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03/01/2005

【映画】『ガタカ』短評

驚いた。まさかこんなに面白い映画だとは夢にも思わなかった。細かい設定については「おいおい」と言いたくなる部分もあるが、「そんなことはどうでもいいのだ!」と言い切れる魅力に満ちている。SFXをほとんど使わないSFは他にもいろいろあるが、その中でもこれは1,2を争う名作だろう。これなら日本でも十分に作れるのに…

アンドリュー・ニコルはこれが初監督作品。しかも脚本まで書いているとはただただ驚きだ。一見地味な題材を、「正体がばれるかばれないか」のサスペンスで延々と引っ張っていく手腕は、見事としか言いようがない。しかもラストに近づくに連れて、テーマがきっちりと浮き彫りになっていく。人間の描き方も秀逸で、脇役にさえ、背負っている人生の重みが感じられる。特に尿検査官の最後の行動には誰だってグッと来るはずだ。このような題材でありながら、テーマを社会批判/体勢批判にまで広げず、あくまでも個人個人の生き方に焦点を絞ったのも大成功だ。

独特の美学に溢れた画面作りは、撮影のスワヴォミル・イジャックの功績だろう。キェシロフスキ映画に通じる彼ならではのフィルター・ワークは、見ているだけで泣けてくる。
さらに特筆すべきは音楽! 演出も絵作りも極めて抑制された作品だが、その中でマイケル・ナイマンの音楽だけが、ひたすらエモーショナルに響きわたる。これが圧倒的に素晴らしい。叙情的な旋律は、体制の中で抑圧された人間の喜びや哀しみを雄弁に物語っている。この音楽がなかったら、作品の印象はまったく違うものになっていただろう。


          (次の段落のみネタバレ)


そんなわけで本当に素晴らしい作品なのだが、どうしても引っかかる部分が一点あった。それはジュード・ロウが最後に自殺してしまうこと。この部分は大いに目頭が熱くなるのだが、それでも作品全体のテーマからすれば、彼は車椅子のまま生き続けるべきだったのではなかろうか? 確かにあそこで彼が死んだ方が映画のラストとしては決まるだろうが、ここまで作品のテーマに共感し、登場人物に感情移入した以上、どんなに無様な人生であれ、彼には生き続けて欲しかった。だって彼は自力で2Fへとはい上がることが出来たのだから… 


(1998年6月初出/2001年1月改訂)

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ガタカ 「ガタカ」 ★★★★☆ (1997年アメリカ) 監督:アンドリュー・ニコル キャスト:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、ジュード・ロウ、アラン・アーキン、ローレン・ディーン、ゴア・ヴィダル、アーネスト・ボーグナイン、ザンダー・バークレイ、イライア... [Read More]

Tracked on 05/09/2005 09:17

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