムのエピソードに比べると求心力が弱い。特にヤンの葛藤は、うまく描けているとは言い難い。

しかしそのような欠点をすべて合わせても、この壮大なる悲劇に決定的な瑕をつけることは不可能だ。


前作では、頭では理解出来るものの、今ひとつピンと来なかった(ちっょと大げさじゃないかと思った)『無間道』というタイトルは、本作において悲痛なまでに納得出来るものとなった。前作は心が震える映画だったが、本作は魂が震える映画だ。


今年も様々な続編が公開された。
中でも『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』は素晴らしかった。
『スパイダーマン2』も実に見事な作品だった。

だが本年度の「続編大賞」は、この『インファナル・アフェア 無間序曲』を置いて他にない。


もし前作を見ていない人がいたら、DVDで前作を見てからの方がいいだろう。その順番で作られたものだから。だが話としては、この第2作の方が先なので、本作を見てから前作を…という順番でも、さほど問題はないと思う。


いずれにせよ、この傑作を絶対に見逃してはならない。


(2004年9月初出)

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