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03/01/2005

【映画】『Ray レイ』音楽と演技には文句の付けようもないが…

R&Bの先駆者レイ・チャールズの伝記映画。

大きな見所は二つある。一つは言うまでもなくレイ・チャールズの魅力あふれる音楽。もう一つはジェイミー・フォックスの完璧な演技だ。

音楽については説明の必要もあるまい。レイ自身のオリジナル音源を使用し、ブラックフィーリング溢れる名曲の数々をたっぷり堪能できる。ソウル/R&Bは大好きなくせに、なぜか今までレイ・チャールズをまともに聞いたことがなかったのだが、そんな人間でさえ耳にしたことがあるナンバーが大半を占める。アコースティック楽器だけとは思えぬぶっといグルーヴや、レイと女性コーラスのコール&レスポンスには、ブラックミュージック好きの血が燃えたぎる。

そしてジェイミー・フォックス! もうどこを切っても、自分の知るレイ・チャールズそのまんま。あまりにも似すぎていて、「ジェイミー・フォックスを見た」という気がせず、「レイ・チャールズを見た」という印象しか残っていない。これはオスカー受賞ほぼ間違いなしだろう。

以上の二点については文句の付けようがない見事な映画である。

だが映画全体として大きな感動を受けたかというと、否と言わざるをえない。

早い話が、成功者の伝記映画という枠から一歩も出ておらず、一本のドラマとして一体何を描こうとしたのか、どうにも印象が薄いのだ。確かにドラッグ癖や女癖の悪さなど、レイ・チャールズのダークサイドも描かれてはいる。しかしそれらの問題も最終的には克服し、歴史に残るエンタテイナーとして大成しました…では何だかなあ。
幼い頃に弟を見殺しにしてしまったトラウマが全編の基調音として流れているが、これもドラマとしてさほど深いものにはなっていない。公民権運動との関わりもごく表面的なものに過ぎないため、ジョージア州からの謝罪が最後のクライマックスになっている点には、かえって違和感を覚える。

どの要素も、もっと深く描けば十分感動的な作品になっただろう。だがこの作品においては、すべてが寸止めに終わっているため、「決して悪くはないが、何となく食い足りない」というレベルにとどまっている。もちろん先に上げた2点を堪能するだけで、十分に見る価値はあるのだが。

それにしてもレイ・チャールズの伝記でこのレヴェルの作品ができるなら、次はぜひともサム・クックの伝記映画を作って欲しいものだ。『レイ』でも描かれていた、神への愛を歌うゴスペルと男女の愛を歌うR&Bとの狭間における葛藤。レイ・チャールズよりも明確な公民権運動との関わり。モハメド・アリやマルコムXとの親交。クライマックスはハーレム・スクエア・クラブでの黒さ大爆発のライヴ。翌年、わずか33歳でモーテルの主人によって射殺されるが、その直前に出していたのは、あの大名曲「A Change Is Gonna Come」…ベタすぎるくらいに面白く感動的なエピソードの連続ではないか。最後に「A Change Is Gonna Come」が流れてきたら、私などそれだけで号泣してしまいそうだ。
そう言えば『アリ』のオープニングは、ハーレム・スクエア・クラブでのライヴを再現したものだった。『マルコムX』のクライマックスでは「A Change Is Gonna Come」が大々的にフィーチャーされていた。やはり次はサム・クック本人の生涯を正面から描くしかないだろう。

(2005年2月初出)

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