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03/26/2005

【映画】『大阪物語』短評

まさかこれほど素晴らしい作品だったとは。

まったく予想外だっただけに完全にノックアウトされた。

前半は「まずまず」程度。大阪弁のために台詞がよく聞き取れない部分もあって、少なからぬ距離感を感じていたのだが、後半、池脇千鶴が父ちゃんを捜す旅に出るところからはもう、一場面一場面が切なくて、愛しくて… 

ごく何でもないシーンに込められた溢れるような情感、人生を見つめる温かな眼差し…過ちも愚かさも苦しみも全部ひっくるめて、「ちっとも立派ではない人生」を優しく肯定する、その眼差しを、一体何と表現すればいいことか…

市川準監督は、いつの間にこれほど優れた表現者になってしまったのだろう。今までの作品では『東京兄妹』が最高傑作だと思っていたが、この作品を見た後では、あの傑作ですら技巧優先の小賢しい映画に思えてくる。

沢田研二・田中裕子夫妻のリアルな演技が素晴らしい。ある意味演技を超えた演技。それまでの人生で得た、人間としての「味」をそのままフィルムの中に焼き付けているかのようだ。

しかし何と言っても圧巻は、主役の池脇千鶴という少女だ。たいへんな美少女というわけではないのだが、とても16歳とは思えぬ深い深い「味」が内面から滲み出ている。僕はこの子の過去の仕事については何も知らない。だがこの映画の彼女は紛れもない「女優」であり、並みの女優が一生かかっても獲得できない輝きで、この映画を満たしている。僕にとってこの映画は、彼女を中心とした青春映画、言うなれば大阪版『スタンド・バイ・ミー』のような作品だ。

それにしても…「東京のバカ」に比べて、「大阪のアホ/カス」はどうしてこうも愛嬌があるというか、人生の「味」を感じさせてくれるのだろう。泣けるわ、ほんまに…


(1999年6月初出/2001年1月改訂)

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