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03/08/2005

【映画】『うちへ帰ろう』 いい映画だよ

家族の話である。


一度は崩壊した家族が、過去の過ちを見据え、幾つもの痛みを乗り越えながら、その絆を取り戻していく話である。


新しい要素はほとんど何もない。テーマにも、ストーリーにも、演出にも、キャラクターにも、演技にも。

だがそこには「人間」がいる。
愚かで、不完全で、哀しくて、滑稽で、そして愛しい「人間」がいる。


そんな人間たちを見つめる作者の視点は、どこまでも登場人物と同じ目線に立っている。愚かな人間を見下すこともなければ、その愚かさを甘やかしたり、美化したりすることもない。その愚かさや哀しさを、どこまでも自分自身の愚かさや痛みとして引き受けている。その誠実さが、この作品に掛け替えのないリアリティを与えている。

この作品は間違いなく「切れば血の出る映画」だ。家族の崩壊と再生というテーマは、ある程度万人に受け入れられるものだけに、多少型どおりの描き方をしてもそれなりに通ってしまう。事実そういう映画は山ほどある。だがこの作品にはそんな「型」に頼った部分がない。要素としてはすべてどこかで見たようなものばかりでも、隅から隅まで「これは自分自身の物語だ」という切実さが溢れている。それがこの作品を、凡百のファミリー映画とは一線を画すレヴェルに押し上げている。


映画を見ていて、「自分が脚本家だったらこうしたのに」「ああ、こんな作品の監督ならぜひやってみたい」などと思うことは、さして珍しいことではない。だがこの作品を見ていて、僕は痛切に「ああ、こんな映画に役者として出てみたい。ぜひこんな台詞を口にしてみたい」と思った。僕がこんな思いを抱くことは、まず数年に一回もない。
それほどこの映画に出てくる役者たちは身近であり、その口から出てくる台詞は自然だった。それを見ていて、僕は「どうしてもこの連中の中に入っていきたい。この連中と一緒に笑ったり泣いたりしたい」そう思ったのだ。「作者」として物語をどうこうしたい、ではない。「登場人物」としてこの連中と一緒に時間を過ごしたい…そう思ったのだ。


「家族」の映画は古今東西山のようにある。その中にはこの作品以上の名作もあると思う。過去の様々な名作と比べた場合、この作品は少々地味だし、あらゆる人間をねじ伏せるような力強さには欠けている。
すべての場面が映画として完璧で、思わず溜息が出るほど芸術的な作品でもない。技術的な革新性とは無縁だし、この映画を見た後、それまでの世界観が一変するようなこともまずないと思う。

そういう意味では、本作は「絶対に見るべき映画」とは言い難い。この作品の代わりになるものは他にもあるだろう。この作品を見逃したことで、あなたの人生が大きく変わることも多分ないと思う。


でもやっぱり、見た方がいいと思う。


だってこれは「とてもいい映画」なんだから。


(2000年9月初出)

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Tracked on 05/08/2005 at 12:18

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