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04/11/2005

【音楽】fra-foa 2002.6.12 ON AIR WEST

2002年6月12日(水) ON AIR WEST


これで4回目になるfra-foaのライヴレポート。


今回の会場は渋谷のON AIR WEST。ON AIR EASTには何回も行ったことがあるが、WESTには初めて入った。こちらの方が新しくできたので中も綺麗だろうと思ったら、むしろEASTよりも汚いくらいで、しかも確実に狭い。まあ本来ライヴハウスなんてのはこんなものなんだけどね。でもコインロッカーが薄暗い2階にあるのは何だかいやだな。

今日の注目点は2つ。1つは、レコーディング中(もうほとんど完成したらしい)のニューアルバムから、どんな新曲をやってくれるかであり、もう1つはゲストバンドがどんな連中なのかだ。
今回は2日間の公演だったが、昨日のゲストは何とNUMBER GIRLだったのだ! これはかなり驚異的なことだ。そもそも一般的な知名度から言えば、fra-foaよりも、ニューアルバム『HEAVY METALLIC』を出したばかりのNUMBER GIRLの方が上だろう(まあ、どちらにせよ「知る人ぞ知る」バンドで、一般的な知名度は低いのだが)。そのNUMBER GIRLが何故fra-foaのゲスト=前座? ともあれNUMBER GIRLがあの奇怪なサウンドをライヴでどう再現するのか大いに興味があったのだが、あいにく今日のゲストは別のバンドだ。しかしNUMBER GIRLと同レベルでゲスト出演するのだから、それなりのバンドであるに違いない。調べてみると、インディーズ界では前からかなりの話題になっているバンドで、この7月にはメジャーデビューも果たすらしい。一体どんなサウンドが飛び出すのか興味津々だ。


さて、そのバンド「54-71」が登場したのは19時5分を過ぎた頃。まずヴォーカルの異様な雰囲気にゾッとする。ほとんど坊主に近い頭に、何を考えているのかわからないハチュウ類のような目つき。まるで映画『追悼のざわめき』の主人公のようだ。はっきり言って気持ち悪い。他のメンバーもそうだが、暴力的な怖さではなく、何を考えているのかわからない不気味な怖さが漂っている。街で会ってもあまり近づきたくないタイプだ。まったく何の脈絡もなく、いきなり硫酸でもかけられそう。

だが最初の一音が出た瞬間、思わず背筋がゾクリとした。このバンドが音楽的にも半端でない存在感を持っていることが、一瞬にしてわかったのだ。
その音楽はとにかく個性的で、ねばるようなファンク調のサウンドに、すべて英語詞のラップ風ヴォーカルが乗っかる。そう書くと、たとえばレット・ホット・チリ・ペッパーズみたいなものかと思われそうだし、確かに部分的にはそう聞こえるところもあるのだが、全体的な印象はレッチリやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンなどとはまったく違う。そういった連中のファンクがJBのような熱血系だとすれば、こちらはスライ&ザ・ファミリー・ストーンの『暴動』のようなダウナー系。そこに80年代ニューウェウェーブのフレイヴァーをまぶしたようなサウンドだ。時には荒々しい音も出すが、決して熱くはならない。むしろノイジーな音が荒れ狂うほどに、心が凍りついていく。全体的な印象として一番近い音を上げれば、『メタル・ボックス』〜『フラワーズ・オブ・ロマンス』の頃のパブリック・イメージ・リミテッド…と言えば、わかる人間には一瞬にしてわかるだろう。雰囲気という点ではザ・キュアーに近い感じもするが。

とりわけ異様な存在感を発揮するのは、モリッシーのようなタコ踊りをしながら、メロディがないようでいてある、純粋なラップとも言えぬ奇妙な歌を吐き出すヴォーカルだ>その気色悪さに、ますます背筋が寒くなるが、パフォーマーとしての存在感は圧倒的だ。巧いのか巧くないのかよくわからぬギター/ベース/ドラムスの3人も、一度聞いたら忘れられない、クールでありながらネバネバした異様なサウンドを作り出している。

40分ほどの演奏時間だったが、何やらどっと疲れた。これだけ個性的なサウンドを生で聞いたのは久し振りのことだったので、すっかりあてられたようだ。

しかし疑問もある。まずこんな音楽性で1時間半のワンマンライヴが行えるのだろうか。途中でうんざりするか、飽きるかのどちらかではなかろうか。そして全体に漂う「いかにもインディーズ」な雰囲気はいかがなものか。こういう匂いを発するバンドは80年代にロフトなどに足を運んでいた頃、幾つも見たことがある。その中にはボアダムズのように、自分たちの個性を崩さぬまま巨大な存在になっていった希有なバンドもあるが、ほとんどはアンダーグラウンドな存在のまま消えていった。もちろんメジャーになってヒットを飛ばせばそれでいいというものでもないが、個人的には、この歳になって今更あの世界に舞い戻りたくないというのも正直なところだ。

しかしこの54-71が、突出した個性を持ったバンドであることだけは疑いない。7月発売のアルバムも多分買うことになるだろう。全面的に肯定する気にはなれないが、多分今後目を離せない存在となりそうだ。


