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03/04/2005

【映画】『顔』短評

「本年度の日本映画ベストワンはこれで決まり」という前評判は嘘ではなかった。年が明けてからどうにもパッとしなかった日本映画だが、本作と『ひまわり』の出現で、一挙に華やかさを増した印象だ。

何よりも驚いたのは、本作が非常に優れた「娯楽作品」として成立していたこと。現実の殺人事件を題材にしながらも陰惨な印象はまったくなく、見終わって思わず心がウキウキするような楽しさに満ちているのには唖然としたほどだ。

これは見事な人間賛歌。そして世の底辺にうごめく大勢の半端者たちへの応援歌。どん臭いのを通り越して知恵遅れにすら見えた主人公が、人との出会いを経験し、人の死に接することで、自分の殻を少しずつ打ち砕いていく様子には、ただ胸が熱くなる。しかもそれが「涙」ではなく「笑い」を通して描かれることの、何たる心地よさ。とりわけあのラスト。あれほど爽やかで胸の熱くなるラストが2000年の日本映画に登場したことを、日本の映画ファンは大いに誇るべきだ。

脚本は比較的シンプルで、特別な鋭さは感じないが、それを料理する演出が冴えわたっている。阪本順治ってこんなにも上手い監督だったっけ? 笠松則通の撮影も完璧の一語に尽きる。
だが何と言っても藤山直美だ。いかに完璧なスタッフワークがあっても、彼女なくして本作がこれほどの傑作になりえたとは思えない。この作品は年末の各種賞レースを独占することになると思うが(どこを見ても『顔』一色の雪崩状態になるだろう)、作品賞はまだしも、万が一彼女に女優賞を与えないところがあったら、今後そのような団体を一切信用する必要はない。もし本作がアメリカで公開され、彼女がアカデミー賞にノミネートされたとしても、何一つ驚くには値しない。それはあまりにも当然の結果だからだ。

ただ欠点としては、あまりにも異様なキャスティングに違和感を感じ、最初の30分ほどは少し距離を感じてしまったこと。藤山直美と牧瀬里穂が姉妹というのは事前に聞いていたので覚悟はしていたが、やはり異様。そして中村勘九郎! 君は絶対に浮きすぎ!。

とは言うものの、万人に自信をもって勧められる見事な傑作であることに間違いはない。終映後「面白かった〜」という声をこれほどたくさん聞いたのは、久し振りのことだ。


(2000年8月初出/2001年1月改訂)

【注】予想通り、本作と主演の藤山直美は、2000年度の映画賞を
   あらかた独占することになった。


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