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04/18/2005

【映画】『フープ・ドリームス』 ドラマよりもドラマチック

バスケットボールの選手として活躍する二人の少年、およびその周囲の人たちを、約4年間にわたって追い続けたドキュメンタリー。全米映画批評家協会賞、サンダンス映画祭観客賞、ロサンジェルス批評家協会賞などを総なめにし(大本命とみなされていたオスカーだけはなぜか逃した)、プレミア誌では『パルプ・フィクション』や『フォレスト・ガンプ』を押さえて、年間ベストワン作品に選ばれたそうだ。


ドキュメンタリーと聞いて「地味で疲れそう」などと思ったらとんでもない! これが本当にエキサイティングな映画になっているなのだ。同じバスケットの名門高校に入った二人の少年が、やがてまったく違う道を歩みながら、それぞれの挫折と喜びを経験していく様は、宣伝コピー通り「どんなドラマよりもドラマチック」だ。

第一これはドキュメンタリーではあるものの、明らかに「事実を再構成して作られたドラマ」だ。編集にもはっきりとした演出意図が見える。その虚実を推し量っていくのも一興だ。しかしこの作品が仮に事実の一断面を拡大解釈したものだったとしても、そこに「人間的真実」とでも言うべき何かが宿っていることは間違いない。

一言で言えば、この作品には「人間」というものが描きこまれている。特に声高なメッセージがあるわけではない。しかし僕自身とはまったく違う環境に生きる彼らの人生に、これだけ一喜一憂できるのは、そこに普遍的な人間性が描かれているからに他ならない。ドキュメンタリーとしてただカメラを回せば、そこに人生が映るわけというものではない。監督の確かな視点が、この膨大な記録映像の中から、人生を描きだしたのだ。

映画的なテクニックの確かさも特筆に値する。169分もあるこのドキュメンタリーを見て全く退屈しないのは、編集に極めて優れたリズム感があるからだ。特にバスケットの試合のシーンは、仰角を多用したカメラアングルも含めて、まことに素晴らしい。
念のために言っておくが、僕はバスケット・ボールには何の関心もない。その僕が思わず手に汗握り、肝心なところでシュートが外れると思わず「ア〜ッ!」と声を出してしまったのだ。どれほど映画的に優れているか、その一事からもわかることだろう。もちろんバスケットが好きな人が見ればさらに楽しめるに違いない。


一つだけ欠点を言うなら、もともとテレビ用に作られた作品のためか、全編がビデオからのテレシネで、映像そのものはお世辞にもきれいとは言えないこと。それゆえの独特な生々しさはあるが、16ミリフィルムで撮られていたら、もっと良かったのに…と思わずにはいられないが、その程度の欠点を補って余りある魅力に満ちている。

金を払って劇場でドキュメンタリーを見ることに抵抗がある人もいるようだが、このような傑作にそんな形式など関係ない。もし「真に優れた映画」「人間の真実のドラマ」を見たいと思うなら、ぜひ劇場に足を運ぶべきだろう。ヒップホップ系の音楽も最高。


(1997年6月初出/2001年1月改訂)

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