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03/09/2005

【映画】『グリーンマイル』短評

事前の情報で判断するかぎり、きっと僕なら鼻でせせら笑うタイプの映画だろうと思っていた。ところが実際に見てみると予想外の感動を覚えてしまったのだから、世の中はわからないものだ。

ちなみに僕は『ショーシャンクの空に』をほとんど評価していない。なぜならあの作品の良さはすべてキングの原作『刑務所のリタ・ヘイワース』にあるものであり、原作にはない「映画ならではの魅力」というものは、ほとんど見いだすことが出来なかったからだ。「原作を読めば、映画は見なくてもいいんじゃないの?」と一言言えば、それで終わってしまう作品だと思う。
あるいは『グリーンマイル』もそうなのかもしれない。しかし幸いこちらの方は原作を読んでいなかったので(観賞後ボックスセットを買い求めた)、一個の映画として素直に楽しむことが出来た。少なくとも原作を読んでいない人間にとっては、「傑作」と呼ぶに十分な出来だ。

誤解を恐れずに言うなら、これこそ「大衆娯楽映画の鏡」だと思う。センセーショナルな題材、ユーモア、スリルとホラー、友情、別離の哀しみ、愛らしいキャラクター(あのネズミ)、憎々しい悪役と勧善懲悪によるカタルシス、ファンタスティックな見せ場、それらが総合された心地よい感動…大衆娯楽映画に求められる要素の内、美男美女が演じるラブロマンスとアクション/スペクタクルを除くほとんど全ての要素を、この映画は兼ね備えている。興行的にも予想外の大ヒットになっているようだが、それを可能たらしめたのは、まさしくこの「優れた大衆娯楽映画」としての資質だろう。ここまで堂々と王道を歩んでくれると、逆に新鮮さすら感じてしまう。

しかもそのまま素直なヒューマン・ドラマとして終わるかと思いきや、ラストに待ち受けていたのは、思いもかけぬ意地悪などんでん返し。生と死の意味を一挙に覆しかねない、このシニカルな落ちによって、さらに評価は跳ね上がった。しかも極めてシニカルでありながら、決して大衆娯楽映画としての感動までは覆さぬ、あのバランス感覚の何と言う見事さよ! 


以下、100%私事になるが…本作はGWに静岡オリオン座で見た。僕の映画ファン歴は、そもそもこの劇場で25年前の夏に『タワーリング・インフェルノ』を見たことに始まっている。実に十数年ぶりに入ったオリオン座は、多少小綺麗にはなっているものの、中学高校時代に通い詰めた頃と、雰囲気はほとんど変わっていなかった。
今回静岡に帰ったのは、実家の売却に伴い、残してある荷物を整理するためだ。76年〜82年までの150冊に及ぶスクリーンとロードショーも古本屋に売ってしまった(総額わずか7千円)。自分という人間を育ててくれたとも言える静岡の映画館街(僕の実家から徒歩3分)…
「もう静岡で映画を見ることもあるまい」と思い、最後の想い出にと十数年ぶりにオリオン座に足を踏み入れた。作品そのものにはあまり期待していなかったのだが、見てみると予想外に素晴らしく、しかも感動と娯楽性をバランス良く兼ね備えた「昔懐かしい」思いすら抱かせる王道映画であったことで、感慨はひとしおだった。最後にこのようなタイプの映画をオリオン座で見られたことで、僕の個人史が一つの円環を閉じたような気がする。

さようなら、静岡オリオン座。素晴らしい映画の数々をありがとう。
あの古き良き映画館の匂いをいつまでも残し、もっと多くの映画ファンを育てていっておくれ。


(2000年5月初出/2001年1月改訂)

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