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04/24/2005

【演劇】演劇集団 円『東風』2005.4.22

演劇集団 円『東風』(ステージ円)


2004年4月22日(金) 19:00〜


グリングの主催者 青木豪が、演劇集団 円に作・演出で招かれた作品。3本続く「次世代の作家シリーズ」の2本目。
それにしても青木豪が、かつて円の研究生だったとは知らなかった。プログラムの中で、円と自分との関わりについて、痛々しくも興味深い文章を書いている。また同じプログラムの中で鈴木裕美が、青木豪とチェーホフの共通点を指摘しているが、彼の芝居にチェーホフの影を見るのは、やはり僕だけではなかったのだと納得。

場所は田原町のステージ円。田原町に来るのは多分初めてだが、昴がある千石のような、ちょっとうら寂しいイメージを抱いてきたのに、地下鉄から地上に出てみるとビルが建ち並ぶ大都会でビックリ。浅草の隣だから当然なのかもしれないが、雰囲気的には浅草というより八重洲あたりを思わせる街だ。
ステージ円もビルの5Fにあって、予想より遙かに広い。居酒屋のセットは非常にリアルで、細部まで丁寧に作り込まれている。もっと狭苦しい場所でのアトリエ公演を想像していたので、最初から驚くことばかりだ。円って金があるんだな〜。それともこちらが、金のかかっていない小劇場芝居に毒されすぎなのか?

開演前に延々と流れているBGMはサム・クック。青木の趣味だろうか? 「キューピッド」がかかると、つい鼻歌を歌い出しそうで怖い。


20年前に火山の噴火があった島の民宿が舞台。いつも通りワンセットの一幕もの。民宿の娘で30代半ばの聡子(高橋理恵子)が、ボランティア先の施設で知り合った年下の佑人(佐藤銀平)と結婚することになり、それを親に打ち明ける話を中心に、二人の母親の過去の因縁などが描かれていく。話の核となるのは若い二人だが、実質的な主役は、むしろ聡子の義理の母親 文恵(井出みな子)と佑人の母親 律子(立石涼子)だろう。

一言で言えば、いかにも青木豪らしい作品。まだこの作品で3本目なのに、そんな言い方をするのもどうかと思うが、舞台設定、物語の展開、キャラクター造形、テーマなど、あらゆる面で『旧歌』『ストリップ』との強いつながりを感じさせる。たった3本ではあるが、この3本を続けて見れば、青木豪という作家の核がどんなものであるかはかなり明瞭にわかると言っていいだろう。

前2作、とりわけ圧倒的名作『ストリップ』と比較した場合、脚本の出来ははっきり言って甘い。文恵と律子の葛藤、そして和解が、あまり深く掘り下げられていないのが特に辛いところだ。三角関係のモチーフは、民宿の宿泊客の間でも描かれているが、これが映し鏡のような役割をうまく果たしていないのが大きな問題。同じモチーフを別の人間関係の中で少し形を変えて反復し、それによってテーマをより深く、より多層的に描くのは青木の得意技だが、今回はそれが今ひとつうまく機能していない。あのアスリート3人はカットして、椿家と伊東家の話に焦点を絞った方が良かったのではないか? あれこれとエピソードを詰め込み、それらの繋げ方を少し間違えたせいで、テーマがぼやけてしまった感は否めない。

しかしそんな欠点を補って余りあるのが、円の役者たちの好演だ。役者を生き生きと輝かせるのも、青木の脚本+演出の大きな特長だが、それは今回も健在だ。洒落た台詞の量では、前の2作を凌いでいたかもしれない。
この芝居を見にいった理由は、青木豪の作・演出に加え、クレネリ『乙女の国』で魅力的な演技を見せてくれた高橋理恵子が出演していたから。今回もまことに素晴らしい。役の上でも実年齢でも30代後半のはずだが、とてもそうとは思えない可愛らしさ。際だった美人というわけではないのに、彼女が出てくるだけで舞台がぱっと明るくなり、爽やかな風が客席に吹き寄せてくる。『乙女の国』ではもっと屈折した暗い役だったが、それでも白百合のような清楚な美しさは失われることなく、ドロドロとしたドラマを詩的で格調高いものにしていた。本当に貴重な個性だ。
中心的なテーマにあまり深く関わってこないのに、出てくるだけで観客を魅了してしまうのが、高橋理恵子の父親を演じた野村昇史。あの社交ダンス、最高でした。稽古場では、きっとこの人を中心に笑いが絶えなかったことだろう。
全体の構成から言えばカットした方が良いと思える宿泊客の3人も、その部分だけ取り上げれば十分に面白く、3人とも楽しそうに演じていた。特に石井英明が笑わせてくれる。


『ストリップ』を見てしまった以上、青木豪に対する僕の要求は限りなく高くなっている。その観点からすれば無条件に賞賛できる作品ではないが、青木の人間に対する優しい視点は今回も健在だった。一本の作品としては十分に満足できる。グリングの次回作『カリフォルニア』は7月中旬の公演。こちらも大いに楽しみだ。また高橋理恵子の動向にも注目していこう。

http://www.gring.info/
http://www.en21.co.jp/index.html


(2005年4月初出)

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