その後20分ほどのブレイクを挟み、20時5分頃からfra-foaの演奏が始まった。

新曲のお披露目ライヴになるだろうとは思っていたが、最初から5曲ぶっ通しで新曲。ここまで徹底してやるとはちょいと驚いた。
その5曲は、基本的には「煌め逝くもの」の延長線上にあるもの。ただし今までライヴでも聞いたことのない、スタジオで作られたばかりの新曲だけあって、まだ練り込まれていない印象が強く、メリハリに欠ける感じだ。これらの曲が今後ライヴで鍛えられることで表情豊かな音に成長していくのか、それ以前にCDではどんな仕上がりになっているのか…一抹の不安を感じないでもない。
そして6曲目は、今のfra-foaを象徴する「煌め逝くもの」。最初CDで聞いた時はピンと来なかったものだが、何度も聞き込んでいく内に新しい方向性がはっきりわかってきたし、ライヴではCDよりもさらに豊かな感動を与えてくれる。速射砲のように続く歌詞を、適当に流したりせず一語一語噛み締めるように歌うちさ子の誠実なヴォーカルが素晴らしい。
その後はファーストからお馴染みのナンバー「プラスチックルームと雨の庭」「夜と朝のすきまに」が続く。だがいつもと歌の表情が微妙に違う。いつもなら明日などないかのように生命のすべてをぶつけてくるちさ子が、今日は明らかに自分を抑えている。単に調子が悪いとか気が乗らないとかではなく、「自分」を爆発させることを明らかに抑えている。一体どうしたのだろう。

この後ギターの高橋によるMC。アルバムがほぼ完成したこと、今まで以上に大規模な全国ツアーに出かけることなどが語られる。ちさ子は一言も発しない。明らかにいつもと雰囲気が違う。

次に始まったのは、もっとも乗りのいいナンバー「澄み渡る空、その向こうに僕が見たもの。」。だがここでも違和感はつのる。何かがいつもと違う。ちさ子のヴォーカルはむしろいつも以上に安定しているのだが、やはりあの青白い炎が見えない。これは一体どうしたことなのか。

だがその次にやった新曲は凄かった。系統としては「青白い月」や「君は笑う、静かに眠る。」などの系譜に属するドラマチックなナンバーだが、その壮大さは今までで最高かもしれない。終盤の荒々しくフリーキーな演奏は、久々にロックらしい気骨を感じさせてくれた。この時ようやくいつものfra-foaらしい青白い炎がステージに燃え上がるのを見ることができた。

そしてこの辺りでようやく今日の違和感が理解できた。おそらく今のちさ子は、これらの新曲を自分の歌として表現する術を模索しているところなのだ。古い曲では今の彼女に火を点けることは出来ないし、かと言って新曲ではまだ十分に自分自身を表現できないという中途半端なところにいるのだろう。ちさ子とfra-foaは、今繭の中で羽化している真っ最中なのだ。

本編ラストは「月と砂漠」。前の新曲に引きずられたのか、これはかなり良い出来だった。

アンコール1曲目は、セカンド発売前に先行シングルとして出される「消えない夜に」。これもかなり良い曲だが、ライヴで鍛えていけばさらに良くなることだろう。

そしてラストは名曲中の名曲「小さなひかり。」。幾分メロディーを変えたりしていたが、何をどうしようが揺るぎようのない名曲であることを再確認した。「青白い月」が演奏者の個性や存在感と不可分の名曲であるのに対し、「小さなひかり。」はより普遍的な「歌」そのものの美しさを持っている。ビートルズの「イン・マイ・ライフ」、ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」、カーティス・メイフィールドの「ピープル・ゲット・レディ」などと同様、演奏者の個性すら凌駕する「歌」そのものの圧倒的な美しさ… 子供の頃に嗅いだあの夏の香りを、これ以上に思い出させてくれる歌は、僕は他に知らない。


今日のライヴは、繭の中で羽化しようともがくfra-foaの姿をそのまま見せたものであり、単独のライヴとしてみれば、今までで一番出来の悪いものだった。ちさ子はついに最後まで一言も話をしなかったし、「青白い月」や「daisy-chainsow」も演奏されなかった。もしこのライヴで初めてfra-foaに接した人がいたとしても、彼らの本当の凄さは理解できなかったことだろう。

だが僕のように、それなりのシンパシーを持って彼らの動向に注目してきた人間にとっては、ある意味非常に興味深いライヴだった。特に「青白い月」をやらなかったことには、それなりの感慨が湧いてくる。あの魂を削りながら歌っているとしか思えぬ「青白い月」を、延々とライヴでやっていくなど自殺行為にも等しい。そのあまりの痛々しさ故に、僕を含め多くの人間が彼らの音楽に魅了されているのも確かだが、だからと言ってライヴのたびにあの歌を求めるのは、あまりにも残酷だ。「小さなひかり。」は30年後にも歌われるべき歌だが、「青白い月」は少しずつ封印されていくべき歌なのだ。今、そのステップが始まったのかもしれないと思うと、安堵と寂しさの両方で胸が締め付けられる。

ともあれfra-foaは確実に新しい道を歩み出した。


8月21日、シングル「消えない夜に」発売。

9月19日、セカンドアルバム発売。

そして10月5日、彼らは再び東京(赤坂BLITZ)に帰ってくる。


今羽化の最中にあるfra-foaが、その時どんな姿になっているか…もちろんこの目で確かめに行くつもりだ。

(2002年6月初出)

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