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04/09/2005

【音楽】fra-foa 2001.9.23 SHIBUYA-AX

2001年9月23日(日) 「瞬間の永遠」 SHIBUYA-AX


金曜日に見るはずだったブライアン・ウィルソンのライヴはNYテロの影響で延期になってしまったが、fra-foaの方は無事に開催された(当たり前か)。まるで11月のような冷え冷えとした空気。澄みきった秋の空。MCでギターの高橋が「自分たちがライヴをやる日でこんなにいい天気になったのはなったのは何年ぶりだろう」と言っていた。
この哀しいほどに澄みわたった空は、fra-foaの痛々しくも純粋な音楽によく似合っている。

前回のクラブクアトロからスケールアップして、今回はSHIBUYA-AX。何人入っているのか正確にはわからないが、1000人は下らないだろう。クアトロの倍以上あるスペースが見事に満杯になっていのには驚かされる。客層も前回よりバラエティに富んでおり、女性の比率がかなり高まっているようだ。僕の知らないところで、雑誌などに露出しているのだろうか?


17時の開場から延々と待たされて、ようやく演奏が始まったのは18時20分。1曲目は前回と同じく「真昼の秘密」だ。音のバカでかさにまず圧倒される。バンドの演奏は相変わらず達者で危なげない。問題は三上ちさ子のヴォーカルだが、これが前回よりもぐっと逞しくなっている。ツアーをこなし、フェスティバルに参加して大観衆の前で演奏したりしたことで、一種の余裕がついたのだろう。
2曲目、3曲目は新曲。2曲目は前回のライヴで「3日前に出来たばかりの曲」ということでカンニングペーパー見ながら歌った曲だ(笑)。前よりもボトムが低くなった感じで、前回はヤードバーズのように感じたが、今回はまるでパール・ジャムのように聞こえる。
3曲目もアップテンポのナンバー。この辺の曲を聴く限り、次のアルバムは、グランジロックに止まらない、かなりバラエティに富んだ内容になりそうだ。4曲目は前回聴けなかった甘酸っぱいスローナンバー「ひぐらし」。このようなスローナンバーでも、ちさ子のヴォーカルは、以前にはなかった伸びやかな表情を見せる。

中盤の聞き物は、何と言っても「リリィ」という新曲。どこかジャズの匂いが感じられるサウンド、およそロック的ではない不可思議な歌メロ、そしてある種の童謡に通じる切なさを感じさせる歌詞…こうやって新曲を聴く度に、fra-foaというバンドが持つ懐の深さに感心してしまう。

後半はアルバム『宙の淵』からの曲が続く。素晴らしかったのは「澄み渡る空、その向こうに君が見たもの。」前回はちさ子の声が出ずヘロヘロだったこの曲が、今回はアルバム以上の素晴らしい高揚感を醸しだし、観客を興奮の渦に巻き込む。ただ前から思っているのだが、この曲だけはキーボードを入れるとさらに素晴らしくなるのではなかろうか? 
それに続く「君は笑う、そして静かに眠る。」では、またもちさ子の声が出なくなり、語りになってしまう部分があったが、これはもうご愛敬ということで許そう(甘い?)。

「月と砂漠」の混沌としたノイズに包まれて本編は終了。と言うことは、アンコールはもしや…と思ったら、まさにその通り。「青白い月」「小さなひかり。」の2連発。これはまるでニール・ヤングがアンコールで「ライク・ア・ハリケーン」と「ヘイ・ヘイ、マイ・マイ」をぶっ続けでやるようなもの。ほとんど反則スレスレの大技だ。1曲ずつでも名曲だが、これらが2曲連続した時の感動は、1+1を遙かに凌ぐ強力なものとなる。
この日の「青白い月」は本当に凄まじかった。これはもう音楽的な感動などというものではない。目の前で一人の人間がその一曲のために魂を削り取っている、そうやって魂を削ってでもこの歌を歌おうとしている…その気迫にただただ圧倒される。ちさ子はこの歌を一回歌うたびに、寿命を百日ずつ縮めているに違いない。命を削ることなくして、どうしてあそこまで魂を震わせる絶唱が出来るというのか。
幼い日に体験した兄の死、そして残された者の哀しみと癒しを歌った「青白い月」…それに続くのは、fra-foaのナンバーの中でも最も優しさと希望に溢れた名曲「小さなひかり。」。
ライヴ後半のMCでちさ子はこう言った。「もし今飛行機がここに突っ込んできて、みんな死んでしまったとしても悔いが残らないような…そんな時間を過ごして欲しい」。他の人間が言えば鼻持ちならない嫌みとなりかねない言葉だが、自らの歌の中で真剣に「生と死」に向き合ってきたちさ子がその言葉を口にすると、切実なリアリティを帯びてくる。少なくとも今のちさ子は、ステージで死んでもいいと思っているに違いない。あれはそう思っていない人間に出来るようなライヴではない。


終了は19時40分。アンコール込みでちょうど1時間20分だ。前回が1時間40分だったから、少し短くなっているが、その分まったくだれるところもなく完全燃焼した内容だった。

全編を通して最も印象的だったのは、ちさ子のヴォーカルがぐっと安定感を増し、高音がとても伸びやかに出ていたこと。どうしても上手く声が出ないところでは、メロディをフェイクしているのだが、面白いことにこのフェイクしたメロディが、時としてオリジナルよりも良くなっていたりする。3曲演奏された新曲も歌メロが妙に難しいものが多かったが、それを紙一重のところで歌いきっていた。今のちさ子は、自分の表現したい歌と、自分の声で表現できる歌の間で葛藤し、その葛藤の中から今までにないユニークな歌を発見しつつあるのかもしれない。

音楽的にはどんどん洗練され、上手くなっていくfra-foa。その器の中で三上ちさ子がどのような表現を行っていくのか、当分の間目が離せそうにない。

次の単独ライヴは2002年の2月2日、赤坂BLITZだ。


セットリスト(2001年9月23日/SHIBUYA-AX)

 1.真昼の秘密
 2.flow(新曲) 
 3.光る哀しみと、朝の空(新曲)
 4.夜と朝の隙間に
 5.ひぐらし
 6.リリィ(新曲)
 7.プラスチックルームと雨の庭
 8.澄み渡る空、その向こうに君が見たもの。
 9.君は笑う、そして静かに眠る。
10.三日月の孤独
11.月と砂漠
(アンコール)
12.青白い月
13.小さなひかり。


(2001年9月初出/2005年4月改訂)

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